星明かりに濡れた向日葵
天宮詩音(虚ろな星屑)
第1話
夜明けを待ち焦がれる星々の駆ける空、薄く照らされた大地の上で、風に揺れる花がある。
静かに過ぎる雲の狭間、冷めていく土のその隙間、不思議に相応しく芽吹いたこの花は、きっと誰かを待っていた。
季節巡る真夜中だけに淡く輝きを放った。
手を伸ばす月明りにさえ負けるような。
鼓動はなく、脈動は重なる。
紐解いた過去に嘘を抱き締めたような、まるで夕焼けに沈む永遠花火。
与えた温もりに願った明日に原始の彼方を垣間見る。
やがて霧は満ち、一滴となった雨は地に降り注ぎ、草花に恵みをもたらすだろう。
木霊が響き渡る木立の果てには何があるのだろうかと。
憂いと水溜まりを顧みることなくただ向かう。
意味と恵みと逃避と懺悔。何かが欠けても探せない時を。
曇天の薄暗い空に描いている。
乾いた揺らぎが裏返る。
噤んだ口に広がる風景に追いつき、追い越す。
俯いた瞳に坂道は泣き出した。
代償には残された徒花の為の真実を捧げて。
暗闇に挑む海の向こう側、あらゆる閃光を孤独に耐えた。
それでも生きる今を苦しみに染めない。
夏が掻き消えそうな感傷、解けていく記憶が再会を希う。
何処までも蒼い大空に浮かんだ蜃気楼。
何も話すことはない、ただ泣いていた。
季節は崩れ、別れがまた遠ざかる。
傍に在ればそれが幸福だった。
消えない欠片が伝える言葉の数だけ願いが募る。
叶わないと知っていて、別れの言葉を紡ぎ出し。
抱え込んだ想いは群青の頁に。
それでも透明な心が消えることはない。
摘み取った翼に今でも怯えているから。
いずれ旅に音を連れて彷徨う。
ありふれた言葉に意味のない。
巡り合う日々に沿って歩いた。
風に乗って伝う花弁の重なる片隅で。
最後に振り返れば、歌声が許される。
儚い晩夏に、遥か天空に君が消えた。
星明かりに濡れた向日葵 天宮詩音(虚ろな星屑) @AmamiyaSionn
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。星明かりに濡れた向日葵の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます