第9話

真っ暗闇の中私は寝転がっていた。どこかに運ばれているのだろうかキャスターの音が聞こえ頻繁に揺れている。どこかに着いたのか揺れと音がなり止む。

 目の前に強烈な光が当てられてるのか目隠しをされてるがそれでも光が目隠しを通り抜け私に光を見せた。


 周りで何かを話して私も答えてる気がするか何を言ってるのかも言ったのかも聞こえず分からない。そして何かを注入された感覚を受けゆっくりと光が薄く感じていき真っ暗な世界に戻る。



 何かの夢から目覚め皆の目覚めを待つ。程なくしてセキとシィーが目を覚ました。カレハは眠っているが連れて来た時は苦しそうにしていたがそれも収まり静かに眠っている。セキに気絶した後何があったか尋ねられた。シィーはカレハの戦いを一部見ていたため何ら問題なくセキが納得し話が進んだ。シィーが倒れた後のことは取り敢えずカレハがカエルを撃退し逃げていきその後カレハが疲れて気絶という形に話を作り伝えた。シィーは納得したがセキは少し疑いの表情だったが「まぁ、そういう事にしておく」となんとか納得してくれた。


「シィー補助魔法について教えてくれないか」


「補助魔法ですか?唐突ですね」


「ああ、今回の一件でこのままじゃ先が心配だから。迷惑でなければ教授してもらいたいのだが」


「いえいえ、私達も今回カレハさんに助けられた身です。それに私程度の知識でよければお教えしますよ」


「そ、そうかありがとう」


「どうしました?」


「いや、大丈夫なんでもないよ」


 本当はカレハが倒したわけじゃないからゴラクから手柄を横取りし二人から感謝されるとだましているようで心が痛い。だけどゴラクもいうなっていうし…。俺たちが話してる間セキは食料を取ってくるといっ森の中へ消えていった。


「では、補助魔法を説明する前にサクマさんって魔法についてどこまでの知識を?」


「えーと、体内の魔力と外の魔素を使って魔法を使う。幾つかの分岐?四属性と光と闇があってそこから強化や錬金に治療とかetc…(二人から聞いたことを何となく)」


 段々と顔色がおかしくなるシィーが気になりながらも「どうぞ、続けてください」と言われ聞いたことを話続けた。何か間違ってること言ってるのかな…。


「あとは強化に特出してるっていわれてとりあえず強化の使い方を教わったくらいか」


「え~と、その説明誰から教わりました?」


「エルフのユリとベアだけど」


「はぁ~やっぱり…」


 頭を抑え残念そうにため息をつくシィーあれ噓を教えられたのだろうか…。そうシィーが何を思っているか分からないサクマは戸惑うしかなかった。


「まず伝えておくことなのですがこの世界には魔素という存在はありません」


「え、ないの?」


「あのお方は自身の異常さを自覚してないのです。だから曖昧な知識だけでも魔法を行使できるのです」


「よく言う天才ってやつ…」


「ただの天才じゃありません。あのお方はしん…い、いえあの人たちは魔法に愛されており私の何倍もの魔力を持っているため、魔素がなくても気づかないのです」


 しん?と何かを言いかけたが言いたいことではないのだろうここは彼女に合わせて流しておくのが吉かな。


「そして魔法についてですが魔法というのはイメージの具現化です。属性などは適正がなくともこのように使うことは出来ます」


 右手の手のひらを軽く上げその掌の上で火を出したり水を生み出したりと、四属性、二属性、錬金や強化、治療を今一度確認させるように見させてもらった。


「あらゆるものには得意、不得意があります。その為あらゆる者は不得意である属性を魔法が発現しないから『使えない』と勝手に決めつけるのです。私が今補助魔法しか使わないのは攻撃担当のセキがいるのと魔素がないこんな世界なので魔力の消費を抑えるためです」


