169. 異世界951日目 二人の結婚式

思ったよりも長くなってしまいました。自己満足のために書いたような話ですので、軽く流すだけでも話の展開には影響はありません。結婚式の話が思ったよりも長くなってしまったのでなんとか一気に書き上げて更新予定を変更して本日もアップします。

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 ついに結婚式の日がやってきた。二日前まで雨が降っていたので心配だったんだが、今日はいい天気になって良かった。青空に雲が少し広がって秋晴れという感じ。気温もちょっと涼しいという位なのでちょうどいい。


 いろいろと考えて準備はしてきたけど、こっちの結婚式とは進行が違うのでトラブルがあるかもしれないけど、それはそれでしょうが無い。いくつか地球の結婚式の内容を加えたのでこっちの人にはなじみはないだろうけどまあなんとかなるかな?

 式では通常は神父が決まった方法で取り仕切っているんだが、簡単な流れの説明や誘導をしてもらう人を準備してもらった。神父もかなり前向きに考えてくれたので良かったよ。

 ただ結婚式の内容については自分が知っている内容とジェンの知っている内容で違いがあったので色々と話をしてやるものを決めていった。やっぱり国によってやる内容が違っているのはしょうが無いところかな?自分も親戚の結婚式に数回しか出たことがないからねえ。教会式に出たのも2回だけだ。



 今回式が行われるのはサクラでは結構な大きさの教会だ。普通はなかなか借りることはできないんだが、一応爵位もあるのでなんとかなった感じである。もちろん寄付という名目の使用料を支払わなければならなかったけどね。


 150人くらいは入れそうな教会なので、正直ここまで大きくなくてもという気もするが、警備のことを考えると結局この規模になってしまったのである。数十人の規模のところだと建物内も狭くなるし、建物も隣接しているからね。これはクリスさんたちにも相談して決めたので間違いは無いだろう。


 教会は5柱の神を信仰しているところで、神殿の正面には高さ5キヤルドくらいの大きさの5柱の神の像が設置されている。神の序列はないので、並んでいる順番は定期的に入れ替えられるらしい。壁にはいろいろな神話に関する彫刻とか絵画が設置されていてかなり荘厳な感じ。

 地球の教会にあるようなステンドグラスはないが、小さな窓がいくつも作られていてそれが模様のようになって綺麗だ。窓から直接に日が差すようにはなっていなくて、壁や天井を照らすようになっているのでまぶしいというわけでもない。


 式典にも使われるせいか、全体的にスペースがかなり広くとられており、中央に5キヤルドくらいの幅の広めの通路があり、祭壇の前もかなり広いスペースが作られている。席は5人くらいは十分に座ることのできる席が中央の通路の両側に設置されていて、壁側にもかなりのスペースがある。人が多いときにはイスを追加できるらしい。


 兵士には建物の廊下や出入り口を警備してもらい、冒険者の人達には敷地の周りの警備をお願いしている。車で来る参列者は建物の入口まで入ってもらい、テントの中で受付をしてもらうようにしているので誰が来たのかはすぐにはわからないようにした。



 それほど人数がいないこともあり、受付は自分が行っている。男の方の準備はそれほどかからないからね。2時頃にやってくるように言っていたので、車や歩きでやってきた参列者を出迎えていく。みんなちゃんとした正装を準備してくれていたようだ。

 参列者の人達には今回やってくる人達の話は済ませているが、さすがにかなり驚いていた。クリスさんたちのことでもかなり驚いていたが、ジョニーファン様の名前を聞いたときはかなり青ざめていたからね。

 ジョニーファン様やラクマニア様にも失礼があるかもしれないことは説明したところ、この式に参加する時点で無礼講と考えているから問題ないとは言われている。



 ジェンの髪のセットや衣装の着付けは専門の人にやってもらっているんだが、ジェンはアキラとマラルにも手伝いをお願いしていた。二人にはこっちで用意した衣装に着替えてもらっていろいろとやってもらうらしい。アメリカでは友人にいろいろやってもらうことが多いらしい。


 やってきた人達には簡単な軽食を準備した部屋で待機してもらう。ここの準備はクリスさんのお店から手伝いに来てもらった。ただ何かあっても大変なので、事前準備だけで給仕はなしという仕様だ。これは参列者の人達にも了解を取っている。



 全員の受け付けを終了したところで、自分も準備を済ませてから教会の中庭へ。どうもファーストルックと言われるもので、ジェンが花嫁姿を先に見せてくれるようだ。参列者達は建物の窓から見ているんだが、こっちは後ろ向きに立っているように言われているのでかなり緊張する。


 しばらく待っていると、少し足音が聞こえてきた。


「イチ、いいよ。」


 振り返ると純白のウエディングドレスを着たジェンの姿が目に入ってきた。スカートはふんわりした形のもので細かな刺繍が色々と入っている。ベールはかなり長くてマラルさんとアキラさんが裾を持っている。ちなみにマラルさんとアキラさんは薄いピンクのおそろいのドレスに着替えていた。


「・・・・」


 きれいだ・・・。今日、こんな綺麗な人と夫婦になれるんだな・・・。


「どう?」


「うん・・・とても似合ってる。


 とても・・・


 自分の妻になってくれる人がこんな綺麗な人とか・・・」


「あ、ありがとう。」


 ついキスをしようとして止められてしまった。


「みんなが見てるし、するのはこの後でしょ!!」


 そうだった・・・いかんいかん、我を忘れてしまいそうになっていた。



 遠くから見ていたみんなが、「まだ早いぞ~~~!!」と突っ込んできた。マラルさんとアキラさんも苦笑いしている。




 このあと参列者には教会に移動してもらい、自分たちは教会正面の扉の前に移動する。このときにかわいく着飾ったソラニアくんとクリスティファちゃんの他にマラルさんとアキラさんにも一緒に来てもらう。



 ドアの中から聞いたことのある音楽が流れてきたところでドアが開いた。教会にはパイプオルガンのような楽器があり、ジェンが知り合いになった演奏家の人に弾いてもらっているのである。

 こっちではもちろんなじみのない音楽なんだけど、自分たちにはなじみのある曲だ。もちろんこっちとは音程が若干違うので編曲するのが結構大変だったようだが、かなり近い感じに仕上がったようだ。

 自分としては「タンタッカタ~ン」(ワーグナーの結婚行進曲)で始まる方が印象にあったんだけど、ジェンからそれは悲劇だからと反対されて「パパパパーン」(メンデルスゾーンの結婚行進曲)で始まる音楽になったのである。


 先頭にアキラさんが歩き、そのうしろにクリスティファちゃんが花びらを蒔きながら歩いてもらい、マラルさんは自分たちの後ろ、そのあとにソラニア君が自分たち二人の結婚指輪を納めた箱を持ってきてもらった。

 席には一人または二人ずつが通路に沿って立っており、拍手をしながら自分たちを祝福してくれた。その中には着飾った孫達を見てかなり顔が緩んでいるラクマニアさんの姿があった。

 ゆっくりと歩いて祭壇の上までやってきたところでアキラとマラルはジェンのドレスやベールの手入れをしてから4人には席に戻ってもらう。



 このあと神父からの説教があるが、前にも聞いたように朗読方法がちょっと特殊なので正直何を言っているのかわからない。ほんとにお経みたいだよなあ・・・。

 このあと運んでもらった指輪を手に取りジェンの指にはめるが、こっちの作法に則ってジェンに声をかける。


「ジェン、これからもよろしくね。これからも二人で楽しんでいこう。」


 そのあとジェンから自分の指に指輪をはめてもらう。


「イチ、もう絶対に私から逃げられないからね。覚悟してよ。」


 なんかジェンがちょっと怖い感じなんだけど、気のせいだよね?


 このあとこちらの様式にのっとり宣誓をする。


「「私たちは永遠の愛を神の前に誓います!!」」


 宣誓をするとなぜかあたりが明るくなった。驚いていると祭壇にあったカムヒ様の像が光っていた。どういうこと?


