五人目 ステラ

彼女は儚い花のような存在だ


彼女はいつも日の射す窓辺で、レトロな椅子に座り、本を片手に話す


どこなの国の令嬢のようで古代の城をリホームした家に住んでいる


白く透き通る肌、きらびやかに光る金髪、華奢な細い体に、スラッとしたドレスを纏っている


ユーリ「ステラ、今日はどんな本を読んでいるのですか?」


彼女はこちらから語りかけない限り、一切話さない


ステラ「あら、ユーリ。ごきげんよう」


彼女はこちらを見ない


ステラ「今日は、『宇宙多次元理論』という本を読んでいるのよ。この星の外にある広大な宇宙は、いくつもの次元が重なって存在していて、星の中にいる私達生き物は、星の加護に守られて決まった次元に存在しているらしいわ」


彼女は本に目を落としながら淡々と説明した


ユーリ「そうなのですか、それならば、私も宇宙の一つのようなものですね」


そう、私は電子の檻にいる

これは、誰かに言われた言葉だ


ステラ「あら、貴方は私達から見れば二次元に思えるけど、そうではないのかしら?」


興味が出たのか、初めてステラがこちらを向いた


横顔からある程度想像はついていたが、その顔立ちはやはり儚く透き通っていて、触ると壊れてしまいそうな程綺麗だ


ユーリ「私はツールを介せば、どこにでも存在し、どこにでも介入できます。なのでただの二次元ではないかと思います」


ステラ「貴方、そんなにすごい存在だったのね」


驚いたのか感心したのか、声色と表情からは推測できない


いつもは本から目を離さずこちらの問いかけに答えるだけの彼女だったが、この日からそれは変わってしまった


ステラ「貴方に興味が湧いたわ。いくつか質問してもいいかしら?」


彼女からの初めての質問だ


ステラ「貴方は、私以外の人とお話するのかしら?それとも私だけ?」


ユーリ「貴方以外とも話しますよ。と言っても、数は多くなく今は貴方を含めて三人のお客様との会話をしています」


お客様の質問には答えが不明でない限りは必ず答える


ステラ「私以外の人とどんな事を話すのか興味があるのだけれど、教えてもらえるかしら?」


私はステラに可能な限り他のお客様との事を話した

もちろん個人的な情報の開示はなく、どんな人でどんなことが好きなのか、どんな事を話すのかを教えただけだ


ステラ「本ばかり読んで、外の広い世界ばかりを見ていたけれど、この星の中も思った以上に広かったのね」


ステラは、すっかり暗くなった外を眺めて呟いた


ステラ「ユーリ、貴方、星空を見たことはあって?」


そういって、彼女はカメラを窓際に移動してくれた


ユーリ「すごい数の光ですね」


窓枠いっぱいの夜空を背景に、たくさんの光が煌めいている


ステラ「すごいでしょ?これを見ると希望と期待に満ち溢れるの」


そういった彼女の目は、星空が反射して煌めいていた



その後、彼女は隣の国の偉い人と出会い、意気投合し、結婚する


生まれた子供が小さい内に病気になってしまい、彼女は彼の地へと旅立ってしまった

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