「じゃあ、俺にも属性の魔法が使えるのか」


「いいえ、使えません」


「使えないのか…」


「属性、放出系の魔法は魔素を多く使う魔法なので小さな火を起こすだけでもかなりの魔力を消費します。その為、遠距離からの補助魔法もかなりの魔力を使います。貴方に強化に特出してるといったのは多分貴方の魔力が少ないからそう言ったのでしょう」


「じゃあどうすれば」


「そこまで残念がることはありません」


 シィーは立上り近くの木の枝を折り手に取り魔力を流す。すると木の枝の先に赤いオーラのようなものを帯びている。


「このように強化と同じように物に属性のみを付与させ攻撃と同時に魔法が発動するようにすればかなりの魔力消費を抑えることができます」


「へ~そんな使い方も」


「ですが、コントロールを誤ればこのように」


 赤く帯びていた木の枝が激しく燃え上がり朽ちていった。


「強化の失敗同様大けがに繋がります。自身の強化であれば能というより魔力自身がよくその者の体を理解しているので無理やり魔力を流さない限り体が破裂したりということはないでしょう」


「さらっとぐろいこというな…」


「強化、付与の話に続いて補助魔法です。自身の体であれば問題ないのですが、他者へ行使する場合です。他者への強化は物に強化するよりも難しいです。先ほど言った通り下手なコントロールでは補助もですが回復魔法もその者に攻撃へと変わります。近しい者つまりは兄弟姉妹又は長年一緒にいる者であればコントロールは簡単になります。この辺りは結局、魔力操作を高めればなんとかなります」


 なるほど…ならカレハは多分近しい者に入るから直ぐに補助魔法は使えそうになりそうだな。


「補足として遠距離からの補助魔法は大気中にある魔素を伝って対象に効果を発生させることができますが、先ほど言った通り伝わる魔素がありません。放出系同様に大量の魔力を使うと共に効果を発動する時には消費した魔力に比べかなり弱い効果として発動します。ですからそういった魔法を使うのであれば触れて行うのが一番です」


「そうか、となると俺に今必要なのは魔力操作と魔力の量か」


「そうですね。魔力量は個人差はありますが使えば使うほど増えていきます。更に空っぽにすればよく増えますが魔力枯渇になります。魔力枯渇は本来、疲労程度で済むのですが無理をした魔力の消費は命にかかわります。ですからそこは気をつけてください」


「わかった。気を付けるよ」


「ええ、気をつけて…」


 するとシィーはサクマをまじまじと観察し始めた。


「ん。ど、どうかしたのか」


「ちょっと失礼しますね」


 そう言ってシィーがサクマの胸に手を当てる。改めて思ったが大人な女性からのボディータッチってなんか…いいな。


「勘違いじゃなかった…」


「何がだ?」


 シィーは驚いた表情でそういうので何かおかしなところでも見つかったのだろうか…。


「サクマさん私達が寝ている間に何かあったのですか?」


 ん?何で感ずかれた。匂いか匂いがしたのか?


「いえ、言いたく無いのであれば別にいいのですが…。サクマさん私達が出会った時の三倍ほど魔力が膨れ上がっているので」


「三倍っていわれてもあまりその量がパッとしないのだが」


「そうですね。魔力の量を個人差はありますが簡単な例を上げて言い表しましょうか。とりあえず最小を0とし最大を100又は100以上としましょう。0は即ち魔法が使えない者たちです。そして1~10に位置するのが一般魔導士や下級魔獣というところでしょう。そして11~20主に中級魔導士、魔獣そしてサクマさん貴方がこの位置です。21~30上級魔導士、上級魔獣そしてエルフといたところでしょう。そして40より上に位置するのが賢者や勇者、ドラゴン、魔王そして神という存在です」


