冒険者達の雑用係

茄子の味噌炒り

第1話 ギルド公認の雑用係 その一

「サックさん。

本当に報酬、金貨一枚でいいんですか?」


二人組の男女のパーティー【風舞い】の男【ロック】が問いかける。


ロックは軽戦士。短めの剣と短剣を腰におさめている。防具は革製の軽鎧と左腕にバックラーを装着。


ライナは弓使い。腰に弓筒と折り畳み式の長弓をさげている。防具はマフラーと胸当てを装着。

二人とも16歳の駆け出しだ。


ライナも口を出す。

「そうですよ。

今回の報酬だって金貨十五枚。食事の準備

素材の運搬だって…報酬の半分だって要求

してもいいのに…」


「いいんですよ。

最初の取り決め通り金貨一 枚

今回は成功しましたけど失敗しても同じ金

額なんだからノーリスクじゃない

儲かったのならそのお金で装備を整えたり

俺がいなくても、死なない準備をしてくれ

ればいいですから」


俺はポケットから前払いでもらった金貨をつまみ、二人に見せながらいった。


「失敗って成功率100%で失敗なんてしてな

いじゃない」


ライナが言うがそれを制し、


「これからも100%とは限らないからね。

それに利益はあるし、自分の採取なんか

も同行中にやってるから大丈夫。」


二人は顔を見合せ少し間をおき、ロックは手を差し出して

「ありがとう。又よろしくたのむ」

とガッチリと握手をかわし続けてライナとも握手をする。

「又よろしくね」


俺は一歩下がり

「又のご利用お待ちしております」

と軽く頭を下げ踵を返しギルドを後にした。


その様子をギルド職員の二人が目線を合わせため息をはく。

受付を担当している【ルノア】と【ジャム】


ルノアは肩までのびたサラサラ赤毛の女の子


ジャムは猫獣人で茶髪のくせっ毛の女の子


どちらも17歳のギルドのアイドル的存在だ


「今日もサックさん受付、利用してくれなか

ったわね」

ルノアが口を開く。


続けてジャムが

「しかた二ゃい二ゃ。本人が納得し二ゃいん

だから…」

顔を受付に落とし、又ため息をはく。


…遡る事二ヶ月前、ルノアの前に黒髪の男の子が現れた。


「冒険者登録をお願いします」


成人(十五)したばかりかな?見たことない服装だけど…と思いながら。


「では、こちらの登録用紙にご記入をお願い

します。代筆は必要ですか?」


字の書けない方もいるので確認すると、


「いえ、大丈夫です。ありがとうございま

す。」と会釈を返してくれた。


丁寧に返事を返されたので少し驚いた。

冒険者になろうとする方々はなめられないように、丁寧に返す事はしない。

冒険者になろうとする新人も頭を下げる事はまずしない。

珍しいなと思っていると…


「書けました。」


「ひ、ひゃい」


考え事してたら声がひっくり返ってしまった。男の子もビックリして眼を見開いている。あっ、瞳も黒いんだ…って仕事しなきゃ


コホンと咳払いを一つ、耳が熱い…おそらく真っ赤になっているだろう。

平静を装いながら登録用紙を受け取る。


「そ、それでは確認いたします。」


名前 サック 十五歳


出身 山の中


特技 荷物持ち


「失礼ですが出身の山の中とはどちらの山で

しょうか?」


「ここから南の平原を越えた先の山です。」


ピタリと用紙を持つ手が止まりサックを見る。


「も、もしかして…モルト山からいらしたの

ですか?」





































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