第9話 獣と追いかけっこ

にじりよる獣…


後ずさる健治…


この小さな体で逃げても獣に勝てるわけはない。まして戦っても同じこと。

今の俺にできるのは…


健治が考えていると獣は疾走。一気に距離をつめてきた。


「今の俺に出来るのは、これだけだぁぁぁ」


健治は足元の頭位の大きさの石を収納、襲いかかる獣の牙が頭を砕く為大きく開かれた口の中に取り出し!


その石を吐き出そうともがく獣。


健治は一気に距離をとって身が隠れる位の岩に隠れ様子を見る。


獣は膝を折りもがいている。


「今のうち逃げないと…」


身を返し、走り去ろうとすると


ゴキンと嫌な音が…


恐る恐る音がする方をみると石を噛み砕き目を血走らせこちらを睨んでいる。


「ゴアァァァァ!!」


「怒るよね…そりゃ」


脱兎の如く走り出すと当然のように追ってくる獣。


「い、今の俺に出来ることおぉぉぉ!!」


俺は走りながら其処らじゅうの木や岩を収納しまくり獣の進行する場所に落としまくった


「しゅうのぉぉ!!」

「取り出し!取り出し!取り出しいぃ!!」


背後で物の落ちる音が響きわたる。それでも追われてる事が分かる。獣の息づかいがすぐ近くで聞こえるような気がして同じことを続け、走り続けた。


しばらく走り続け俺は立ち尽くしていた。


「うぁ…行き止まり…」


「グルル」


目の前には巨大な壁。獣のうなり声がして壁に背中を預け身構える。


「こうなったら引き付けて収納した物を口の

中に全部突っ込んでやる…」


のそりと獣が姿を現す。所々から血が出て足も引きずっていた。どうやら取り出した木や岩があたっていたようだ。


大きく息をはいて相手の出方を待つ。獣の重心が下がり飛びかかってくると思った時、突然獣の頭が弾けとんだ。


何か飛来物が獣の頭を吹っ飛ばしたようだ。


何かが飛んできた方を向くと茶色の髪でメガネをかけたゴツいおじさんが立っていた。


「こんなところにガキがいる?おいガキ!こ

んな危険なところで何してる!」


ぶっきらぼうに話かけてくるおじさんの言葉だったが、目覚めてから初めての人の言葉ということで安心感からかその場にへたりこみ

ついには意識を手離す。


薄れゆくく意識の中駆け寄ってきたおじさんに肩を揺らされ語りかけられるが、

「おいガキしっかりしろ!!」


「ありが…と…ござ…」


と声を絞り出すので精一杯だった。














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