第13話 ギルマスと師匠とドラゴン

「ラドラ様!もう持ちこたえられません!」


「もちこたえろ!

ワシらが退けば王都は滅ぶ!此処で押し返

さなければ…」


荒れ狂う炎の先に奴はいた。


十人をこえる魔導師の防御魔法でなんとか奴の吐き出す炎を防ぐも皆の顔には希望の色はうかがえない。



漆黒に輝く砦のような巨体、真っ赤に燃える瞳、翼を広げ大気を震わせる咆哮が奴を囲む冒険者達の士気を絶望に染める。


突如、巨大なドラゴンが王都に現れた。


王都の上級冒険者クラン【竜の息吹】

竜人ラドラが率いる王都の最強戦力が討伐依頼で立ちふさがる。


「盾騎士隊!前へ!魔導師隊はブレスに備え

魔力を練れ!騎士隊はワシに続け!」


体に魔力を巡らせ小さな体ににつかわない二本の巨大な剣をふるいドラゴンに突進する。


ドラゴンが羽ばたくと強風が吹き荒れ騎士隊はその場を動けず立ち止まり尾の攻撃で弾かれる。


近づけるのはラドラだけ。

ラドラは剣に魔力を送る。

剣身が真っ赤に染まり空間が歪む。その剣をドラゴンめがけ一直線に投げた。


剣は轟音と共に飛び真っ赤な魔力は速度が上がる度巨大になっていく。

それは竜が咆哮をあげ向かっていくように見えた。


剣はドラゴンの肩と片翼を貫通し空へ飛び込み雲を散らす。


「ぐぎゃああああああああ!!」


ドラゴンは苦痛で叫びその砦のような体が傾き、天を仰ぎ叫び続けその原因たるラドラを睨みつけた。


「はぁ、はぁ…」

ラドラは魔力を使いすぎたため、もう一本の剣を杖にして息を伐らしている。


「頭を狙ったんじゃが…あのガタイで避けよるとは…くっ」


ドラゴンを見据えると口から炎がちらついている。


「まずい!」


炎がドラゴンから放たれる刹那、ラドラの前に防御障壁が展開する。

待機していた魔導師達は油断することなく動向を見て最高のタイミングで発動させた。


ブレスが終われば此方の番と動ける冒険者は剣を、斧を、弓を構え攻める体勢をとる。


みなはラドラの一撃に勝機を感じラドラの元へ集う。


「ラドラ様に続くぞ!」


「おおおおおお!!」


「俺、この戦いが終わったらプロポーズする

んだ。」



「…ピシッ…」



魔法障壁に亀裂が入る。先程まで幾度もブレスを防いだ魔法が、魔導師達をみると鼻血を流すもの、頭を抱え吐血するもの、どんどん倒れていった。


「まずい!全員散れ!障壁が吹っ飛ぶぞ!」


指示は出したが間に合わない。


ラドラは剣に全魔力を込め地面に突き刺す。


岩盤が飛び出し粉塵が舞う。


それと同時に障壁が弾け飛び炎が襲いかかる。

飛び出た岩盤が炎を、奮迅は熱を遮るが衝撃は防げない。岩盤は粉砕し立っていた冒険者達は全員弾きとばされた。


「うあぁぁぁぁぁ!」


周りの冒険者達の悲鳴は爆音のせいで聞こえない。宙に投げ出され固い地面に叩きつけられ力なく転がる。


指の一本も動かず、微かに見える目は片翼と片腕のないドラゴンが空から降る光を背負い

弱者を見下ろす姿だった。


止めどなく血が腹の中から溢れてくる。


「体は限界、これは積んだようじゃな…

生まれて80年くらいか。初めての敗北

か…」


奥歯を噛みしめ初の敗北に体を震わせる。


力の入らない体を無理やり起こし両の足で立ちドラゴンを睨みつける。


「はいつくばってくたばるのはまっぴらじ

ゃ…」


ドラゴンが口に炎をためる。

目は背けない。ワシは炎が吐き出されるその瞬間まで睨み続けた。



…………がいつまでたっても炎が吐き出される事はなかった。


ドラゴンの方から一人の男がゆっくりと歩いてくる。その男は人族で手にはワシが投擲した大剣が握られていた。


ワシの前に男が到着した後…ドラゴン首がずるりとズレ地面に落ちた。



























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