第3話 ギルド公認雑用係 その三

「それでそっちの子は新人さん二ゃ?」


肩越しにこちらを覗きこむ猫獣人の女の子。


「はい。本日よりこちらにお世話になります

サックと言います。よろしくお願いしま

す。」と深く頭をさげる。


大きな眼をパチクリ瞬かせ、ルノアを見る。


「この子…大丈夫二ゃ?」


ルノアを揺らしながら彼女と僕に視線を交互に送る。


「何か気にさわりましたか?」


ヤラカシタカ…俺?

内心、汗だくになりながら二人を見るとルノアが説明をしてくれる。


「この子がすみません。あまり冒険者の方は

敬語を使われないので気が動転しているみ

たいで…」


「あと獣人に敬語使うのも経験ない二ゃ。」


「…はぁ…そうなんですね。」


わかってないサックを見ながらルノアからの忠告。


「失礼ですが…

冒険者なら敬語はやめた方がいいかもしれ

ませんよ。他の冒険者の方と無用ないざこ

ざを生むかもしれませんよ。」


「お気遣いありがとうございます。でもずっ

とこのしゃべり方でしたから。今さらは治

らないと思います。…ハハ」


頭を掻きながら言う。


「まぁいい二ゃ。アタシの名前はジャムって

いう二ゃ。ギルドで受付嬢をしてる二ゃ

よろしく二ゃ」


頭にポンと手を置いてくる。サックがアワアワと焦っている様をみてクスッと笑いリノアが口を開く。


「私たち同期なんです。申し遅れました。私

の名前はリノアといいます。何かあればす

ぐギルドに報告してくださいね。」


「はい、ありがとうございます。それと、お

すすめの宿屋はありますか?今日この街に

ついたばかりで地理に疎くて…」


「それなら仔猫亭がいい二ゃ!」


身を乗り出してジャムが言う。どうでもいいがこの子は距離感が近い。続けてルノアがうなづく。


「そうですね。あそこならご飯も美味しい

し、宿泊費もお手頃ね。宜しければ案内し

ますよ。」


「えっ…でもご迷惑では?」


「これから休憩二ゃ。子猫亭でご飯しに行く

し、構わないから一緒にいく二ゃ!」


するとジャムがサックの手を取り歩き始めた引っ張られながら入り口をくぐる。その後にリノアが続く。クスクス笑いながら。


サックたちが去ったギルド内は、誰が誘っても断り続けた看板受付嬢。

その二人を連れてご飯に行ったサックは許されざる敵と認識された。








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