親友

『もしもし。胡桃ちゃん。今大丈夫?』


『うん。大丈夫だけど、どうかしたの?彩花ちゃん。』


おばあちゃんから、お願いを聞いてもらうコツを聞いた次の日の夜。

私は親友の胡桃ちゃんに電話をしていた。


彼女は小学生低学年の頃からの付き合いで、

クラスこそ違うが、今でもよく一緒に遊ぶ仲だ。


いつもおさげツインの髪型をしていて、

少し気が弱いところがあるけどそれに負けないくらい

優しくて可愛い。


『実はちょっと悩んでてね…。』


私はまず、昨日おばあちゃんに話したことと同じことを

胡桃ちゃんに打ち明けた。

彼女は適度に相槌をしながら、熱心に聞いてくれた。

その後、私は最初に言った悩みについての話しを始める。


『おばあちゃんの言ってた、

 「お願いを聞いてもらうコツはお願いしないことよ。」

っていうのがどういうことなのか

全然わからなくて。』


私はあの後、一晩中その意味を考えていた。

だが結局、納得のいく回答を得ることは出来なかった。

なので親友に助けを求めることにしたのだった。


『お願いを聞いてもらうコツはお願いしないこと?』


胡桃ちゃんのおうむ返しを肯定しながら

私は自分の携帯に声を送った。


『どういうことだと思う?』


っと私の縋るような声を聞いた

胡桃ちゃんは、数秒だけ黙って

その後、おずおずと話し始めた。


『たぶん、だけどお願いをしないってことは、

代わりに何か別のことをするんじゃないかな。』


お願い以外の何かをする…。

それってなんだろう?

……。


『命令?』


『それは違うと思うよ。』


いつの間にか表に出ていた私の言葉を

胡桃ちゃんは苦笑混じりに否定した。

私もそれに、


『そうよね。』


と苦笑しながら同調した。


そして私は口を閉ざした。

携帯からも声は聞こえない。

おそらく彼女も考えているのだろう。

数十秒の沈黙を破り、


『彩花ちゃん。私思ったんだけど。』


と胡桃ちゃんが切り出しので私はすぐに

聞き耳を立てた。


『私がね、もし彩花ちゃんに二人三脚の練習をお願いされたら

断ったりしないと思う。』


私は『うん。』と相槌を打ち続きの言葉を待つ。


『つまりね、お願いをするなら

その前に仲良くならなきゃって意味なんじゃないかな?』


私は心の中で左手の平に上から右拳をポンっと乗せる動作をした。


『なるほどぉー。』


私は感心からか、いつもより息を多めに吐きながらそう呟いた。

この考えならお願いしない事がお願いを聞いてもらうコツだと言うのも頷ける。


『けど、仲良くなると言ってもどうすればいいのかしら。

それに、体育祭まで期間もあまりないし。』


私が問題を口にすると、


『たしかにねぇ。』


と胡桃ちゃんも同意した。

しばらく考えていたが、結局どちらからも良い案は出なかった。



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