120. 異世界546日目 再び温泉を堪能
本編からかなり脇道にそれた話となります。二人の進展には関係しますけどね。温泉大好き・・・
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出発するとすぐに町は見えなくなったが、見えなくなるまで二人は門のところで手を振ってくれていた。次に来るときには幸せになっていると嬉しいなあ。
依頼の一つは完了したので次に進めるのはジョニーファン様からの依頼だ。まあ今年中と言われていたので時間的には十分間に合うだろう。
途中で拠点に泊まりながら南下してまずはクリアミントを目指す。せっかくなので拠点では料理を作ってみる。もちろんなかなか思うようにはいかないが、それなりには形になってきた、と思う。
とはいえ、毎日はさすがにきついので、適当にお弁当とか出来合のものを食べたりしている。基本的に無理はしないというのが二人の取り決めだ。
しかし、二人で料理を作っていると変な気分になるな。「新婚の夫婦ってこんな感じなんだろうか?」とか考えてしまう。いかん、いかん。
クリアミントではカサス商会によって魔道具を卸していく。他にも魔道具とかでいいものがないかを見て回り、いくつか購入することができた。魔道具に関してはやっぱりこの国が一番いいだろうからね。
今回もいいものがみつかったのはいいんだが、かなりの出費になってしまった。しばらくはこれらの魔道具が手に入らないと考えるとここで買っていくしかないと思ったからね。ジョニーファン様からの依頼報酬と魔符核の販売代でなんとか使ったけど、後悔はない。残金は100万ドールを切ってしまった。まあそれでも1000万円持っていると思えばまあ十分なんだろうけどね。最悪何かあっても装備を売れば数100万ドールは手に入るし。
名称:治癒の指輪(良)=155万ドール
詳細:銀製の指輪。治癒魔法使用時の効果が30%向上する。
品質:良
耐久性:良
効果:良
効力:治癒力強化-3
名称:力のネックレス(良)=145万ドール
詳細:銀製のネックレス。筋力が30%向上する。
品質:良
耐久性:良
効果:良
効力:筋力強化-3
名称:耐久のアンクレット(高)=73万ドール×2
詳細:銀製のアンクレット。持久力が20%向上する。
品質:高
耐久性:高
効果:高
効力:持久力強化-2
魔術の指輪を入れ替えて治癒の指輪はジェンが、力のネックレスは自分のものをジェンに渡し、今回のものは自分が装備する。早く自分でこのレベルの付与魔法ができるようになればいいんだけどね。一応魔獣石の消費を無視したものは作れるんだけどなあ。まあ非常用だな。
クリアミントで一泊してから翌日から再び移動を開始し、行きにも寄っていったサイノレアに寄っていく。
前に泊まった北の湯という宿に行ってみると、部屋は開いていたので今回もここに泊まることにした。今回は温泉を十分堪能するために3泊の予定だ。なんて贅沢!!さすがに1週間とかは無理だが、温泉を堪能するには最低2泊はいるからね。
夕食の時間を伝えてからさっそくお風呂に入ることにした。内湯と露天があるんだが魔道具で虫が飛んでこないようになっているのはありがたい。
体を洗って露天の湯船に浸かってしばらくすると、今回もジェンがバスタオルを巻いてやってきた。今回は動揺しないぞ。
「期待を裏切らないで今回も入ってきたね。ちゃんと体を流してから入ってよ。」
きっと入ってくるだろうと思っていたから今回はあまり動揺しないですんだ。
「わかっているわよ。お風呂に関してはイチになんども言われたからね。」
体を洗っているようなので外の眺めを堪能していると、ジェンも湯船に入ってきた。
「あ~~~、ほんと、いいところね。前はお風呂なんてって思っていたけど、たしかに慣れたら気持ちがいいものね。」
「そうだろ。日本だったらほんとにいろいろな温泉があるんだ。両親に連れて行かれた山の中の温泉とかは面白かったよ。
他にも河原を掘ったら湯船になるようなところもあるし、炭酸の入った温泉とか、滝の温泉とかいろいろあって面白いんだよ。海岸沿いの夕日が見える温泉とかは最高だったよ。」
「もとの世界に戻ったら行ってみたいわ。」
「もとの世界に戻ってもお風呂の気持ちよさは覚えていると思うよ。」
戻ったら連れて行ってあげるよとは言えないところがちょっと悲しいな。
ジェンもお風呂にはまってきたみたいなんだが、ふとジェンの方を見るとなんかおかしい。
「なあ・・・気のせいだと思うけど、水着って着てるか?」
「お風呂に水着ではいるのは邪道って前に言っていたじゃない。」
「そ、それはそうだけど、それはあくまで普通のお風呂だ。混浴だったら水着を着るのはしょうが無いよ。」
「大丈夫、大丈夫、他にいるのはイチだけだからね。」
「いや、自分がいるから水着を着てよ!」
まずい、ほんきでまずい。水着でもかなり悩殺されてしまうレベルなのに、裸と言うことを意識したらしゃれにならない。
「はぁ~~~、いいきもち。ねえイチもくつろいでる?」
「くつろげるかぁ!!」って叫びたい。平常心、平常心・・・。せっかくの温泉なんだ、平常心。
「どうしたの?大丈夫?」
そういって顔に手を上げてくるジェン。
「先にあがるから!!」
そう言って逃げるように脱衣所へ。
「は~~~、勘弁してよ。」
部屋で休憩していると、しばらくしてジェンが上がってきた。
「うーん、いいお湯だったわ。イチごめんね。ちょっと刺激が強すぎた?」
「おまえなあ、そんなことして自分の自制が効かなかったらどうするんだよ!!」
「まあ、そのときはそのときね。襲ってみる?」
そんな根性がないのわかってて言ってるだろう!
「これ以上はほんとに勘弁してくれよ。」
「わかったわよ。ふふふ・・・。」
このあとは部屋で夕食となるが、ジェンが食前酒代わりに秘蔵のお酒を出してきた。お酒の持ち込みはいいのかわからないので食事を運んできた女性に聞いて見る。
「すみません。ここってお酒の持ち込みは問題ないでしょうか?」
「えっと、お酒ですか。本当は持ち込み不可なんですが、こちらで準備できないお酒などもあるので少々であれば大目に見ています。」
「そうなんですね。飲むと言っても一本全部飲むわけではありませんけど、これ以外は注文すると思います。」
そういってお酒を見せる。
「えっと・・・、っ!!」
瓶を見てなぜか驚きの表情で固まっていた。
「し、失礼しました。さすがにこれと同等のお酒は準備できませんので持ち込みは大丈夫です。」
なんかかなり動揺しているけど、大丈夫かな?準備途中で「少しだけ失礼します。」と言って出て行き、代わりに他の人が後を引き継いでやってきた。
とりあえずメインの食事は後にして簡単な前菜だけを準備してもらっていたのでお酒を飲みながらしばらく会話を楽しもうとしたところでノックが聞こえてきた。どうしたんだろうと思ってドアを開けると、なぜか頭を下げた人が二人と先ほどの従業員の姿があった。
「お食事中に失礼します。誠に申し訳ありませんが、少しばかり時間をいただくことはできないでしょうか?」
なんかえらく必死なので食事はいったん中断して話を聞くことにした。なんか知らないうちに罪を犯したってこととかはないよな?ちょっと警戒してみるが、特に誰か隠れているという感じでもない。
最初に自己紹介されると、先ほどの従業員の他の二人はこの宿のオーナーと料理長らしい。なんでオーナーが?料理長もここで時間を潰していていいのか?
「ぶしつけなお願いになるのですが、先ほど持ち込みと言っていたお酒を見せてもらうことはできないでしょうか?」
持ち込みのお酒だめだったのかな?
「結構貴重らしいので注意して下さいね。」
そう言って瓶を渡すと3人が真剣な顔で見始めた。
「まちがいない・・・、そうだな・・・鑑定でもそう出ている・・・。ほん・・・。」
なにやら鑑定をしたりして色々とみているみたいだ。そう思っていると、突然頭を下げて聞いてきた。
「このお酒はかなり珍しいものなのですが、ご存じでしょうか?」
「えっと、確かに貴重みたいですね。幻と言われているという話は聞いています。なので特別な時とかにしか飲まないものですね。」
「失礼ですが、入手方法などをお聞きすることはできないでしょうか?」
「うーん、まあ簡単に言うと古代遺跡の調査中に昔の人が保管していたお酒を見つけたんですけど、その中にあったという感じです。
残念ながらあったものはすべて回収してきたので取りにいってももう無いと思いますよ。」
「そうなのですね。すみませんが、できる限りの金額は出させてもらいますので、このお酒の試飲をさせてもらうことはできないでしょうか?」
ジェンの方をみると、かなり驚いていたんだが、3人の表情を見てやれやれという顔になった。
「わかったわよ。試飲くらいでいいのならいいわよ。そのかわり宿代くらいは出してくれるんでしょうね?」
「はい、そのくらいは当然払わせてもらいます。」
そういうと速攻で試飲用のグラスを持ってきた。3人に少しずつ入れてあげると大喜びしていた。
「すごい、これが幻と言われるお酒か。奥が深い。口当たりがここまでまろやかだとは・・・。」
しばらく感想を言い合いながらお酒を堪能する3人。
「は、し、失礼しました。ほんとうに、ありがとうございました。」
「いえ、大丈夫ですよ。それでは今回の宿代くらいは出してもらえると言うことでいいんですよね?」
「「「え?」」」
「え、な、なにか・・・。」
「今の試飲だけでもこの宿の最高の部屋に長期間泊まる分の価値は十分にあるものなのですよ。それ以前にまず飲む縁に巡り会えることがまず無いことなんです。」
「そ、そうなんですか?まあ、今回の宿代を出してもらえるなら十分よね、イチ?