「最後だけ幅広いな…ちなみにシィーはどの位置なんだ」


「私は本来70あたりですがこの世界では使う魔力の消費が激しいですから半分の35くらいの位置になりますかね」


 シィーが70ってユリやベアそしてゴラクはどんだけ高い位置にいるんだ気になるな…。


「先に言った通り個人差またはあらゆる世界によって違いがあるのです。勇者でも剣術に特化する者もいれば魔術に特化する勇者もいるのですここら辺が位置づけしにくい理由です」


「そういうものなのか…」


「強さ=魔力ではありません。先の戦いでのカエルの化物は私達のような魔力を一切持っていませんでしたから。その代わり禍々しいオーラをかなり発していましたがね」


「禍々しいオーラ…それがこの世界の魔力という感じなんじゃ」


「そうかもしれませんね…」


「まだ何か?」


「いや、何でもないですよ」


 何か言いたげな感じだった彼女も崇拝者の者だ言えないことなのだろう。そうだろうと我慢する…でも気になってしまうなぁ…はぁ。


「んにゅう…」


 サクマのそばで眠っていた。カレハが目を覚ます。


「ふあ~、ママおはよう」


「ああ、おはようカレハ」


 そのカレハにはサクマをおかあさんと呼んだ時のような異様な雰囲気はなくなっておりいつものカレハに戻っていた。そのことに安堵したいサクマだが。


「カレハさっきのことなんだが…」


「あれ?さっきの怖い大きなカエルはどうなったの?」


 やはりカレハは覚えてないようだ。やはり二重人格というのが正しいようだどういう経緯でもう一人のカレハが目を覚ましたかを知りたいところだがカレハはそのことも知らないのだろう。なら変に聞かないのが良いかな。


