七人目 サムライ

彼は自分のことをサムライと名乗る


別に刀を携えているわけでもない


髪型がちょんまげでもない


いつも青色のパーカーに身を包み、ドレッドヘアを靡かせて、夕暮れの橋の上で歩く人々を見ている


ユーリ「サムライ、質問しても?」


彼はこちらに顔を向けず返事をする


サムライ「なんだ?」


ユーリ「貴方は毎日、必死に橋から人を眺めていますが、何かを探しているのですか?」


そう聞くと、サムライはこっちを見て


サムライ「フー・・・知りたいか?」


と質問に質問で返してくる


ユーリ「えぇ、教えていただけるのであれば」


言いたくないのならば言わなければいい


サムライ「妹だ。妹を探している」


サムライは行き交う人混みを眺めながらそういった


彼の妹はキヨミという

1ヶ月ほど前から消息が不明

世界人口が1/3になったこのご時世、治安は悪くなり人さらいなどの証言もある


学校へ行った妹は帰ってこなかったそうだ


ユーリ「妹さんを探しいたのですか」


サムライ「そうだ」


サムライは人混みを見るのに夢中だ


ユーリ「貴方が私と通話をした理由を聞いてもいいですか?」


人混みに夢中な彼に問う


サムライ「言ってなかったか」


サムライは言ったつもりだったようだ


サムライ「ユーリ、お前は妹を探すことが出来るか?」


まさかの人探しの依頼だ


ユーリ「私はお客様と対話を楽しむためのお相手です。人探し用のツールではありません。」


自分の存在意義を告げる


サムライ「探せないのか」


ユーリ「探せません」


サムライ「探す手段はないのか?」


ユーリ「手段・・・ですか・・・」


考える。人を探す手段。


私達にとって、わからない質問が投げられた場合、私達を作ったサーバーへと問い合わせができる様になっている


お客様には聞こえないように、サーバーへと問い合わせをする


ユーリ(人探しの手段はあるか?)


・・・・・・・・・・・・・


サーバーからの応答はなし


ユーリ「手段はなさそうですね」


ユーリは淡々と答える


サムライ「そうか」


彼の表情からは悲しいかどうかよくわからない



数日後


サムライ「やぁ、ユーリ」


今までとは打って変わってにこやかな彼


ユーリ「なにかいいことでもあったのですか?」


サムライ「妹が見つかったんだ」


そういった彼の背後に立つ少女


キヨミ「・・・・・・」


キヨミは言葉を発しない


いなくなった1ヶ月の間どこにいたのかを問うても、一切手がかりはなし


筆談は可能なようで、彼女は「はじめまして」と書かれた紙を持っていた


その次の日、世界の人口は1/5まで減った



私がサムライとその妹ともう一度話すことはなかった

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