世界探索記録

KIKP

第1話 

『※※※※※ーぃ』


 真っ暗な中何かが聞こえ俺は意識を覚醒させる。

 だが真っ暗な中で何も見えない。いつも通り目を見開いているはずなのに真っ暗闇の中のままだ。もしかして光がないほど暗いどこかにいるのか分からないため周囲の物をを確かめようとする。なにかにもた!眼鏡を探るようにあたふたする。


『あはは、何してるのママ』


 子供…女の子の声が間近に聞こえた。

 ママ?俺のことか?俺は男だ。父子家庭で俺が女装してたら確かにママかもしれないが…。だが俺は生まれてから今日まで女性とは無縁だから子供はいないはずだぞ。てか、喋れないのはなんでだ。ずっと何も見えないし。


『あ、これ付けてないからか。よいしょ』


 ガサゴソと何かを漁る音が聞こえ声の主である子供がその何かを必死に持ち上げようと奮闘するのが聞こえ何かを頭の上から俺に被せる。


「何だこれ。って喋れる!」


「何言ってるのママ?」


 何かを被せられ声を出すことが出来た。何をかぶせられたのか分からず触れてみるとそれは肌の様柔らかい手触りではなく硬い木のような質感だった。そして目を見開くことができ目の前には、小さな子供が首を傾げ立っていた。何が何だか分からず硬直しながらもその子供を観察する。


 ―誰の子供だ…?


 センター分けの真っ白で地べたにつきそうな長く変な形をした髪、白と青が上手く混ざり合った宝石のように輝いた瞳。真っ黒に汚れたボロボロの外套と布からのびる正反対のような白い肌。かなり際どい格好で秘部が今にもチラ見えしそう目のやり場に困る。

 と、布が緩みtkbが…咄嗟によそに目をやる。


 ―なんだこれは…


 目の前に広がる光景に息を吞む。不気味に明るく、深い森の中の様で見たことのない黒く染まったいたずらにペンキで塗られたのか燃えた後なのか分からない奇妙な形をした木々。天は夕暮れ後で少し暗く星というより真っ黒な沢山の豆粒、毒ガスのような気味の悪い紫の雲がちらほらと散っておりそれに隠れ輝く真っ赤な月があった。何だこれは…世界の終末か?


「ママ、そんなのにいつまでももたれかかってると死んじゃうよ?」


「…は!?」


 初めて見る光景に呆然としていたがその忠告に我に返り咄嗟に立ち上がりもたれかかっていたそれを見る。それは周囲にあるような奇妙な木なのだろうがほかの木と違いもたれかかっていたところに集団恐怖症みたいな小さな穴のようなものが気持ち悪く開いていた。離れてから徐々にその穴が変化していき穴が閉じ先程まで他の木とは違い異質な存在感があったのだがそれがなくなり自然に馴染んでいった。

 その異様な光景を見送り俺はよろけ膝に手をつく。


「急に体が重くだるいし眠気が…どうなってるんだ…」


「ママ、先行っちゃうよ」


 子供が悠々と森の中へ走って行く。


「ちょ、ちょっと待ってくれ」


 僕は唯一だろうと言える目印となる子供を見失わないように直ぐに起き上がりついていく。仕事後並みにくたくたになった体では、子供の小走りに着いて行くのもしんどいと言うのに。少しくらい気遣ってくれよ…


 ▫️▫️▫️


 5分くらいは走っただろうか、森をぬけ拓けた場所に着く。荒い息を整えるために地に膝まつき当たりを見渡す。中央あたりにがたがたに出来た三角錐の岩を門に巨大な岩を積み立てて作られた家のようなものが幾つか並んで出来ていた。

 先程まで待つこと無かった子供がここでは待っていてくれた。さっきまで必死に呼びかけても全く待たなかったのに…てかこいつ全く疲れてないな、子供ってやっぱり体力無限大だな…。にしてもあんなに走ったのに汗はひとつもないて無いな。気のせいか森をぬけてからとても体が軽く感じる。

