決勝の相手

それから俺は死にもの狂いで練習に励んだ。別にあの話を信じはしないが、自信が揺らいだのは確かだった。それは練習が足りなかったからだ。メンタルという弱点、これを克服しなければ――。


気づいたら夏になっていた。当然のように俺たちは県大会決勝まで勝ち進んだ。俺はもう悪魔のことなど忘れていた。だがこの決勝戦で、俺はあいつと再会することになる。


どこの地域でも決勝まで残る高校は固定化されていて、それはうちの県も例外ではない。しかし、今年の決勝での対戦相手は無名の公立高校だった。その高校はとある外野手を中心に据えていた。力強いスイングと4割を超える打率を備えた、恐ろしい打者である。ただこの外野手、驚いたことに去年までは落ちこぼれだったらしい。そして一層驚いたのは、予選全ての試合でその選手が逆転サヨナラを決めていたことだった。毎試合逆転サヨナラなんて、漫画みたいな……


ここでふと思い出す。

『落ちこぼれだったのに突然すごい能力に目覚め』

『予想外の逆転を引き起こし』

という話を。

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