第三話〔サムライ来訪〕4
「あれは…!?」
アースセイヴァ―とオーガロイドに一機の拡性兵が向かってくる。
軍人、あるいは足軽のようなデザインは“アッシュガル”であるが、腰に懸架し炎を噴射しているブースター、頭部には戦国武将の兜めいた角を生やしており通常のアッシュガルとは違う形態をしていた。
何より特徴的なのは、右手に携える、反りの入った長い片刃剣。その形は間違うことなき“日本刀”であった。
「さむ…らい?」
日々乃はアッシュガルの侍意匠から、機体のパイロットが誰なのか直感した。
『ウガァァァァァァァァ!!』
ブースターで移動しながら日本刀を構えるエモン機の前に、駐屯地に向かう一体のオーガロイドが道を阻もうとする。
「逃げろ! 危ない!」
エモン機の顔に、オーガロイドのパンチが襲いかかる。
「ウガァァァ!!」
だが、エモン機の背部および腰ブースターが噴射口を変えた瞬間。
オーガロイドのパンチは空を切った。
「ウガガァァァァァァァァ!!」
サムライ・アッシュガルはパンチをするりとブースターで避け、すれ違い様に切り伏せる。
そしてパンチを出した腕は、地面に落ちた。日本刀が振り上げられている。
侍アッシュガルが振り上げた日本刀は、今度はオーガロイドの胸筋を切り裂いていた。
『ウガガァァァァァァァァァァァ!!』
断末魔を上げ、首を無くしたオーガロイドは爆発四散した。
侍アッシュガルはその光景を背に、アースセイヴァーの元へ向かう。
『『ウガアアアアア!』』
動かなくなったアースセイヴァーよりも危険を感じたか、オーガロイド二体が侍アッシュガルに襲いかかる。
侍アッシュガルはブーストを使って横に素早く回避移動。
M4カービンめいたアサルトライフルを二挺かまえ、両側のオーガロイドを銃撃で怯ませた。
「あの機体……強い!」
日々乃は侍アッシュガルの思わず畏敬の念を言った。アースセイヴァーはまだ立ち上がれない。
無駄のない移動と、洗練された剣技が合わさりあい、侍アッシュガルの動きは正に強者の戦士であることを証明している。オーガロイドたちは侍アッシュガルに大勢で襲い掛かる。対する侍アッシュガルは一機で日本刀を構えるのみ。
オーガロイドの攻撃が、そんな侍アッシュガルに多数襲いかかる。
『『『『『ウガァァァァァァァァァァァ!?』』』』
いや、アッシュガルは一体ではない。
【アッシュガル、C2、C3、降下】
輸送ヘリが四機。その二機ずつがワイヤーで懸架したアッシュガルを、地上に降ろしていた。
パイロットスーツを着て待機していた隊員が素早く搭乗。アッシュガル各機はアサルトライフルを脇に構え、銃口をオーガロイドに向けていた。
「ファイア!!」
「「サー!!」」
アッシュガル二機の了解の合図と共に、アサルトライフルの連射がオーガロイドを吹き飛ばす。一体また一体とオーガロイドを討伐されていく。
オーガロイドは避ける。しかし、アッシュガルもそれに続いて動き、銃口をオーガロイドに向けたまま離さない。
オーガロイドは素早く回り込みアッシュガルに襲いかかる。そこにサムライ・アッシュガルがキルオーガを振り下ろし、オーガロイドの脇腹を切り裂く。オーガロイドが機動を弱めた隙に、アサルトライフルが全身を穴だらけにする。
残るオーガロイドは二体のみ。疲弊した挙動を見せるオーガロイドに対し、サムライ・アッシュガルは全く体勢を崩さず日本刀を構える。その両側には、アサルトライフルを構えた二体のアッシュガル。
『ウガ、ァァァァ……』』
『ウガァァァァァァァァ!』
サムライ・アッシュガルは素早く腰のサブマシンガンを取りだし、オーガロイドの足下に撃ち込む。体勢を崩されたオーガロイドはその場で転ぶも、サムライ・アッシュガルに突進する。
そこにアッシュガルの一体が飛び出し、ナイフを取り出してオーガロイドに突き刺した。
「隊長の前に、貴様ごときが相手になるかぁぁぁ!!」
『ウガァァァァァ!』
「任せたぜ副長!! やっちまえ、隊長!!」
オーガロイドは押し倒され、その顔面をナイフで切り刻まれた。もう一体のオーガロイドは攻撃の隙を突いて、侍アッシュガルに攻撃を入れようとした。
それをサムライ・アッシュガルはアサルトライフルを捨てて、日本刀を両手で構えて突撃しオーガロイドとすれ違った。
『ウガァァァァァァァァァァァ!!』
オーガロイドは肩から斜めに刀身を斬られた。内部コアごと深々と胴体を斬られ、オーガロイドは爆発四散した。
同じく、内部コアにナイフを差し込まれたオーガロイドは、後ろに跳躍した副長機のアッシュガルの前で爆発四散した。
疲弊したアッシュガルから日々乃は、這い出た。
「はぁ……はぁ……」
日々乃は自分を情けなく思った。
「皆を守るとか言っときながら、一人で立ち向かってこれだぜ……」
自分のあの時の言動に、日々乃は恥を感じた。
「結局俺は……何も守れないのか」
「新橋くん。新橋くんであるな」
直後、侍アッシュガルから声が響き渡る。
「君がやはり、これの戦士であったか……新橋日々乃君!!」
ハッチが開き、中から金髪の青年が出現した。青年はメガホンなど使わず、声を高らかにして対話しようとする。
「貴方は、あの時の……」
日々乃はそれほど驚きもしなかった。薄々そうではないかと、戦闘の中において感じたのだ。
「その機体、“アースセイヴァー”の所在を、我々の部隊に置いてもらう!!」
「……え!?」
力を無くし、倒れこんだアースセイヴァー。
真っ直ぐに、姿勢よく立つアッシュガル─エモン機。
この出逢い、二人の人生を互いに融合するとは、この時誰も……日々乃にエモン二人も知る由はなかった。
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