255. 異世界2325日目 平穏な日々

 結婚式の後5日ほどオカニウムに滞在してから出発した。転移魔法でサクラに戻ることは出来るんだが、さすがに時間差なくサクラに現れるのはまずいだろうと言うことでしばらく人里離れたところで狩りをしていくことにした。


 オカニウムに着いたときに、道しるべの玉に魔素がたまるのにどのくらい時間がかかるかを確認することにしたんだが、道しるべの玉を取り出し、自分は携帯したままで、ジェンには空いた時間に魔素を注ぎ込むようにしてもらった。

 サクラまではジェンは7日目に魔素がたまったが、自分は8日目にたまった。さらに遺跡の島はジェンは11日目で自分は12日目だ。遺跡の島は山脈を大きく迂回していくので転移を使ったときのメリットは大きいな。

 行き先を選択したときに、魔素がたまっているところは表示の部分が光るので行けるところはすぐに分かるようになっている。

 飛行艇とか使った場合はそっちの方が早く着くかもしれないけど、先に魔素を貯めておけると言うことを考えるとやはり便利と言っていいだろう。道しるべの玉をいくつも持っていたら連発することも出来るしね。

 ただこの道しるべの玉なんだけど、どうも回数制限のようなものがあるらしいのだ。ある程度までは保証されているようだが、ある程度経過すると一定の割合で壊れてしまうことがあるらしい。

 見た感じではよく分からないようだが、充電式電池のような感じなのだろうか?まあ新品なのでそうそう壊れないと思うが、年数は経っているわけだからねえ。



 意識して注入した場合の魔素を貯める速度は感じ的に10%くらいの差だろうか?ジェンは起きている時間の半分くらいは魔素を注ぎこんでいたので、魔素を注入していた時間は1日の1/3くらいと言うことになる。

 おおざっぱな計算だけど、持っているだけの場合と比較して寝ないで注入すれば時間的におおよそ7割くらいになるという感じか。

 この天体上で一番遠いところは天体内部を抜けていくとして13000キヤルド、外周を移動するとして20000キヤルドくらいとなるはずだ。サクラまでの距離が直線距離で6000キヤルドくらいと考えると20000キヤルドとしても持っているだけで25日くらいで魔素はたまると考えていいのかな?全力で注入して19日というところか?とくに全力で貯めなくてもいいかな?

 その町に10日くらい滞在すると考えたら十分に魔素を貯めることが出来るので十分なのかもしれないな。もし複数人数が転移できるようになれば2つだけでも簡単に往復することが出来るしね。




 オカニウムの北にあるクニアレアの山奥に移動してから狩りを続けた。変装の魔道具を使っているし、知り合いもほとんどいないので特に気がつかれることもないだろう。さすがに町に入ったりするとおかしな事になるので拠点生活だけどね。


 8日ほどしたところでそろそろいいだろうと転移を使ってみる。

 装備をちゃんと確認して、何かあってもすぐに動ける体勢を取ってからジェンとタイミングを合わせて転移する。

 視界が変わり目の前の視界が一気に開けた。すぐに辺りを索敵するが特に何もいないようだ。


「ちゃんと転移できたね。」


「ええ、ちょっと緊張したけど大丈夫ね。」


「転移先に魔獣がいたらと考えるとかなり怖いけど、使えることは使えるな。出来ればちゃんとした空間にしておいた方が安全と言えば安全だけど、管理する人がいなければ結局は意味が無いだろうからなあ。」


「まあ、それは仕方がないわよ。転移先さえちゃんと設定していたら大丈夫と思うわ。」


 転移してしまうとたまった魔素はすべて消費してしまうみたいで、一からからためなければならないようだ。まあそんなにしょっちゅう使うつもりもないからいいんだけどね。



 サクラに戻り、いつもの宿のシルバーフローにチェックインする。今後の予定が決まらないとアパートとかを借りるわけにもいかないからとりあえずそれまでは宿暮らしだな。


「ジェン、予定の年数はとうに過ぎてるけど、この後どうしようか?」


「そうねえ。あと3年と言うことだったから出来るだけいろいろなところに行こうって思ってたけど、思ったよりも長かったわよね。」


「サビオニアにまた行ってみるのも一つだけど、折角なら行ったことのないトウセイ大陸に行くのもありかな?」


「トウセイ大陸と言うことはアウトラス帝国ね。前はキクライ大陸から進出してきたルトラ帝国と戦争をやっていたみたいだけど、最近は一応落ち着いているみたいだしね。」


「あっちは猿人ではなく、犬人や猫人などが多いらしいし、今までと違った生活習慣とかもあっておもしろいかもしれないよ。帝国というとちょっとイメージが悪いけど、別に侵略戦争をやっているところでもないし、ヤーマンとは交流もあるからね。どちらかというとルトラ帝国の方がちょっと怖いよ。」


「それじゃあトウセイ大陸についての情報を集めることにしましょう。」



 トウセイ大陸の事を本でいろいろと調べてみたんだが、思ったよりも最近の情報が少ない。詳しいものは数十年前の戦争を行っていた頃までしか書かれていないものだったりするのだ。まあ歴史などの背景はいろいろと分かったんだけどね。


「やっぱり本とかだと限界があるかなあ?」


「新聞のようなものもあるけど、やっぱり情報はかなり少ないからね。もともと海外旅行どころか国内の観光旅行というものがほとんどない世界だから仕方が無いかもね。」


「役場の資料に魔獣とかに関する資料はある程度はそろっているんだけど、やっぱり町の情報とかは少なすぎるよなあ。」


「やっぱり行ったことのある人に直接聞いた方がいいんじゃないかしら?」


 冒険者の伝を使ってトウセイ大陸に行ったことのある人を紹介してもらったが、そもそもトウセイ大陸に行ったことのある人が少ない。やはり国交はあるが、遠いというのがネックだろう。

 トウセイ大陸に行っても魔獣の種類がそこまで変わるわけでもないし、魔獣素材の価格が上がるわけではないから冒険者がわざわざ向こうの大陸に渡る意味が少ないんだよなあ。

 特に一攫千金の可能性のある遺跡の調査はこっちの大陸より進んでいるので新しく遺跡を発見する可能性は低いわけだし。


 よくあるゲームのようなダンジョンとかがあるのなら行く意味はあるのかもしれないけど、そういうものはこの世界にはないからね。まあモンスターが沸いて宝箱があるというダンジョンなんてどう考えてもゲームの世界の延長線上でしかないもんな。


 さらに向こうの大陸に行きにくくしている要因は、ナンホウ大陸程ではないが貴族社会ということだろう。特にヤーマンに住んでいたら余計に抵抗があるだろうな。



 それでも優階位以上の冒険者も多いサクラなので、護衛などでアウトラス帝国やルトラ帝国に行った人や国に仕える高官の人たちからも話が聞くことが出来たのはよかった。

 もちろん普通はなかなかそんな伝はないものだが、クリスさんや王家の剣のメンバーを知っているのが強いな。


 いろいろと冒険者達に話を聞いていたんだけど、久しぶりにカサス商会によってカルニアさんと話したところ、「なんで私たちに言ってくれなかったんですか!!」と言われてしまった。カサス商会がトウセイ大陸まで支店を持っていたことを完全に忘れていたよ。

 話を聞くと、「本当は機密書類に当たるんですけどね」と言われていろいろと資料を見せてくれた。魔獣関係の資料は少なかったが、一番不足していた文化や情勢などについてかなり細かくおまとめられていた。

 世界を股にかける商会なんだから各国の情勢をつねに把握しておくのは当たり前だよな・・・。なぜ忘れていたんだか。

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