86. 異世界397日目 車の受け取り
今日車が納車されるというので受け取りに行くことにした。スレインさん達も新しい車に興味があると言うことなのでお店で待ち合わせることにしている。
お店に到着すると、すでにスレインさん達がやってきており他の店員に話しかけられていたが、自分たちに気がつくとすぐにこっちにやってきた。そのあとクーロンさんと店長ともう一人やってきた。
「どうも初めまして。この車を作っている会社のエラードといいます。このたびはご購入ありがとうございます。」
「あぁ、どうも初めまして。ジュンイチと言います。こっちはパーティーを組んでいるジェニファーです。」
購入の時には自動車メーカーの人がやってきて説明するのかな?と思ったんだが、説明はクーロンさんが行うようだ。
一通りの車の説明の後、追加で付けてもらったミラーや音楽の出る魔道具について説明を受ける。ミラーはイメージ図を渡していたとおりの感じで取り付けられていた。ある程度向きも変えられるようになっているのは指定通りでいい感じ。スレインさん達も取り付けたものをみて「なるほど、いいかも。」と言っている。
一通りの説明を受けた後、エラードさんから提案があった。
「今回取り付けさせていただいたミラーや音楽の出る魔道具についてなんですが、他の車にも採用させていただいてもよろしいでしょうか?」
なんでわざわざ聞いてくるんだろう?いいと思ったら勝手に付ければいいのに。
「ええ、さすがに効果が分かったらみんな勝手に付けるだろうし、問題ないですよ。」
「いいのですか?」
「なにか問題でもあるのでしょうか?」
なにが言いたいのかよく分からないなあと思っていると、スレインさんが助言してくれた。
「ジュンイチ。今回のアイデアを採用するに当たって対価をどのくらい払えばいいかと聞いているんだと思うぞ。」
「え?対価って?こんなの少ししたらみんな思いつくことでしょ?別に対価なんていらないですよ。」
なんかエラードさんだけでなく、チューリッヒさんやクロードさんも驚いた顔をしている。なんか変なことを言ったのかな?
「いえ、車ができてかなりたちますが、このような発想をした人がいなかったので今まで付いていなかったんですよ。音楽については車内が静かになったこともあって思いつくかもしれませんが、それでもすぐに思いつくものでもないような・・・。」
うーん、そう言われてもなあ。自分にとっては普通のことなのでこれで対価をもらうと言ってもなんともいえないよ。
「それじゃあ、なにか車の機能で思いついたときに検討、研究してもらうと言うことで良いでしょうか?」
「それはこちらとしては願ってもない申し出なんですが・・・よろしいのでしょうか?」
「ジェン、それでもいいよね?」
「イチがそう思うのならかまわないわ。いろいろと車に付けてもらいたい機能も出てくると思うし、便利になれば移動も楽になるからね。
ああ、そうだ。試験的に付けてもらうのは無料でやってくれるってことでいいんですよね?」
「それはもちろんです。今回の取り付け費用も無料でかまいません。ありがとうございます。
申し訳ありませんが、会社に連絡しないといけませんので、いったん席を外させてもらいますけどよろしいでしょうか?」
「ええ、大丈夫ですよ。」
このあと確認を含めて少し辺りを走ってみる。スレインさん達も同乗したんだが、音がかなり静かなことに驚いていた。特に問題ないのでこれで引き取りすることにした。
スレインさん達が乗っている車は他のお店で買っていたんだが、少し調子が悪いみたいでそろそろ買い換えと言われているらしい。せっかくなのでクーロンさんに見てもらったんだが、車軸の一部がちょっとゆがみ始めているだけみたいで、修理すればそんなにかからず治るらしい。他のお店では修理代がかなりかかるので買い換えを勧められていたみたいでちょっと怒っていた。
そのまま修理をしてもらうかと思ったが、今回の新しい車に興味があるみたいで、クーロンさんに価格の見積もりをお願いしていた。
先ほどの車のオプションのことがあるのでもう少し待ってほしいと言われたのでスレインさん達と一緒に近くのお店に昼食を取りに行く。お昼はパスタのお店でゆっくりと食事をとる。
ちなみに車で移動をしている場合、単独の車の場合は高レベルの冒険者が乗っていると判断されるため、盗賊に襲われることはほとんどないようだ。ただ注意はしていた方がいいと助言を受ける。