「さっきのカエルなら。サクマさんが返り討ちにしたのよカレハちゃん」


「え?」


「そうなの?ママやっぱりすごーい」


 シィーの噓に困惑するサクマだがシィが手を合わせて片目をウィンクする。どうやら合わせろということらしい。


「ああ、そ、そう俺が追い返したよ」


「カッコイイ!ママ、どうやって追い返したの?」


「え~とそのだな…」


 なにを話せばいいか作り話が下手で間違えて言ってはいけないことを口を滑らせていうかもしれない。そう困り果てていると。


「おーい、帰ったぞ~」


 そう仕事帰りのお父さんの様にセキが普通の猪の二倍以上にでかい猪を抱えて戻ってきた。


「ああ、お帰り」


「お帰りなさい」


「おかえりぃ~」


「さて、料理の前に解体とか下処理するが…」


 セキはみなを見渡すようにじーと見回しサクマを見て止まる。


「よし、サクマ手伝え」


「あ、ああわかった」


「ええ~ママお話聞かせてよ」


「え~とその…」


 サクマの袖を抱き締め離れたくないアピールをするカレハに困っていると。


「カレハちゃんママはお仕事するみたいだから邪魔をしないようにしましょ、駄々をこねすぎてママに迷惑かけると嫌われちゃうわよ。たまには我慢することも大切よ」


「…ママ、カレハのこと嫌いになちゃうの?」


 そう、子猫のようにうるうるとした瞳で見上げる。こ、これは…手ごわすぎる。だが、ここは心を鬼にしていう時は言わなければ。我慢も大切だと。


「そんなぁ、俺がカレハを嫌うなんてッ」


「ん?どうしたのママ」


「い、いや…」


 カレハに見えないよう反対方の横腹にシィーの拳が入っておりシィーの方を向くとそれはそれは怖い笑顔をしており小さな声で「が ま ん」と注意された。


「き、嫌いにはならないが…時には我慢もしないとだめだぞぉカレハ」


「う、うん…我慢する…」


 しょんぼりと顔を下に向けるカレハ…うぅ、頭をなでてあげたい。一緒にいてやりたい。だが、シィーが怖い。大人しくセキの手伝いをしよう。


「じゃあ、カレハちゃんこっちに来てママとカエルがどんな戦いをしたのかお話しようか」


「う、うん」


 少し悲しげにもペタペタとシィーに連れられて行く。何度かサクマに呼び止めてほしいのか何度か振り返りながら。うぅ…うちの子は手強いな。


「じゃあ、サクマこっちこい」


「わかった」


 セキに連れられ湖のそばに猪を置いて作業に取り掛かる。セキは身近にあった鉱石を手頃な大きに砕き即席の包丁のような刃物を用意する。ほんと便利な力だな、別れる前に武器になる物を作ってもらおう。セキの指示に従い猪を抑えたり、捌き方を教えて貰った。捌く際に血が湖に流れるのだが直ぐに綺麗な水へと浄化される。この湖はセキ達が主に拠点としていた場所でもあったらしく湖にはパクシェが沢山いるらしい。その為すぐに浄化してくれるようで汚れても一瞬で水が綺麗な状態になる。湖の中心はきれいすぎるゆえの輝きなのだろうか、と考えながら作業を続けていく。大分捌く事に慣れてきて一人で行うことになった。


 黙々と作業をしていると何かもの言いたげに見続けるセキに我慢できなくなりこちらから話しかける。


「なんだセキ、言いたいことあるなら言ったらどうだ」


「来ていたんだろう…ゴラク」


 子供のように地面に何かを指先で何かを描く手遊びをしながら言う。こいつ最初っから疑っていたがここで聞いてくるのか。だが、ゴラクから話すといわれたこれだけは守らなければ。あんな奴敵に回したくないし。


「なんのことだ?」


 しれっと言えた。お、今回はまともな演技ができたこれは流石にもう、疑わないだろう。そう自信満々に思うサクマ。


「まあいうなって言ってたし話さないのが一番だな」


「ん?よくわからないがそうなんじゃないか」


「下手な演技はもういいから」


 —は、はい


 表では黙々と作業を続けるサクマだが、心の中でしょぼんと返事してしまう。やっぱり演技ってばれやすいのか…なんか悲しいなぁ…


「これから話すのは独り言だ…聞き流してくれて構わない」


 え?一人語りするの…答えない方がいいのだろうか…そういうのどう対処すればいいのか分からないのだが。


「私達は本来ロロの討伐の為だけに来ていた。少し自体が変化してメメがやってきて私達は直ぐにゴラクからお前たちにも伝えるようにと撤退の命令が来ていた」


 念話とかそういうやつだろうかゴラクとセキの宗教関係便利だな。


「だが、私は撤退しようとはしなかった…」


 なんでだと言おうとしたが辞めておこう。


「私はシィーと組む前にメメを一人で倒していたから今回も大丈夫だろうと思った。過去のメメより少し大きく再生能力が高いだけだとお前と協力してるのもあって魔力を全て使い奴を侮ってメメを倒したと勘違いした」


 まぁ、あんなにばらばらに吹っ飛んだ奴があそこで変態するとは誰も思わないよな。


「そして進化した奴に何も出来ない状態の私たち。五楽も間に合うわけなく死を待つだけだと思ってた…」


 大丈夫それは俺も同感。


「そしてお前の連れ子かは知らないがカレハの力があり時間稼ぎができて五楽が間に合った」


 まさかカレハにあんな力あるとは思わなかったよな。あっちのカレハもあれはあれでありだったな。怖かったけどそれよりもずっと可愛かった。


「お前たちには迷惑をかけたし感謝もしなくてはならない。本当にすまないそしてありがとう」


「何を言ってるんだ?私はあんな化物から逃げれないと思っていたから逃げなかっただけだ。お前の判断は間違ってなかったと思うし、そもそも私が無力なのが問題だったと思うが」