それにそこまで飲みたいと思う人に飲んでもらえたらお酒を造ってくれた人もうれしいと思いますし。さすがに全部飲まれると困りますけど、もう1杯くらいならいいので飲みますか?」
「「「ほんとですか!!」」」
3人に詰め寄られてジェンはかなり圧倒されていた。
しばらくおかわりのお酒を堪能していたんだが、先ほどのまかないの女性がなにやら言ってきた。
「今からでも部屋を移ってもらったらどうでしょう?たしかあの部屋が数日間は開いていたはずですよ。」
「それもそうだな。すぐに準備をさせよう。」
なぜかそこから部屋を移動させられてさらに立派な部屋へとやってきた。なんか部屋の広さが3倍くらいになってるんだけど・・・。温泉の広さも3倍くらいになってしかも浴槽が数種類に増えてるんだけど・・・。
「え・・・この部屋使っていいんですか?」
「はい、大丈夫です。今日の夕食は無理ですが、明日からの料理は先ほどいた料理長が腕を振るうと言っていましたので期待して下さい。
今日の夕食も追加で特別料理を持ってきますのでお待ち下さい。」
部屋を移ってから仕切り直して少し秘蔵のお酒を飲んでみるが、確かに美味しかった。ただあそこまで言われるとそんなには飲めないので、早々に終了することになった。ジェンは追加でお酒を頼んでいたけどね。
しばらくしてから料理が運ばれてきたんだが、見るからに高そうなものが並んでいた。見た目だけでなく味も最高だったが、いいのだろうか?
「オークションの時の話では1本50万ドールくらいだったよね?」
「確かそのくらいだったと思うわ。」
「それじゃあ、さっきの量だと2杯ずつとはいえほんとにちょっとしか飲まなかったから数万ドールもしないくらいだよね?この部屋って一泊1万ドールってレベルじゃないよね?」
「多分一泊数万ドール以上はするんじゃない?」
「なんか食事もすごいことになっているけど、いいのかな?」
「まあ酒好きにはそれ以上の価値があると考える人がいてもおかしくないわよ。せっかくなので堪能しましょう。」
「まあ考えても意味が無いな。せっかくだから言葉に甘えるか。」
夕食を堪能すると、さすがに疲れてきていたので温泉にはひかれたんだが眠りにつくことにした。ベッドも最高級品なのか寝心地は最高だった。
翌日朝早く起きてから早速朝風呂へ。大浴場はまだ開いていないから部屋に温泉がついている人の特権だな。
朝日が昇ってくるのを見ながらのんびりを温泉に浸かっていると、またジェンが入ってきたが、今日はちゃんと水着を着ていた。刺激的ではあるんだが、まだ大丈夫、大丈夫・・・。お風呂からは上がれないけど。
温泉はいくつかの種類を引いているみたいで、浴槽によって異なる泉質になっていた。すごいな。サウナもあって朝からさっぱりだ。朝食もかなり豪華な内容で十分に満喫することができた。
このあと町の中を散策する。特にめぼしいお店があるわけではないんだが、観光地という感じなのでちょっと遊ぶ遊技場などがあって気分転換にはなる。
お昼は適当に買い食いしながら食べ回り、演劇なども見てから早めに宿に戻る。
戻ってから大浴場や部屋の温泉を堪能してから夕食だ。夕食の時には今日もお酒を少し飲んでいたんだが、出されるお酒も結構美味しくて結構飲んでしまったよ。ちょっとまずいな・・・。さすがに酔っ払った状態でお風呂に入るわけにも行かないのでそのままベッドに撃沈。
目を覚ますとなにやらいい匂いが・・・。なんか柔らかい感触がする・・・。あれ?これってもしかして。と目を開けると、ジェンを抱きかかえて眠っていた。
「ええ~~~!!」
「っ!もう、びっくりするじゃない。」
「なんでジェンが自分のベッドに入っているんだ?」
「よくみてよ。こっちは私が寝ていたベッドよ。夜中にトイレに行ったみたいでその後こっちに入ってきたの。一晩抱きしめられていたのでこっちは寝不足だわ。」
「・・・なにかしたか?」
「たいしたことじゃないわよ。私をずっと抱きしめていたけど・・・気持ちよかった?」
「ちょ、ちょっとまって・・・いや、大丈夫なはずだ。服も着ているし、ジェンもパジャマを着ているし。」
「大丈夫よ。責任とってもらうことでもないから。」