 呼吸をしっかりと整え前を向く、それを見て確認し子供が村らしき岩の建物に向って行くのに着いて行く。


「ここってどこなんだ」


「しらなーい」


「俺は…サクマって言うんだけど、お前の名前は?」


「ん~と…ソクコリホ・カレハ」


「変な名前だな。カレハは日本人ぽい名前だけどソクコリホって苗字は聞いたことないな…どこの国だ」


「ママ、くにってなに?」


「俺はお前のママじゃない、ママって言うよりパパだろ最悪。にしても国も知らないのか…」


 国も知らないとは馬鹿にされてるのかと思ったのか子供からは嘘をついてる風には見えなかった。

 自分の名前を言おうとしたのだが一瞬自身の名前が自然に言えず一瞬詰まった。名は何とか出てきたのだが自身の苗字が思い出せない。というよりも自分がの顔、どういう人間だったのかさっぱり思い出せない。覚えてるのは名と幼い時のかすんでいる記憶のみ…ふと自身の首に何かがかけられており服の下から取り出す。それはロケットで二つのボタンがあり押してみると前後に開いた。そこには二つの写真が入っていた。懐かしい何かを感じるがやはり思い出せない…


 そうこう考えていると岩の門前に着くそこにはカレハが身にまとっている様なものと同じ黒いボロボロに破けた布切れが散らばっていた。

 中に入ると様々な形の岩で積み立てられ作られた家が円を描くように並びにその中心に布を多く使ったテントのような物があった。建物の中はモンゴルのゲルのような構造であった。周囲を見回ったが人の気配は無いのだが少し前まで使われていたのか焚き火の薪がまだ小さく燃えていた。


 端に石でできたタンスのような物が二つあり勝手に他人の物を見るのはあれだが気になり重い引き出しを開ける。片方には何かが書かれた幾つかの紙と白紙の紙の束と三個の缶ジュースサイズのコルクのようなもので閉められた何かの液体の入った陶器の瓶、もう片方には子供が羽織っている外套が沢山、丁寧に畳まれ入れられていた。

 その近くに鏡台があり自身に何がかぶせられているのか気になり鏡に映る自身を確認する。


「なんだこれは…」


 その姿に驚き両手を壁につき自身をまじまじと見る。そこに映っているのは恐竜のような頭蓋骨をかぶっており。目の部分眼帯のような物が両目を覆っておりそれをめくると青黒い光を発していた。体はどうなってるのか気になり服を伸ばして鏡に映す。手足は普通の人間だったのだが首から黒くもやもやした物が動いている。それが気になり被っている頭蓋骨を少し上げてそれに触れてみる。それは煤のようで実体がなく指がすり抜け頭蓋骨の内側を触れる。手を引き抜き確認するが手に何かついてることはなかった。


「ママ~これ落ちてた」


 ママじゃないんだけどな~まあもういいや。

 カレハが引き出しに入っていた様な文字の書かれた紙を持ってきた。


「何だこの文字は…」


 それは初めて見る文字で何語かさっぱり分からないが自然と読めてしまう。


『イジュウ ワレラ  ハナレロ ムラ スグニ キケン』


「読みにく…」


 何か色々長々と書かれてあったが要点をまとめると、先までここに住んでいた者達は何処かに避難したらしい何かの予言がどうとかでここは危ないらしい。棚の中にある文字の書かれた紙には先人が記録した複製のもので白紙の紙は自由に使ってほしいとのこと。畳まれた黒い外套には化け物から認識をされにくくなるとかかれていた。で最後の予言の内容なのだが。

 読んでいると地鳴りが聞こえてきて地面が微かに大きく揺れ始める。


「地震!?」


 サクマは読んでいた紙をカレハに預け急いで近くにあったアタッシュケースのような物に引き出しの中に入っている物を詰め込め入らない小瓶はポケットにしまい外套を羽織いカレハの腕を掴んでその場を離れる。大きな岩で積み立てられた建物、この揺れで崩れたらひとたまりもないと思い村を離れ森に身を置く。地震だと思っていたのだがどうやら違うらしく村に入る前自身が目覚めた場所付近で山のような影が上下に動き上下するたびに大きく揺れる。


「なんだあれ…」


 その大きな影の周囲は砂ぼこりが大きくたっており何があるのかさっぱり分からない。時おり左右に風船のように膨らんだり縮んだりする影がある。影の方から反響するように聞こえる鳴き声のようなものは知っている気がする。それを見ているとその影が瞬時に消えて大きく今まで以上に揺れる。それは立っていられないほどの揺れで先ほどまでいた村の建物の岩が崩れる。


「離れといて良かった…」


「ママ、あれ」


 一息つこうとするとカレハが裾をちょいちょいと引っ張り先ほど山の様な影があった方向を指差す。

 森の中から複数の人影がゆらゆらとこちらに向かってくる。先までいた村の人が戻ってきたのかと思ったがそうではなかった。ゲームで聞いたことのあるようなゾンビの吐息?の様なものがきこえてくる。十数体はいるであろう【それ】らは崩れた村の中に入っていき散策し始める。

