第2話
【それ】から逃げて森をさまよい三十分くらい歩くと少し開けた場所の小さく綺麗な泉に辿り着いた。こんな世界の水が飲めるのか怪しいが変な匂いもしない為飲んでみたが特に身体への異常は無かったので飲水として活用することが出来そうだ。アタッシュケースの奥に仕舞われていた果物ナイフのようなもので木を器用に削り水筒替わりを幾つか作る。カレハはと言うと湖の中を泳いで遊んでいる。いかんいかん遺憾ですよ。子供とはいえ裸を見るのは如何なものか…。
こんな化け物ばかりの世界なにか特殊能力が自身にもあるのではないかと考えた。それは置き手紙に予言というものが書かれておりそれは実際に当たっている。火の玉をだす。水を生み出す。風を操る。そんな妄想をひたすらやったがそんなことが起こる気配がないし。カレハからの冷たい視線は正直辛かった…。
「せめてあんなのを両断できるような武器の一つや二つくらいは残しといて欲しかったものだ…この一本小さなおもちゃのナイフみたいなものじゃ…にしてもこの白紙の紙貰ったが何で書けばいいんだよ…」
そう白紙に手を伸ばすと何かを感じ取る。それは風呂桶を逆さに風呂の中に沈め空気を溢れだすようなそんな感覚。
「な、なんだこれ。やっと何か覚醒したのか…」
そんな新しく何かに目覚めた主人公的な何かをワクワク期待し心躍る恐竜のような頭蓋骨を被った多分青年約二十歳の元人間。脳に何かが流れてくる。
-キタキタ!
『 何かで出来た白紙 特殊な技術で編み作られた紙。念じながら指をなぞり思い描くことで文字や標本を描き写す』
…アイテム情報?。最初触れた時はこんなの出なかったのに今になってどうして出てきたんだ。何なのか俺が知りたいから出てきたのか?サクマは考えいう。
「ステータス…」
何も起こらない。ゲームとかなら自身の体力や攻撃力といった情報が出てきそうなものだが。ならなんでこの紙の情報は頭の中に流れてきたのか…。
サクマ立ち上がり泉に手を入れ念じる。すると先程と同じ何かが流れてくる。
『 泉 約18cm² 深さ3m 中心に行くほど深く蟻地獄状。表面上は綺麗な水だが底の方は汚染されており触れるだけでも危険性あり』
それってヤバいんじゃ…
「おーい、カレハもうそろそろ上がってこーい。てか、早く上がりなさい」
「わかった〜」
飲んだ時何も異常なかったから多分汚染物は沈殿してるはずだから底の方まで行かなければ大丈夫だろうとは思うけど…この何かを知るための力かは分からないが対象に触れる必要がある。なら自身を知ることは出来るのではないか?
そう自身の胸に手をやり念じる。記憶がなくなっててもこれが使えるのであれば知ることが出来るのではという考えだった…のだが。
『 ********** 一一一一一』
ノイズのような何かが頭の中で響き頭が痛く情報を邪魔する。先程と同じなら文字とかが脳内に書き起こされるような感じなのだが、今回は文字化けがかなり酷い。
『 **********…サクマ? 身長177cm 体重100kg 能力【分析者】【*********(***)】』
この力で自身の謎が解けると期待してたのだが…名前に『?』が付いてると本当に俺の名前はサクマなのだろうか。今少し残った記憶は作り物ではないのかという疑問が募る。にしても体重が異様に高いと思ったがこの頭蓋骨のせいか。というよりもこんな化け物ばかりの世界で攻撃するための能力なしか、まぁ分析者っていうのが何かそこらへんの物を調べれるのであれば何も分からない世界だとかなり便利なのか。食べれるものか毒がないかとか調べられるわけだし。どちらも必要な力だけどよくよく考えると見知らぬ地であれば何かを調べる能力の方がいいんだろうなぁ。
「この分析者って言う能力をもっと詳しく分からないのか?」
その疑問に答えるように頭に流れる。
『【分析者】物質や生態を詳しく記す。一つ見える範囲について記す。二つ知りたい対象に触れる事で大きさや特徴といった見えた範囲を記す。。三つ生態を詳しく知る場合その対象が死体また無機物であること』
つまり自身を詳しく知りたいなら死んで自身に触れろってか?どうやるんだよ…はぁ
【それ】みたいなやつを詳しく知るには触れる又は死体を見つけてないといけないのか…あんな奴らにどうやって近づけと…襲われて死んじゃうよ…
-無理ゲー