お酒は控えよう・・・。
朝から再び温泉を堪能し、今日の朝食もかなりのごちそうをいただく。この日は部屋でのんびり過ごすことにしたので掃除の時間だけ宿の中を散歩してからあとは温泉に浸かったり、部屋でくつろいだりとのんびり過ごす。
夕食はまた豪華なものでおなかもいっぱいだ。さすがに今日はお酒はやめておいた。
翌日も朝食を食べてから温泉宿を満喫してから宿を出発することになったが、お酒をおごった三人がまた挨拶をしてきたので恐縮してしまった。
~宿のオーナー・ハスカルSide~
この間は人生でもなかなか無い幸運に恵まれた日だった。お酒好きが講じて宿の経営の傍らお酒の収集をしているんだが、今日は死ぬまでに一度は飲んでみたいと思っていたあの幻のモンドリアのブランデーと出会うことができたのだ。
最近ヤーマンのオークションに出品されたという話を聞いて、参加できずに残念に思っていたところだ。しかもあのお酒を含めたセット10本で158万ドールという値段で落札されたようだ。直前での出品となったのでおそらくそれだけの価値を認める参加者が少なかったのだろう。もし私が参加していたらもっと出していたかもしれない。
食事の準備をしていた従業員でお酒仲間であるサミラから話を聞いたときはなんの冗談かと思ってしまった。あまりの必死さに料理長のタカミラも誘って押しかけてしまった。経営者としてはあるまじき失態だ。
そんな無礼な態度にもかかわらず、ジュンイチとジェニファーという二人は私たち3人に試飲させてくれた。素晴らしかった。幻と言われるものだが、誰もが求めるのがわかった。
あまりの展開にお礼の話をちゃんとしないまま試飲させてもらったので困ってしまった。後からだから何を言われてもしょうが無いと覚悟を決めていたのに、今の部屋の代金と言ってきた。価値を知らないのかと思ったが、せっかくのお酒だから飲みたい人にのんでもらった方がいいと答えが返ってきた。
サミラからちょうど最上級の部屋が開いていたはずだから移ってもらえばどうでしょうと提案があってすぐに準備してもらうことにした。かなり恐縮していたが、それだけの価値は十分にある。食事も最高のものを食べさせてやるとタカミラも腕を振るっていた。
出るときにはお礼と言ってお酒を渡してくれた。これも今ではなかなか手に入らないと言われるお酒だった。秘蔵のコレクションになるだろう。今回のお礼に私の知り合いを何名か紹介したが、釣り合いはとれるだろうか?お酒を受け取っているときに二人がすごい形相で見ていたので分けてあげないわけにはいかないだろうな。
~サミラSide~
素晴らしいお酒だったわ。まさか私があのお酒を飲むことができただなんて、酒仲間には一生自慢できることだわ。
若いカップルの二人の食事の準備をしていたら、お酒の持ち込みについて聞かれて驚いたわ。持ち込んでも何も言わない人も多いのに、若いのに礼儀正しいなぁと思い、少しだったら大丈夫ですよとお酒を確認して驚いたのよね。
同僚にあとのことをお願いしてオーナーのハスカルさんのところに大急ぎで行ったのだけど、なかなか信じてくれなかったわね。それじゃあ私だけでも飲ませてくれないか頼んでくるわというと驚きながらもついて来た。
結局本物だったのだけど、なんと二杯も試飲させてくれて天にも登る気分だったわ。お礼にオーナーに言って最上級の部屋を準備させてもらったけど、私も専属でお世話させてもらったわ。
宿を出る時にお礼と言って珍しいお酒をオーナーがもらっていたから、少しはお裾分けをもらわないといけないわね。
~タカミラSide~
前に一度だけ飲んだことのある幻のお酒を飲むことができた。しかも前は舐める程度だったのにあそこまで味わえるとはなんたる幸運か。
お礼に腕を奮って構わないと言うので秘蔵の食材も使って料理したさ。量はそんなにいらないといわれていたので一品一品を精魂込めて作ったよ。ここまで心を砕いたのも久しぶりだな。
お礼にまたお酒をもらっていたんだが、それもかなり珍しいお酒だった。ちゃんと自分たちにも分けてくれるのかな?
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