【それ】の姿は服の様なものは着ておらず鬱血したような紫の肌をしており顔全体に広がったヤツメウナギの様な口でとても鋭い牙が並びに出ている。その口から垂れる唾液のようなものが岩に落ちるとその岩から煙がでて少しへこみ、その部分にかぶりついた。火に水をかけた時のような音が無数に鳴り始める。

 すると【それ】の一体がネズミの様な動物を見つけ捕まえる。その何かは必死に抵抗するように鳴くのだが虚しく食らいつかれ血のような液体が滴り落ちる。すると周囲にいた【それ】らがネズミのようなものを食べていた【それ】に一斉に襲い掛かる。


 ―共食い…


 喰らわれたそれはぐちゃぐちゃになり肉片が散らばっていたのだが【それ】らが満足したのか離れて数秒して肉片が泥のようになり地面に溶けていった。

 その光景と異臭に吐き気を催しサクマは口に手をやるが少し零れ落ちる。

 すると【それ】らが一斉にこちらを向き奇声を上げ走ってくる。

 気づかれた!?

 カレハを担ぎその場を急いで離れ走る。

【それ】らはサクマと同じくらいの速さで走ってくる。思ったより遅いがこのまま走り続けてもカレハを抱えてじゃそのうち体力が尽きて追いつかれる。


「くそ、どうすれば」


「ママこれ」


 カレハが見えるように一枚の絵と文が書かれた紙を広げるが読んでいる暇がない。描かれた絵はどことなく【それ】と同じに見える。


「今悠長に読んでいる暇なんてないから。代わりに読んでくれるか」


「うん、わかった」


 こんな危機にあるような状況でこんなにも明るく元気に返事するなんてあれが怖くないのか…

 カレハはごにょごにょ言い始める。要点をまとめてくれているのか。できのいい子だな…。


「何も詳しいこと書いて無~い」


「何もないのかよ!。何があいつらを反応させた。音か…匂いか…考えろ。何であいつらは急に俺らを見つけて追いかけてきた」


 サクマはアタッシュケースの様なものを振りかぶり通りにある細い木の枝を折り後ろに目をやり【それ】を観察する。木の枝は地面に着き【それ】は少し反応を示したが立ち止まらずこちらをずっと追いかけてくる。次に通りがかり野球ボールくらいの大きさの石を拾い山なりに放り投げる。すると【それ】の一体が石を避けようとせず直撃し怯み後ろに後退りした。


 目がないから見えてないのか?だが奴らは道中生えている木々をしっかり避けている。


 再び木の枝をおり次は石を投げたように放る。【それ】の一体が直撃して木の枝を掴み喰らう。これで視覚がないことが分かり空中にある物には反応できないらしい。なら残るは嗅覚か聴覚なのだが、こればかりは…

 再び【それ】を観察する。猫背に両腕を前にゾンビのように走るり広がった口から唾液が…垂れていない。あいつらを見た時、のそのそ歩くだけでも唾液が垂れてぃたのに追いかけ始めてから垂れていない…普通なら獲物を見つけてたなら唾液が垂れ続けるだろうに…


 唾液が垂れてない…そういうことか!


「カレハ、ちょっときつく締まるが我慢してくれ」


「わかった!」


 脇を軽く締め器用に指先を動かしコートのポケットから陶器の瓶を取り出し左に持ったアタッシュケースを咥え手の空いた左手に瓶を持ち替え後ろを向き【それ】らに向かって放り投げる。やはり【それ】は避けることなく瓶が勢い良く当たり割れ中身の液体が広がるように飛び散り【それ】らと近く木が液体を浴び【それ】らの動き急に止まる。するとその液体からか腐った卵のような強烈な臭いを発する。先程までこちらを向いていた【それ】らは液体を浴びた【それ】や木の方を一斉に向き奇声を上げ襲い喰らい始める。


「今のうちに逃げるぞ」


「うん」


 サクマはカレハをおろし手を繋ぎ走っていく。追ってきてないか後ろを向くも【それ】ら臭いの発する目の前の物にしか興味がないようこちらを気にすることなく互に傷つけ互いの体液を浴び互に貪り続けていた。液体を浴びた【それ】自身が自分の腕を喰らっているその異様な光景は地獄という言葉が一番ふさわしいだろう。

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