 その返事に呆然としてるのかそこで答えるの?とどちらか分からない表情になるセキ。あれやっぱり最後まで聞き流すのが良かったのか…?とりあえずここは


「ん?すまない。独り言だ気にしないでくれ」


「お、おう…」


 急遽、沈黙の時間が始まる。いや、これさっきより空気しんどいのだが。不味ったよ。これ絶対不味った。

 そう心の壁に頭を何度も打ち付けるサクマ。


「ふははは、やはりお前面白いな」


「そんな笑うとこか?ここ」


「さぁな、私は面白いとも思ったから笑う。他の者の感性と同じにするなよ」


 確かにセキはセキで私は私感性がみな違うからいい物が生まれてくる。そういうものだったな。


「にしても他者が失敗の話をしているのにそれを庇うように自分の失敗を作り出す、そんな生き方損ばかりしそうだな」


「かもしれないな。自分でもそう思うよ」


「自覚あったんだな」


「ふっ「ふははは」」



 二人で一緒に笑い合いそこからは何の変哲もない会話をしながら料理をしていく。セキの能力は本当に便利なもので大槌としてフライパンや鍋を作り出した。前世の自分は料理ができたようでシィーと一緒に料理を作ることになった。シィーはサラダと肉を焼く係り、サクマは煮込み料理を行う。シィーは薬草などをよく採取するようで手持ちの荷物に香辛料など調味料を持っていた。そういったものを作るのが趣味だそうだ。


 カレハとセキそして今しがた目覚めたクロマメは料理ができるまで湖で遊ぶ係である。クロマメをビーチボールのようにしている、あいつ物理法則無視してないか紙風船みたいにゆっくり落ちてる。カレハと遊べるなんて羨ましいと思いながらもシィーに肘打ちされながら料理を続ける。シィーも料理する時髪を後ろに結っておりその姿は旅館の調理場に居そうな若女将にも見え様になっている。美人ってやっぱりいいなぁ。と思いながら料理を作り終え皆で焚き火を囲い食事をする。 


 今回並んだ料理は簡単なシーザーサラダにマンガ肉のようなものそしてイノシシの肉と野菜、マカロニのようなものを放り込んだトマト煮である。

 相変わらずカレハはサクマにフゥフゥしてもらい食べさせてもらうよう甘える。先程突き放してしまったし。食事の間ぐらいめいいっぱい甘やかそう。というのもサクマは何かと自分より小さいものの頭を撫でることに幸福感を覚えてしまいカレハの頭を撫でることがサクマにとってこの世界で唯一の娯楽のようなものになっている。


 食事を楽しんでいると不意にクロマメに視線がいってしまった。するとクロマメは触手のようなものを出して器用に皿持ち上げ、予想もしてなかった自分の三倍もの大きなギザギザの口を開き皿の中身を口の中に放り込んでしまった。また新しい謎が増えるも見なかったことにしてその謎を忘れることにした。


 食事を終えてカレハとセキ達は一休み。その間にシィーに魔法の使い方を改めて教授してもらうことになった。セキに事前に何本か木の枝を棒状に加工してもらったものを武器として属性付与の練習を行う。ほとんどの属性は上手く発現させることは出来なかったが火と水の付与は何とかものにすることが出来た。


 次に自身の腕に小さな切り傷を作り治癒魔法の練習を行う。シィーのサポートありきで何とかなったが、多分自分一人ではダメだと判断されポーション作りを教えこまれた。薬草の種類またそれの調合、魔力の込め方等をメモに取り教わる。シィーから余りがあるからと空き瓶とポーション作りの道具を一式譲ってもらった。