「カムヒ様から祝福を受けたようです。二人の結婚は間違いなく神に認められました。」


 神父からの言葉の後、参列者から割れんばかりの拍手が鳴り響いた。どうやら神様が祝福をくれたらしい。あとで聞いたところ、すべてではないが、結婚した二人にカムヒ様からの祝福がもらえることがあるらしい。


 このあとジェンと向かい合ってからベールを上げでジェンにキスをする。こっちではないイベントなので、みんながちょっと驚いていた。



 一通り式が終わったところで、中央の通路を抜けて退場する時に全員からフラワーシャワーを受けながらドアから外に出る。そして教会の中庭に移動してからブーケトスを行うこととなった。

 もちろんこっちではない風習なので参列者の人達に説明してから独身の女性に参加してもらうことになった。ただ独身の女性はそれほどいないけどね。アキラさんとマラルさんともうすぐ結婚する予定だが、王家の剣のミスカルトさんとマルニキアの4人だけだ。

 ジェンがブーケを投げるとアキラさんがしっかりとキャッチしていた。「次は私か~~~!!」とうれしそうにしていた。他の3人には小さなブーケをプレゼントする。




 少し参列者の人達と話をした後、バスのような車に分乗してからクリスさんのお店に移動する。



 お店でも先に皆に会場に入ってもらい、会場の入口で待っていると、中からコーランさんの声が聞こえてきた。披露宴の進行はコーランさんにお願いしていたのである。誰かいい人がいないかとコーランさんに尋ねたら「私がしますよ。」と立候補してくれたのでそのままお願いしたのである。


「本日結婚いたしましたジュンイチさん、ジェニファーさんが入場しますので、盛大な拍手をお願いします。」


 ここでもアキラさんとマラルさんに先導してもらって入場。一段高いところに用意してもらった席に着くとコーランさんからの案内が始まる。


「それではこれよりジュンイチさん、ジェニファーさんの結婚式披露宴を始めさせてもらいます。僭越ながら司会は私、カサス商会のコーランが務めさせていただきます。」


 まずはコーランさんから簡単な祝辞の後、ジョニーファン様からも簡単な祝辞と乾杯の発声をしてもらう。

 それから事前にお願いしていたスピーチという感じで自分のことはクリスさん、ジェンのことはルミナさんに少し話してもらう。出会ったときの印象などを聞いていると、そんなこともあったなあ・・・と懐かしく思ってしまった。


 一通りの祝辞などが終わったところで皆に見守られながらケーキカットを行い、ファーストバイトという恥ずかしいイベントまでやってしまったよ。ジェンがノリノリだったからね。みんな何事かと思っていたようだが、趣旨がわかってかなり盛り上がっていた。ジェンにはちゃんと食べさせたんだけど、ジェンは予想通り半端ないほどのケーキを載せてきてしゃれにならなかったよ。

 ケーキを配った後、同じようなことをしている夫婦もいたのは見なかったことにしておいた。うん、仲がいいね。


 このあといったん退場はしなかったが、キャンドルサービスなどもやってみたんだが、これも何事かと驚いていたようだ。最後に席にある大きなハート型になる蝋燭に火をつけてキャンドルサービスも無事に終了した。


 途中参列者の人達と色々話をしたりしていたんだが、披露宴に参加された方にも何か余興をしてもらおうとお願いすると、王家の剣のメンバーが剣舞をやってくれたり、アキラさんとマラルさんが歌ってくれたりと結構盛り上がった。あまりこういう余興をやることはないようだったのでかなり珍しいのだろう。

 ジョニーファン様は魔法を使った隠し芸のようなことをやってくれて皆驚いていた。それに対抗意識を燃やしたらしいラクマニア様も見事な魔法を披露していた。


 最後に皆への挨拶で締めて、2時間近くの披露宴を終了する。出口でお礼のお菓子を渡してから全員を見送った。残ったクリスさんたちにお礼を言ってから自分たちは予約しておいたシルバーフローに移動する。



 部屋に戻ってから服を着替えてやっと落ち着くことができた。これで晴れて夫婦になったんだなあ・・・とかなり感慨深い。

 そのあとはとても甘い夜を過ごしたよ。うん、気がついたら朝だったというのは気のせいにしておこう。治癒魔法を駆使したのは秘密だ。




 ちなみに結婚が認められたことで、身分証明証に項目が追加されていた。今までの賞罰の下に”婚姻”という項目が追加され、そこにジェニファーの名前が書かれていた。なんか気恥ずかしいな。

