第四話〔拡醒の技〕5
振り回された改造オーガロイドは駐屯所の滑走路へと着地した。
『ウガァァァァァァァァァァァ!!』
改造オーガロイドは格納庫へと咆哮した。
ズシンと重い足音をたて、アースセイヴァーが格納庫から走り出す。
『グルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!』
アースセイヴァーは助走をつけ改造オーガロイドを殴る。
だが頬を殴られても改造オーガロイドはびくともせず、剛腕の爪に被さったバケットアームでアースセイヴァーにアッパーを食らわせる。
「グハッ!」
アースセイヴァーはのけぞり、日々乃は頭を揺さぶられ身体がよろめく。
[リアクター残量低下]
アースセイヴァーは拳を振りあげるも、改造オーガロイドからのアッパーの方が早く、それを顔面にくらってしまう。
「グハッ!! やっぱ殴るだけの機体じゃ、何も──」
改造オーガロイドの猛攻が続く。
このままではアースセイヴァーの頭部は潰され、日々乃は死ぬ。
しかし日々乃は恐怖に震えていない。
すぐ側で守るべき人がいる。ここで戦わなければ、再び煌露日市は破壊される。
「あのときと同じ思いはするかぁ!! 俺は、俺はお前らに負けないために強くなったんだぁぁぁぁぁぁ!!!」
──機体が強ければパイロットはいらぬ。ならば何故パイロットが必要なのか──
日々乃の脳裏にエモンの言葉が響いた。
──パイロットが強さが機体の強さなのだ。ただパワー任せに殴るだけでは、機体の強さを満足に引き出せぬであろう──
「俺が、アースセイヴァーだ! 俺自身の力が、アースセイヴァーだ!!」
アースセイヴァーは拳を下ろした。
[ガントレットリアクター、充電開始]
──日々乃よ、何故お前は殴る必要があると思う?──
日々乃が目を閉じ、島での記憶を呼び起こすと共に、アースセイヴァーのガントレットが変形する。
──何故ならば、殴ることで力なきものを守る為だ──
[ガントレットリアクター、オーバーモードへ移行、アースセイヴァーのエネルギーチャージ確認]
──だが殴ることだけを目的に戦ってはいかん。「風林火山」という言葉がある。これはとある大将が放った言葉であるが、実は守るべきものの為に、己が動く為の力を最大限に最善な形で全身に行き渡らす為、古来より培われた戦法の極意でもある──
祖父の言葉を思い出す日々乃、そして彼が神経を一体化させている無防備なアースセイヴァーに、改造オーガロイドのバケットアームがハンマーめいて振り下ろされ、殴りかかろうとした。
──風の如く素早く舞え──
改造オーガロイドは驚いた。目の前のアースセイヴァーが消えたからだ。
後ろに強大な気配がしたとき、オーガロイドは振り向き様に殴られていた。
「グルルァァァァァァァ!!」
──林の如く多彩な技で追襲せよ──
格納庫内からエモン、倒壊した建物からはアシェリーが出てきた。
二人の視線の先には、オーガロイドへ様々な拳法めいた技を放つアースセイヴァーがオーガロイドを圧していた。
そのガントレットは展開して内部機構を覗かせており、更に緑色の粒子を帯状にして放出していた。
「何なんだアレはよ……!?」
困惑するアシェリーとは反対に、エモンは顔を期待に輝かせ事の成り行きを見守った。
「それが君という戦士の力か、新橋日々乃──!」
日々乃は体が軽いと感じた。
技をイメージし、その為に必要な動きを念じた。
念じている間、アースセイヴァー内に粒子エネルギーが流動するのを感じとる。何処に粒子エネルギーを流せば、己の技を放つことが出来るのか、
アースセイヴァー内の全ての粒子エネルギーを知覚しながら日々乃は操縦する。
──火の如く熱く燃え盛る拳で持って──
粒子エネルギーを効率よく行き渡らせるガントレットリアクターが、まるで呼吸するかのように帯状の粒子エネルギーを放出している。それも、まるで羽ばたくが如くアースセイヴァーに機動力を与えている。
「ウガァァァァァァァァァァァ!!」
改造オーガロイドはドリル状の角でアースセイヴァーの拳とぶつかり合った。
──山の如く力強く殴れ──
『グルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!』
アースセイヴァーのジェネレータが咆哮をあげ、改造オーガロイドのドリル状の角を拳でへし折った。
『ウガァァァァァァァァァァァ!!!』
「オラァッ!! オラ!! オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」
無防備になった改造オーガロイドに、アースセイヴァーは粒子エネルギーを纏って次々と技を叩き込んだ。
『ウガァァァァァァァァァァァ!!』
改造オーガロイドは雄叫びをあげ、ペンチアームを先端に取り付けている尻尾をアースセイヴァーの胴体に巻き付ける。ペンチアームが開き、アースセイヴァーの頭部を潰そうと襲いかかる。
『グルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!』
しかしアースセイヴァーのガントレットから放出される粒子が、オーガロイドの尻尾を塵にし破壊した。
[粒子エネルギー最大出力、デストロイフォーム発射完了]
──機体に身をゆだね、己の技をフィードバックせよ──
「必殺技─·」
アースセイヴァーは後退し、両腕のガントレットに全身の粒子エネルギーをチャージした。
改造オーガロイドがバケットアームを構えた時、アースセイヴァーがガントレットからジェットエンジンめいて帯状の粒子エネルギーを吹き出し突撃した。
「ガントレット・ブラスト!!!」
『グルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!』
帯状の粒子エネルギーがガントレットに押し出され、オーガロイドに殴り付けた両腕の拳から粒子エネルギーがビームとなってオーガロイドの胴体を貫通する。
ビームは遥か上空まで届き、遥か上空の雲を一切合切吹き飛ばした。
『ウガァァァァァァァァァァァ!!』
アースセイヴァーが離れると同時に、改造オーガロイドは爆発四散した。
島にいる一同は丸く広がった雲から青空を見つめた。
避難所にいる人達も、オーガロイドを討伐し終えた一丸やアッシュガルも、宿泊所から飛び出した望も、建物の瓦礫から這い出した残りの人員も、アシェリーも、皆が空へと放たれたビームに唖然とした。
唯一人、エモンだけがアースセイヴァーから目を離さずにいた。
「エモンさん!!」
丸く広がった青空の中心に位置する所で仁王めいて立ち尽くすアースセイヴァーから、日々乃がコクピットを開いて覚悟を高らかにあげる。
「改めて名乗ろう、我が名はエモン! エドモンド・J・ユースタス! アッシュガル第54隊の隊長を務めている!」
足を開いて立ち、腕を組んで威厳を掲げるエモンは──
「そちら、我がアッシュガル第54部隊に入らぬか!」
「入るさ、この町を守れるなら!!」
拳を握りしめ、日々乃は迷いを捨て、死と隣り合わせの戦に立ち向かう覚悟を決めた。
「俺は──皆を守る為に、これからもアースセイヴァーで戦います!!!」
エモンもまた、腕を組んで力強く立ち、日々乃の覚悟を受け止めた。
「あぁ、共に戦おう、新橋日々乃くん、アースセイヴァー!!!」
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