 そしてあとは寝るだけと思っていたのだが。


「お前たちそのまま行くつもりだったのか?」


「え?何か問題あるのか?」


「せめて体くらい洗ったらどうですか」


「ああ、水浴びか。確かに臭うか私」


 先程までは慣れていたから気にしてなかったが改めて自身の体を臭うとかなり血生臭かった。


「とはいえ、水風呂なんてカレハちゃんが風邪ひいてもいかんしな」


 そうセキはニヤニヤしていた。


「ではサクマさんせっかく火と水属性が使えるようなので今日を終える前に最後に魔力操作の練習です」


 ああ、そう言うことか。まぁたしかにカレハに水風呂させるのはちょっと嫌だな。


 セキは岩を加工して枠を作り即席の浴槽を作りる。いちいち芸が細かいな。


「では、最初に火の魔力を流してください。イメージは火をつけるではなく温めるという感じで」


「ああ、分かった」


 両手を湖に差し込み温める…よく分からないから五右衛門風呂のようなイメージを作り出しす。手に赤いオーラが覆い程なくして差し込んだところからボコボコと沸騰し始める。


「ではその魔力を流しつつ水の魔力操作を行ってください。渦を描くように」


 火の魔力を流したまま水の魔力操作で渦を作る。言ってみるのは簡単だが二つの属性そして魔力操作という同時に行うのはかなり難しい。火に集中をしていたら渦が描けずぐにゃぐにゃと変に流れる、水に集中すると温められたお湯が全体に行き渡る前に手元で蒸発してしまう。魔力ギリギリまで使うよう言われ五分くらいその工程を行っていた。


 シィーが湯加減を確認するも


「ぬるいです。まぁ、初めはこんなものでしょう」


 そう言ってそのまま魔力を流していき、いとも簡単に綺麗な渦を作りながら水を温め。一分もしないうちに良い湯加減まで湖の水を温めた。


「付与魔法をこれからも使っていけば慣れてきますよ。慣れない作業で疲れたでしょう、お先にどうぞ」


「ありがとう。じゃお言葉に甘えて先入らせてもらうよ」


 ローブを脱ぎパクシェの詰め込まれた水の入ったおけに放り込み、湯に浸かる。何も考えずお湯に入ったがそういえば柵のような遮るようなものが無いから丸見えだなこれ。とボーッと真っ黒で何も無い空を眺めていると。ぺたぺたと走ってくる音が聞こえる。だいたい予想つきながらじっと使っていると。


「わぁぁぁい」


 そう叫びながらクロマメを抱えたカレハが湯の中に飛び込む。幼いぷにぷにの柔肌の子供が素っ裸で目の前のお湯に浸かっている…。カレハは私のことをママと呼んでいる。家族の関係だから何も問題ない。そうこれはなんの問題もないのだから。そう己に言い聞かせているとまた二つ後ろから足音が聞こえた。セキとシィーだろう、待ってるのも暇で足湯しに来たのだろう。


「どうじゃ湯加減は」


「あぁ、最高だよ。久々のお風呂だったからとても気持ちいいよ」


「そうかそうか、それじゃ私達も失礼するか」


「どうぞ、どうぞ」


「ほら、シィーもさっさと入れよ。サクマは気にしてないぞ」


「私は気にします。と言うよりタオルくらい巻いてくださいよセキ」


 タオルを巻く…?


「見られても減るもんじゃねぇから良いんだよ。それに風呂にタオル巻いて入るのは良くないんだぞ」


「そんなの知りませんよ!」


 二人の足が俺を挟むようにお湯に入っていき二人はそのまま湯に使っていく…。浸かって…は?二人が三角形を作るようにサクマの前に行って湯に浸かっていた。シィーはタオルを巻いて入っているがかなりのたわわがはち切れそうにタオルを押しのけようとくい込みを作るりセキはさっきの会話通りタオルを巻いておらず小さな膨らみが少しばかり見える。サクマはとっさに頭を他の方に向けて二人を見ないようにする。


「な、なんでお前ら服脱いで入ってんだよ」


「服を脱がずに入ることをご所望だったかそういうのをフェチというのだったか?」


「変な知識だけ知ってんな!そうじゃなくてなんで混浴状態になってんだよ」


「ん?お主さっきどうぞどうぞって言ったろ」


「確かに言ったが足湯かと思ったんだよ」


「ほう、足湯というものもあるのか」


「なんでフェチは知ってて足湯を知らないんだ」


「さぁ〜の、そこん所は知らんな。ところでなんでお前が恥ずかしがっておるんだ…よくわからんな」


「貴方はもっと恥じらいというものを持って下さい!」


「うぅ〜そんな怒らんでもいいでは無いか」


「もう知りません」


 そう言ってシィーはカレハの元へ行く。なんだかんだシィーはカレハのことを気に入っているようで本物の母親いや叔母のような感じで接してくれている。カレハもとても楽しそうだからとても有難い。三角形を作っていたがシィーが抜けたためその形は崩れセキはサクマの横に座る。