まぁ奴らを撒いたところに行けば肉塊のちょっとは残ってるだろうからそれに触れれば良いか。
そういえばこの外套はどんな効果があるんだ。予言のやつが書かれたやつには外套には化け物から認識をされにくくなるみたいこと書いてあったが。
『 外套 特殊な素材でできており羽織ることで存在認識を覆い隠し周囲から気付かれにくくなる。また周囲に何らかの影響を与え続けるとその効果は薄くなっていく。』
つまり羽織ってるだけで存在が薄くなり、先に化物を見つけれたら止まってたらやり過ごせるってことか。周囲の影響っていうのは動いたり何かを落としたらダメってことか。
「ママ〜おいしそうなのみつけた〜」
「何を見つけたんだ〜カレハ」
カレハが自身の布の裾をたくし上げ籠のように使い何かを入れていた。見えちゃダメなやつが見えちゃってます。マジだめですそれ。
「カレハ下が見えそうというより見えてるので、はしたないからやめなさい。それ」
「でも、おちちゃうよ」
無垢な表情で傾げる…やめてくれ。羞恥心くらいは持ってて欲しいこの先誰かと出会う度にこんな事されては…
「そこに落としとけばいいから早く下ろしなさい」
「は〜い」
カレハが持ってきたそれはピンポン玉くらいの大きさの真っ白な真珠のようなもだった。
美味しそうとは…触れて調べてみると。
『 【命名】 直径約5mm 重さ約130g******* 真珠のような何か』
文字化けってことはこれ生きてるのか?襲ってくる気配は無いな…
九つ程あるそれの1つを台座になりそうな所に置き合掌する。付近にあった先が丸くなった岩で叩き割る。硬そうな雰囲気があったがそんなことはなく卵のように簡単に割れ中身が溢れ出る。中身のそれはアサリのような二枚貝のそれで美味しそうっちゃ美味しそうな見た目でかなり肉が詰まっている。さらにその中身取り出し岩でぐちゃぐちゃにする。すまない…。肉塊となったそれに触れ読み取る。
『 命名 直径約5mm 重さ約130g 貝類 **********。汚染された水を取り込み綺麗な水へとして元に返す。外側の貝はとても柔らかいが汚染された水に返すことでそれが卵と変わり成長して行く。食べる場合綺麗な水の中で1日放置することで体内の汚染物が完全に消え去り食べることが可能』
この世界のアサリのような存在でさらに浄水器の機能付きとはすごい生物だな。にしてもまだ文字化けが残るか何かが足りないのか…?腹は減らないが喉が渇くこの世界だから2匹程度は何か入れ物作って水筒だな。
「命名って、ことは名前つけれるのか」
真珠のようで、貝類、アサリ、浄水器…パール、シェル、クリーン…頭文字取って『パクシェ』でいいか。
白紙の紙念じイラストと情報写し出す。念じただけで白黒だけどこんなに綺麗に描かれるのはありがたいな。分かりやすいし図鑑でも作れそうだ。この際作っちゃうか。
「なにしてるの、ママ?」
「図鑑作ってるんだよ」
「ずかん?」
「そこら辺に落ちてるもの食べるにしても毒とかそんなの無いか気をつけないといけないからね。詳しくまとめてるんだよ」
「そっかぁ〜ママっていろんなことにくわしぃんだね」
「あ、ああ」
よく分からない能力の力のおかげだから素直に褒められると…うん
「もうそろそろ移動するか。ずっとここに居てもいい気がするけど進まないとこの世界がなんなのか分からないし」
「ん、んぐ、わぁった」
変な返事に気になり振り向くとカレハが先程すり潰しぐちゃぐちゃにした肉塊を摘んで食べていた。
「こらー!カレハぺっしなさい!」
カレハの肩を持ち大きく揺らし吐き出すよう促すが、気にせんず幸せそうな表情で噛み続け飲み込む。
「…だ、大丈夫なのか?」
「なにが?おいしいよ」
美味しいのか。どういう問か理解しておらず首を傾げ答え肉塊を摘んで差し出す。カレハの体に異常は無さそうだけど…。
「いや、いい。大丈夫ならいいんだ…」
「うん!」
カレハを撫でるように手を置く。カレハは嬉しいのか腕を後ろに組み自分から手に頭をすらせる。可愛い子だ。
「じゃあ、行くか」
「はーい」
▫️▫️▫️
歩きながら白紙の紙に地図をかけるのではないかと思いやってみると書くことが出来た。ここまで歩いた道のりは念じた時に滲み出てくれて歩き直しせず済んでかなり助かる。
