第六話[熱砂の飛竜]1

《エモン隊長! 衛星通信で、北方より巨大なオーガロイド反応!!!》

 山岳道路を通りぬけ、砂漠地帯の先にある旧都市へ向けて出発する第54アッシュガル部隊。隊員や日々乃を乗せた3台の輸送トレーラー牽引車の通信アナウンスから、けたましい警報が鳴り響いた。 

 「オーガロイド!? 巨大な!?」

 トラクター内部、運転席の後部に備えられた兵士用のキャブ部分。その内部にいた日々乃は翻訳イヤホンを通じて、警報の意味を知った。

 「爆撃型オーガロイド……遠征目的と見て間違いない」

 アシェリーはタブレットに転送されたオーガロイドの情報を確認する。

 「遠征!? まさか、じゃあオーガロイドが向かう先ってのは……!?」

 「煌露日町だ。奴らの進軍先にはそれしかない」

 

 ──砂漠に影が写り、辺り一面を真っ暗に覆う。上空には、展開した飛膜を羽ばたかせる、西洋の竜めいた外観のオーガロイド。


 『グォォォォォォォォォォ!!』


 オーガロイド─ワイバーン・ボンバーは突然重圧感のある鳴き声をあげ、腹に搭載されたポッドを地上に射出する。

 ポッドは地上に落下すると、卵のように表面がヒビ割れる。中から現れたのは、雄叫びをあげる獣型のオーガロイド。

 『ウガァァァァァァァ!!』

 『ウガァァァァァァァ!!』

 『『『『『ウガァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』』』』』

 雄叫びは重なりあい、多数のオーガロイドによる彷徨が突風の音のように第54アッシュガル部隊の輸送トレーラーに届いた。


 《敵群の総数、50体と特定……くそっ!》

「50体だと……まずいじゃねぇか!」

 アシェリーは悪態をつき、頭を激しくかいた。

 「ULSを通じて援軍が来るだろう。それまでは、我々がオーガロイドを食い止める」

 「おい待てエモン、この進軍は想定外だ。旧都市攻略に影響が出るぞ」

アシェリーの言葉に、エモンは頷いた。

 「だが、我々が動かねば、あの町が滅ぼされる。我々の目的は、あの町を守るための進軍だからな」

 エモンはオーガロイドの進軍をモニター越しに、真っ直ぐな視線の瞳で睨む。

 「ちっ、まぁどっちにしろ、オーガロイドを野放ししたら進化して面倒になる……ここで殲滅した方が、大局的に有利だな」

 「そうだアッシュ。総員、ただちに出撃準備!!」

エモンの指示が、輸送トレーラーの通信を通じて響き、部隊全体に伝わった。

 「出撃ですね、エモンさん」

 日々乃の硬く険しい覚悟の目が、エモンの指示を仰ぐ。

 しかし、アースを起動すれば注意が向く。アースの損傷は避けられないだろう。アースは遠征の要。温存はしておきたい……

 「日々乃君、君には私と共に超大型鬼化を担当してもらう」

 エモンは一瞬生じた迷いを振り払い、日々乃に振り返り彼に通信用インカムを手渡した。

 「総員、今から作戦を開始する!! 目的は進軍阻止、フォーメーションは“輪”、C1からC9発進、作戦概要はアースセイヴァーの支援だ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る