【イベント4】隠しイベントと、エンディング

「とうとう、本当の姿を見せる時が来たギョリュね」

 語尾は相変わらず変なままだったけれど、声は渋くて低くてダンディなそれになっていた。


 アタシから少し離れた所を浮遊していた白茄子エグプの身体が突然発光し始めた。

 眩しくて、アタシは腕で目を庇う。


 その猛烈な光がおさまると。

 アタシの部屋の真ん中には、純白の髪を無造作にかきあげた、まるでローマ彫刻のような均整のとれた身体をしたナイスミドルの男が──


 全裸で立っていた。


「なんで全裸なんだよ白茄子エグプッ!!」

「今までだって全裸だったギョリュよ?!」

「アレを全裸と表するか?! だとしたらマスコット系キャラは全部全裸なのかっ?! 今後ナビキャラをなんか変な目で見そうだよ!!」

「そんな視点で見るのはお前だけだギョリュ」

「しかも語尾変わらないんかい! そこは隠しキャラとして、人間体になったら普通の語尾になるのが正解なんじゃねぇのかっ!!」

「この語尾がアイデンティティだギョリュ」

「だから何処に個性出してんだよ!! 意味ねぇじゃん!!」

「だから意味あるギョリュ! これが無くなったら誰だか分からなくなるギョリュよ?!」

「そこに価値見出してんじゃねえよ! 誰だか分からなくなってもいいじゃん! イケオジが台無しだよ!!」

「そんな事はないギョリュ。この語尾を含めて愛してくれたからこそ、現れる隠しキャラだギョリュ」

「愛してねぇよ!」


 ガックリ肩を落としたアタシの顎に、スッと手をかけてくる元・白茄子エグプ

 上を向かされ、その吸い込まれそうな黒い瞳に見入り

「……スタンダードな乙女ゲーなのに、全裸はNGだろ。全部余す所なく見えてんぞ」

「本来のゲーム画面なら上半身しか映らないからセーフだギョリュ」

 なにそれメタい。

「むしろ、15歳の乙女なら恥じらって『きゃー☆』なシーンだギョリュ」

「いや、だから15歳じゃねぇし。今更男の裸の一つや二つ平気なんだけど。そんなんでキャーなんて言ってたらAVは見れない」

「……AV見るギョリュか……」

 アタシの顎にかけた指を、ドン引きしながら引っ込める元・白茄子エグプ


「で、さ。なんで人間型になったワケ? 何かのイベント?」

 アタシも全裸男から下がって少し距離を取った。流石に目の前に全裸男が立ってたらドン引き。


「そうだギョリュ」

 渋い声で短くそう告げる元・白茄子エグプ。ホント台無しだよその語尾。

「お前は見事、俺の好感度をMAXまで上げつつ、他の男のイベントを全て跳ね除けたギョリュ」

「……白茄子エグプの好感度上がるタイミング、あった?」

「俺を好みと言ったギョリュ」

「いや、好みなのは歳上な」

「ナイスミドル、とギョリュ」

「それはタイプなだけでお前とは言ってない」

「口喧嘩して俺を言い負かしたギョリュ」

「え、何ドMなの?」

「おめでとうギョリュ。これでお前は元の世界に戻れるギョリュ」

「それは嬉しいけど、なんで会話してくんないの? 今までみたく会話のキャッチボールしようよ。突然投げっぱなしさせないで」

 そうお願いするが、返答はナシ。

 なんでじゃ。


「このゲームの隠しキャラ攻略おめでとう! そして、この世界にサヨナラだな──」

 元・白茄子エグプがそう告げた瞬間、目の前が白く輝く。


 視界がホワイトアウトして、耳鳴りのような甲高い電子音のような物に聴覚まで奪われて、私は全てを知覚出来なくなってしまった。


 そしてそのまま──意識を失った。

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