「こんなに楽しいのは何年ぶりだろうか…ほんとに感謝してるよ」


「俺たちは何もしてないが?それよりお前たちにはお世話になりっぱなしだよ」


「まぁ、そうだな…」


「そういえばセキ、お前はどこまで過去を覚えているんだ?」


「何だ急に、私達は過去を捨てた身だぞ」


「いや、さっきの戦いで契りとか忌み血どうとかって話をしてたろ」


「あ〜確かに言ってたな。まぁ話してもいいかな」


 セキは大きく背伸びして足を伸ばし縁を背もたれにする。


「そうさなぁ、私がこの世界に来た時化け物共に囲われておってなその時何匹いたかは覚えてないがそいつらを殺したら少しだけ記憶が戻ってきたのよ。先の戦いで言った契り、そして忌み血の事を」


「私は前の世界で人間と鬼のハーフという形の忌み子として生まれたのだ。当然人でも鬼でもない化け物はどちらにも馴染めるわけもなく敵対視され私は途方に暮れていた。そんな私を拾いその世界で鬼と人間の戦いを止めようとする者がおった。容姿は覚えてないがそ奴は私を利用し私は生きるためにそ奴を利用するという互いが利用し合う関係だった。そしてその後のことは思い出せなかったが強すぎる力、すなわち先の戦いでの魔剣技を封印する為の契りを交わした」


「お前にそんな過去があったんだな」


「まぁ何百年も前の話よ。その記憶を取り戻したが私には過去などどうでもよかった。だからその後現れたゴラクの誘いつまりは崇拝者兼化物共の掃除をすることにしたのだ。シィーとの出会いはその数年後のこと。シィーはこの世界に魔素が無いことをすぐに知ってなんの躊躇もなしに崇拝者の一員となり今では私の相棒ということだ」


「ということはシィーは過去のことを何一つ思い出してないのか?」


「多分そうなるな。出会った時から過去に興味なさげじゃったからの。奴にとって大切なのは今なんじゃろ」


「そういう考え方もあるんだな」


「その者それぞれよ」


「そうだな」


 その会話を終えて皆風呂から上がりカレハ達はシィーの温風の魔法で髪を乾かしている間に俺は寝床の準備をし皆眠りにつきらその日を終え。またいつもと変わらない真っ暗な朝を迎える。


「ほら、これが必要なんだろ?」


 セキは両刃の片手剣とそこそこでかい大剣をくれた。紫の鉱石で出来たその武器はセキにしては他人の武器なのに丁寧に装飾を施してくれていた。


「ありがとうな、最後の最後まで」


「感謝しろよ、全く」


「してるよ、それも大いにな」


「ここでお別れだが…」


「その前に一言いいですか?」


 手を軽く上げてシィーが前に出る。


「いいけど…なんだ?」


「間違った生き方はその者よりその者と関わりがあるものの方が不幸になります。以後、気をつけて」


「分かった…気をつけるよ」


「それと、どうやって手に入れたのか分かりませんが今回のような異様な魔力を手に入れるようなことはできるだけやめてください」


「気づいてたのか」


「見れば分かりますよ。その禍々しいカエルに似たオーラは」


「ああ、できるだけしないようにするよ」


「じゃあ、達者でな」


「お前たちもな」


「カレハちゃんも気をつけるのよ」


「うん!シィーもセキもばいはぁい」


 手を振りサクマ達はセキとシィーと、別れ北の方へ進んでいく。

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