エピローグ 夫婦のベッド

 宇宙港に帰った三人は、ターディル氏が確保していた予備のホテルで一緒にシャワーを浴びて、スウィーツを食べて、同じベッドで眠る。

 翌日からはレイが望んでいた通り、コーベシティーでコーベウシのステーキを食べて、キョートシティーで和三盆の甘味などを楽しみ、カゴシマシティーでシロクマアイスなどを堪能。

 その夜も、ホテルでは一緒にお風呂とベッドに入り、三人で夜更けまで女子トークを楽しんだり。

 そして最終日は、ホッカイドーエリアやフクシマエリアなどを巡り、食べて飲んで、三日間の隠密旅行が幕を閉じた。


 日が暮れる頃、ステーションへと上がった四人に、お別れの時が来る。

「はぁ~あ、旅行もお終いかぁ」

 寂しそうなレイに、マコトは優しく微笑む。

「帰ったらお嫁さんでしょう? おめでたいじゃない」

 心底から祝うマコトに、レイは少し、ぶぅ垂れ顔だ。

「も~、マコトさんのイジワルぅ」

「?」

 お嬢様の仄かな憧れに気づく様子の無いマコトに、ユキはヤレヤレ顔。

 クロムギン家の航宙船までお見送りすると、レイは明るい笑顔で尋ねてきた。

「ね、お二人が息ピッタリなのって、やっぱり訓練の賜?」

 レイの問いに、マコトはユキを見て、答える。

「ん~…どうでしょうね。付き合いが長いから、ユキの考えそうな事は 大体わかるかな」

「付き合いが長い…?」

 お嬢様の新たな疑問に、ユキがやはり、マコトに視線を送ってから、答える。

「ええ。私たちは実家もお隣同士でしたし、生まれた年も病院も一緒でしたから、なんだか物心が芽生えた頃には、当たり前に一緒に過ごしておりましたわ」

「なるほど…」

 それで、レイも納得できた。

 つまり二人は、精神的にもう夫婦なのだ。

「…私たちも、マコトさんたちみたいになれるのかしら…?」

「「?」」

 結婚が決まっているアラシアン・ルービスの、気弱だけど優しい笑顔を思い浮かべて、お嬢様は思う。

 レイの肩に、マコトの掌が乗せられる。

「結婚が不安? 大丈夫。レイならきっと、幸せな家庭を築けるよ」

「……うん!」

 トビキリ明るい笑顔を見せると「また来ますね!」と手を振るレイ。

 執事が恭しく頭を垂れて、扉がロックされて、宇宙船が出発。

 お嬢様は母星へと帰って行った。


 報告を終えて任務終了となった夜、二人はマンションの自室で、明日からの休暇をどう過ごそうかと考えていた。

 ベッドの上には、ユキが集めた行楽地のデジタルパンフレットが散らばっていて、マコトは適当に目を通している。

 いつも通り、パンツとタンクトップだけでベッドに転がるマコトの、少し離れた場所で、大きな枕を抱いたネグリジェのユキが正座。

「ねえマコト…添い寝して、宜しいかしら…?」

 ユキが遠慮がちにねだる時は、甘えたい時だ。

「ん? んー」

 そっけなく答えると、ユキはお姫様のような美顔を嬉しそうに輝かせて、枕と一緒に隣へダイブ。

「うふふ、マコト」

 名前を呼びながら、美しい王子様のような幼馴染の腕に縋り付くユキ。

「んー?」

「なんでもありませんわ♪」

 楽し気に言いながら、部屋の照明を落とすユキ。

「あ、こら。バンフ 読めないよ」

「もうおやすみなさいですわ」

「しょうがないな」

 ユキのワガママを適当に流し、マコトもパンフレットを放り投げる。

 二人はそのまま、ベッドで丸まった。


                          ~終わり~

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SF ねこうさ ゆりボイン 八乃前 陣 @lacoon

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