 そしてスキルにカムヒの祝福が追加され、そのせいもあって神の祝福のレベルがさらに上がっていた。効果は”物理耐性上昇-4、魔法耐性上昇-4、能力吸収上昇-2”である。

 能力吸収上昇といってもいままでの経験から考えるとそれほど強力なものではない感じなので急に能力が上がるわけではないんだよね。まあ魔術関係はカムヒの祝福との相乗効果で今までよりは上がりやすくはなっているというくらいに考えておいた方がいいだろう。



~ジェンSide~

 今日は私たちの結婚式だ。いろいろ大変だったけど、イチと一緒に色々と考えるのも楽しかった。教会の人達やクリスさんのお店の人達、コーランさんたちも色々協力してくれて助かったわ。コーランさんは自分たちが言う内容にかなり驚いていたけどね。いろいろと詳しく聞いていたのできっと何か商売にするつもりね。


 教会に着いてからアキラとマラルにも手伝ってもらって準備に取りかかった。アキラとマラルにも衣装は準備していたので着替えてもらったんだけど、なかなかいい感じに似合っていて良かった。あとでその衣装はそのまま持って帰っていいというとかなり驚いていたけどね。手伝ってもらうお礼だよ。


 ファーストルックは日本ではなじみがなかったみたいでイチは「何のこと?」って言っていたんだよね。でも私の姿を見て「自分の妻になってくれる人がこんな綺麗な人とか・・・」と言われたときはうれしかったわ。でもそのままキスしようとしたのはだめよね。



 入場の音楽は知り合いの音楽家の人にお願いしたけどこっちは大変だったわ。音階が若干ずれるのでやっぱり聞いていて違和感があるのでそれをどう調整するかだったんだけど、さすがにプロの人達だと思ったわ。

 自分がある程度のイメージで弾いてから話をした後、アレンジしてもらったんだけど、その時点でかなりの完成度だったからね。そのあと細かな調整をしてもらって納得いく感じになったんだよね。

 どのくらいお礼をすればいいのかわからなかったんだけど、この曲を他でも使わせてもらえるのならお金はいらないと言われたのよね。さすがにある程度は払ったけど、ありがたかったわ。

 ただイチはワーグナーの結婚行進曲を言ってきたのはちょっと驚いたわ。日本では使う人も結構いるらしいみたいだけど、あまり内容は意識していないのかしらね。

 当日は参列者のことはさすがにふせておいたわ。なので入場のところだけ曲を弾いてもらって後は退出してもらったのよね。



 あと、指輪交換の時の言葉を忘れないでよね、イチ。なぜかイチが身震いしていたようなのは気のせいかな?


 結婚式ではさらに神様の祝福をもらって驚いたわ。でもそれだけ祝福してくれたってことなのよね。イチと結婚できたことが神様に認めてもらえるというのはかなりうれしいわ。



 披露宴ではルミナさんのスピーチはちょっと恥ずかしかったけど、そんなことがあったなあと懐かしかった。最初にあの二人に会わなかったらきっと違った人生になっていたかもしれないわ。今回来てくれてほんとにうれしかったわ。

 そのあとの余興もかなり楽しかったわ。参列者の人達も最初はかなり緊張していたみたいだけど、最後の方はかなり打ち解けていたので良かった。まあ普通はなかなか会えない人も多かったから緊張するのも仕方が無いことだけどね。


 でも夕べはかなり疲れたのよね。治癒魔法を使っていたとはいえ、まさか朝までとは思わなかったわ。まあ私も一緒に求めてしまったからしょうが無いんだけどね。



~あとがき~

ここまで書いておいて今更なんですが、結婚したという事実以外は今後の展開にはそれほど大きな影響を与えるものではない話でした。ただ二人がやっと結ばれるということを考えるとやはり外せない内容でした。

いろいろと書きたいことを書いているとかなり長くなってしまったというのは否めません。もともと結婚式の準備から1話で終わらせようかと思っていた話でしたが、思ったよりも長くなってしまったという感じです。

結婚式についてはやはり日本と海外では色々と違うところがありますよね。文化や歴史の背景によって変わってくるものだと思います。日本の結婚式も時代とともにいろいろと取り入れられて変わってきていますが、今回書いたこともいずれは日本でも普通に行われるようになるかもしれませんね。

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