第2話 ギルト公認の雑用係 その二
モルト山…数多くの魔物がすむ魔境…この街の冒険者がそこに足を踏み入れて生きて帰ってこれる者はいないだろう。
「サ、サックさんはそちらに住んでいらっし
ゃったのですか?」
先程まで熱かった顔が一気に冷めていくのを感じながら声を絞り出す。
「はい。あの、モルト山って言うんですか?
あの山。」
「ご存知ありません?」
「はぁ、恥ずかしながらあそこ以外の場所は
知らないので、一緒に住んでいた祖父も山
としか言ってなかったので…」
「あそこに人が住んでいた?」
頭にハテナを連ならせたサックを見る。
気を取り直し、引き出しから銅で出来たタグを取り出して受付台の上に設置されている水晶の台座にセットした。
「では、水晶に右手、タグに左手で触れてく
ださい。」
「…これでいいですか?」
サックは指示通りに手を置くと水晶が輝きその光がタグに吸い込まれていく。
「はい、登録完了です。お疲れ様でした。」
「ありがとうございます。登録料はおいくら
ですか?」
「申し訳ございません。説明してませんでし
たね。初回は無料になっております。」
モルト山の事で頭が一杯で説明し忘れてた。集中しなきゃ。
「コホン。では、冒険者としての説明をさせ
ていただきます。登録された方は銅級冒険
者からのスタートとなります。」
「銅級?」
まっすぐこちらを見つめながら話を聞いているサック。なんか照れる。
「はい。冒険者は貢献度でランクが上がりま
す。一般的に、銅級から始まり鉄級、銀
級、金級、例外として王級、神級がありま
す。」
「例外とはなんですか?」
「冒険者の実力を国に認められた者や災害級
の魔物を討伐したりすると貴族の位と共に
なることができます。」
「災害級の魔物ってここいらに出たりするん
ですか?」
「滅多にでませんね。
過去出現したのは二十年ほど前に王都近く
にブラックドラゴンが現れて…
流浪の武術家が討伐したと記録されてす。
たしか名前は【リオルカ】様でしたか。結
局、王様に神級を拝命されてすぐに旅にで
てしまわれたそうが…」
「リオルカ?」
サックは驚いた様子で受付に身を乗り出す。
はっとして、申し訳ないと頭を下げると腕を組み何かを考えている。
「どうなさいました?」
メリアが聞くと何かをしゃべりかけようと頭を上げたサックの眼に後ろからメリアに抱きつく猫獣人の女の子。
「キャっ!!」
「メリア~ご飯いく二ゃ。って、ありゃ対応
中だった二ゃ。ゴメン二ゃ。」
「ジャム!あなたそれやめなさいっていつも
いってるでしょ!」
「二ゃって~~」
二人のやり取りになんかなごむサックだった。
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