スレインさん達と別れてからお店に戻ると、契約書を作成したので署名してほしいと言われた。内容を見ると、車のアイデアに関しての研究や取り付けにかかる費用はすべて無償で行うこと、対価が必要となった場合は別途取り決めを行うことが明記されていた。ほんとにいいのか?と思いながらもジェンにも確認してもらい、こちらに不利な内容はないことを見てからサインを行う。
車が手に入ったのでせっかくだから近くにドライブへ行くことにした。交代で運転をしながら町の近郊を走る。途中で重量軽減魔法をかけるとペースが上がったのでやはり効果がありそうだ。音楽もいい感じに聴くことができるし、何より速い。
確認のため収納バッグに収納してみると特に問題なく収納できた。これで駐車場を借りる必要もないな。
せっかく外に出たので眺めのいい高台でお湯を沸かしてから収納バッグに入っていた料理でちょっと早めの食事にした。
「こうやって気軽に外に出られるというのもいいね。もちろん最低限の実力が無いと危ないけど。」
「確かにそうね。ピクニックという風習はあるけど、護衛付きというのが当たり前だものね。」
「これで車も手に入ったから町の移動がだいぶん楽になるよ。」
「そうね。たまにはこうやって外に出て食事というのもいいかもしれないね。」
まったりとくつろいだ後、暗くなる前に町に戻る。宿に戻ってからお風呂に入ってさっぱりして眠りにつく。
~クーロンSide~
今日はジュンイチさん達の車の引き渡しの日だ。昨日納車されたので間違いがないようにいろいろと確認をしておいた。ジュンイチさんに言われていた音楽の装置やミラーの設置などは問題ない。
お店を開店すると、珍しくすぐに来客があった。たしか蠍の尾というパーティーの人たちだったと思う。美人の4人組の有名なパーティーだ。ただ車は他のお店で購入していたと思うんだが、なにかあったのかな?
すぐに先輩が声をかけに行ったんだが、なぜか断られている。たんに知り合いが車を買うというので来ただけと言っているようだ。そう思っているとジュンイチさん達がやってきたんだが、蠍の尾のメンバーがすぐに彼らのところに行っていた。ジュンイチさんって彼女たちの知り合いだったのか?
今回車のメーカーからエラードさんという結構偉い方がやってきていた。一通りの説明の後、ミラーなどのことについてアイデアを使いたいと申し出ていた。すると、あっさりと許可してもらい、しかも見返りも必要ないと言われ驚いてしまった。
結局、車のアイデアに関しての研究や取り付けにかかる費用はすべて無償で行うこと、対価が必要となった場合は別途取り決めを行うことなど書かれた契約を行うことになったようだ。
店長は自動車メーカーから今後融通できるようにしてくれるという話だったのでかなり喜んでいた。
蠍の尾のメンバーのスレインさんという人から「今の車を買い換えるように言われているんだが、見てくれないか」と言われて点検してみた。単に車軸がゆがみ始めているだけのようなので数万ドールで修理ができそうな感じたった。
他のお店では買い換えた方が安いと言われていたらしくかなり怒っていた。ただ今回の新しい車に興味があったみたいで、見積もりを依頼された。ほんとに?今度からこっちに修理とかも持ってくると言われたのでとてもありがたい。
お見送りをした後、店長から臨時ボーナスをもらうことができた。どうもカサス商会の支店長からお礼の手紙をもらったらしい。いい店と店員を紹介してもらってとても助かったと書かれていたようだ。頑張った甲斐があった。
そのあとスレインさん達も車を購入してくれることになったんだが、一緒にクリストフ殿下がやってきたのには驚いた。噂では聞いていたが本当にパーティーを組んでいたんだな。しかもジュンイチさんのことも話していたんだけどどういう関係なんだろう。俺にも運が向いてきたのかな。
~あとがき~
ふと気がつくと100話目となっていました。メインの話に番号を振っているのでまだと思っていました。
書き始めの頃は100話くらいすぐ行くんじゃない?と思っていましたが、思った以上に大変なものと改めて思いました。文字数で35万くらいなので1話あたり3500文字くらいですけどね。
連載的には続きが気になるところで次の話にいった方がいいのかもしれませんが、まあ好きで書いている話でそこまでするまでもないし、その技術もないので諦めています。
最後までかけるように頑張っていきたいと思います。
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