数分歩き【それ】を撒いた所に戻る。そこは異臭がきつく変な霧のような物が漂っていた。そこら中に肉塊が散らばっており血溜まりも出来て木の枝から血が滴り落ちていた。噛みちぎられ倒れた木々もあり。食べ損ねたのか【それ】の頭が二つ転がっていた。動く気配がなく完全に死んでいるようだ。子供に見せる光景では無いのだが、こんな世界ではこの先嫌でも見てしまうかもしれないのだからカレハに見せないようにはしない。慣れとくのが一番だろう。というよりカレハは異臭など気にせず楽しそうに肉塊をぷにぷにと指先でついて遊んでいる。強い子だな…。俺は正直まだ吐きそうになりそうなのだが。だけどさっき溢して襲われたんだどこか彷徨ってるやつがいるかもしれない耐えなくては。近くに落ちていた肉塊と木の破片に触れる。
『 命名
体長約130~180cm 体重約80~150kg 人型の鬼
頭がヤツメウナギのようで大きな口で円を描くように並ぶ長い牙が特徴的。肌の色は鬱血したような紫色。筋肉質だが人間と同じような力しかない。口から垂れる唾液の消化液は口内なら人間と同じ消化能力なのだが外の空気と混ざることで鉱石をも溶かす物へと変わってしまう。指先の爪は岩を削ることが出来る。視覚がなく足に嗅覚と聴覚器官があり直径約100mが索敵範囲。液体から発する匂いに対して嗅覚が特に優れている。獲物を追いかけるとき唾液が垂れないのは、溢れ落ち自身に掛からないようにするためと、消化の際匂いがでて混乱を防ぐため。』
『 レグゥラの木
********に生えている木々。
気の表面に多くの穴が開きそこから触れたものの生命力を徐々に奪い成長する。絶命するとその性質はなくなりただの木に変わる。実がなることはなく。破片を地に植えると元の大きさまで育っていく。』
詳しい情報がまとめてでるからかなりありがたい。にしてもレグゥラの木って名前があるってことは別の誰かが名前をつけたのか?なら何故命名されてないものがあるのか。それにこの伏せられた文字化けはなんなんだ…まぁいいか。
「あれの名前か…お腹減ってそうだからhungryで鬼、demon…いやお腹減ってると言うより飢餓って感じでもあったしな…飢餓鬼?」
「ぐぅり〜でもん? ぐでもん?う〜ん」
カレハは可愛らしく顎に手をかけ考え込む。ぐでもん…卵のあれと青いロボットのやつが思い浮かび微笑む。
「カレハこれに名前つけるなら何がいい?」
「う〜ん…デグン!」
「デグンか分かった。こいつの名前はデグンだ」
「「デ・グ・ン デ・グ・ン」」
ただの親バカだ。白紙の紙にデグンと木を書き込み横に穴を開け即席で作ったファイルに紐を通し図鑑の本として閉じる。すると頭の中に何かが流れてくるというより湧き出るというのが正しいのか…
ぼやけて見えにくいがこことは違う青々とした森の中をその者の目線で走っていた。
何だこれはどこの森の中を走っているんだ…?誰の目線なんだ?湧き出てくる感じからして俺なのか?どこの世界だ?元の世界…?元の世界ってどんなだった…分からない。何を伝えたいんだ。なぜこれを俺に見せた。これは白紙に記録を刻むことで見えたのか?それともこの力を使うことで俺自身に何か影響を与えているのか?ひたすらに考え能力は使えずが結局答えはまだでなかった。
「だいじょうぶ?ママ」
「あぁ、大丈夫だよカレハ」
出会った時のようにカレハが覗き込むようにこちらを見て今回は心配そうにしていたので頭を撫でる。心配そうな雰囲気はなくなり先程の可愛いカレハになる。やはり頭を撫でられるのが嬉しいのか。はぁ…この子は天使か…
「じゃあ、ここにいたって臭いだけだし進もうか」
「うん!」
カレハの手をとり森の奥を進み続ける。それは父と子のような後ろ姿だった。
この世界が何なのか分からない。だがこの力があれば知ることができるかもしれない。目的が分かるかもしれない。そのうち自分自身の事、記憶と失った頭の事を知ることが出来るかもしれない。カレハの事も知ることが出来るかもしれない。知らない事ばかりだで知りたい事ばかりだ。だからとりあえず進んでみよう。
-地獄のようなこの世界を互いに自身を知らない者同士。宛はないが目的をの為に二人は歩いていく。
『 ソクコリホ・カレハ ************************************』
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