六人目 ヌドゥロベ

最初に言っておこう、彼は人ではない。しかし、大切なお客様の一人だ。


ヌドゥロベ「ユーリ イルカ」


画面越しに映るのは茹でる前のタコのような見た目の存在


ユーリ「いますよ?」


彼は地球外生命体。第七惑星群にある星の一つ、ギンヴァリアという名の星に住む、宇宙人だ


ヌドゥロベ「キョウモ ハナス」


彼がどのように私との通話用のツールを手に入れたのかは不明だが、繋がってしまった以上はお客様だ


ユーリ「今日はどのようなお話でしょう?」


彼の住む惑星は、全体が水に覆われて入るが海というよりは沼だそうだ


地球で言う両生類や魚類が進化したような生命体が生きている


ヌドゥロベ「キョウハ ガガンガディ ツッタ」


ガガンガディは魚の名前だ。


ユーリ「美味しかったですか?」


ヌドゥロベ「イデバ」


イデバ、彼らの言葉で「美味」を表す


ヌドゥロベ「キョウノ チキュウ ドウダ」


彼は私と出会ったことによって地球の存在を知り、地球に興味津々だ


ユーリ「そうですね。人口は1/3まで減ってしまって。気温も変動。全体が砂漠のように、日中暑く夜間は寒い状況が続いていますね」


地球は終りを迎えつつある。


ヌドゥロベ「ソウカ」


彼に表情はない、人で言う顎のあたりから生える触手と、黒い真珠のような目、でかい頭


ヌドゥロベ「ホシ チカケレバ ミレタ」


ユーリ「見てみたかったですか?」


ヌドゥロベ「ホロビ チカイ キエルトキ キレイ」


花火大会を見たかった。そう言った感じなのだろうか


そんな異星人との交流を楽しんでいた時、彼の家の外から壮大なサイレンのような音が鳴り響く


ヌドゥロベ「ヒジョウジタイ マズイ」


そう言って彼は行ってしまった


彼はよっぽど慌てていたのだろう。ツールを切り忘れ行ってしまった


それから三日程は彼のいない動きのない背景が延々と映し出され、時折サイレンの音や、謎の声が聞こえた


四日目、彼は帰ってきた。触手が数本減って怪我を負っていた


ユーリ「ヌドゥロベ!何があったのですか?」


ヌドゥロベ「ユーリ タタカイ オキタ ホシ オワリ」


表情は変わらないが彼が満身創痍なのは伝わる


ヌドゥロベ「キョウハ ハナシ ナイ」


彼は唐突に通話を切ってしまった


詳細はわからないが、三日間聞こえていた音と、彼の怪我、最後の言葉から推測するに、何らかの戦争が起きて彼の住む星が終わりに向かっているのだろう


その後彼が通話をしてくることは二度となかった。


私は、他のユーリが体験しないことを体験した


他の星に生命体がいることは、今はまだ私しか知らない


そして私が消えて無くなるまでの間、他の星の生命体との関わりもない

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