第六話[熱砂の飛竜]4
彷徨のように光線は放出し続けられ、地表に降りかかる。また多数のオーガロイドを破壊して巻き込みながら、光線をアッシュガルに当て破壊しようとする。
《総員、回避、後退、ジャンプ、屈みこめ!!》
風副長は隊員達に指示し、自身は機体をスライディングのように滑らせて間一髪で光線を回避した。
各隊員も、即座に体勢を変え、放たれた光線から回避する。
ピガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
空気が切り裂かれるような音ともに、一閃で大地は破壊され、巻き添えを食らったオーガロイドも爆発四散した。
《ぐっ……こちらミシェル、頭部をやられた……》
《こちらジャン、肩がもたねぇ……》
隊員達の苦しげな呻き声が無線に流れる。
《戦闘不能は撤退しろ!! あとは私たちが……アースセイヴァー!?》
アースセイヴァーは咄嗟に片腕で光線を防御していた。何故か光線は左腕のガントレットにたやすく跳ね返されたが、日々乃の感覚に[左腕部損傷、ガントレット作動不良]という情報が響く。
「ぐあっ……い、痛い……っ!?」
日々乃は、自身の左腕に走る激痛に驚いた。
《アースセイヴァー、ダメージを負いました!……エモンさん!?》
《風副長、私は背中だ。何とか死角に入った。ならば私がどうにか──》
顔面にしがみついていたアースセイヴァーを、首を回して振り離し、ワイバーン・ボンバーは残りのポッドを全て落として地表から飛び立つ。
「くっ、しぶとい!!」
キルオーガでワイバーン・ボンバーの背中をめった刺しするアッシュガル・サムライ。
しかし、ワイバーン・ボンバーはダメージに構わず最後のエネルギーで飛翔し、襲撃地である煌露日町への進軍を再開しようとする。
「畜生、邪魔だお前ら!!」
アッシュガル達はワイバーン・ボンバーに向かおうとするが、残りのオーガロイドからの阻害に苦戦を強いられた。
「援軍……援軍はまだか!?」
左腕を抑える日々乃の悲痛な叫びが、アースセイヴァーの駆動音と共に大地にこだました。
《ここにいるぞ、アッシュガル部隊!!》
アッシュガルにのしかかろうとするオーガロイドを狙撃し、ヘリコプターにワイヤー懸架され輸送されているT―10式。
「その声、本多隊長か!?」
エモンは驚き、ワイバーン・ボンバーに掴まり上昇しながらアッシュガル・サムライの頭部を下に向けた。
《俺達が援軍だ!! このままお前らがやられたら町が襲われる……ならば、身を張って俺らと共に町を守るのが、防衛連邦としての使命だろう! 町民からもだ、『日々乃の助けになってくれ』、そう願われ出撃した!》
ワイヤーを切り離し、本多機に続くT―10式3機。
《町の人達が……!?》
──「日々乃……」
数分前、煌露日駐屯地にて、格納庫のラジオに集う市民達。
ラジオでは、ULSを通じて、日々乃の戦況が確認された。
その真ん中で、望は手を合わせ、日々乃の無事を必死に祈った。
「市長、ホントに良かったんですか?」
望の祖父である巌滋郎に、市民の一人が聞いた。
「ここの守りが薄くなってしまう。本来なら、万が一の時に備えての温存がいいのでは」
「その万が一が訪れている。勝家さん」
巌滋郎は、市民と共にラジオを聞いている勝家に振り向く。
「ここの装備の何割かと共に、向こうに救援へ行ってくれないか?」
「市長!? しかし、この場を守るのが我々の──」
「このままでは、少なくとも彼らの全滅は避けられない。我々も彼らの覚悟と戦いに、報いる選択をせねば生き残れない」
巌滋郎の真っ直ぐな瞳に、勝家は逡巡し、そして決意を胸にして隊員達を召集した。
──《そうだ、日々乃!! 町の人達も、アースが敵の標的だと薄々気づいていた! だが、こんな子供に、オトリという役割を背負わせることに、最後まで抵抗があった!! そして今、日々乃達を見捨ててしまっては、町の平和は守れたとしても後悔が生まれる!! 我らも加勢しよう、この日本を守る戦士として!!》
無線と共に、アースセイヴァーのカメラアイがヘリコプターを捉える。
《日々乃、これを受け取れ!》
ワイヤー懸架されていた装備が、アースセイヴァーに渡される。
「これは……戦車砲!?」
アースセイヴァーの追加装備、50口径150mm戦車砲だ。
《そうだ日々乃。かつて鬼ヶ島攻略作戦にて、英雄機“ショーグン”が使用されたとされる手持ち式戦車主砲だ。ショーグン機でなければ反動で吹っ飛ぶその兵器も、アースセイヴァーでなら! 確実に君の力になる!!》
本多の通信は一呼吸置かれ、一瞬だけ戦場に静寂を生んだ。
《日々乃、君は危ない道を渡ってまで、私たちを守ろうとしている。明先輩から聞いた。お前の力の本流を……ショーグンの力を持って、俺達やエモン達と共に、煌露日町を守る為に行くぞ! !》
T―10式は起動し、残ったオーガロイドと砲撃型の猛攻に、アッシュガルと組んで立ち向かう。
「行きますっ!! アースセイヴァー!!」
アースセイヴァーは頷き、50口径150mm戦車砲を右腕で受け取った。
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