第12話:アップデートのその先へ


 ビスマルクと接触してきたファンを名乗る人物、それが誰なのかは分からなかった。そこで語られた真相WEBの正体、それは想定外と言ってもいい物である。


 それが今の段階で明らかになっても――ニューリズムゲームプロジェクトには何の得もないだろう。


 結局は特定の勢力が炎上のネタとして持ち出し、SNS炎上と言う形でコンテンツの価値を落とし、その後にオワコン化すれば彼らにとっては勝利と言えるかもしれない。


『SNS炎上は核戦争と同義――廃絶しなくてはならない、か』


 思う事はありつつも、ビスマルクはオケアノスへと向かう事にする。ニューリズムゲームプロジェクト、その正体を探る為に。



 ビスマルクとは別口で、第三者と思わしき通話を受け取っていた人物がいた。


 その人物は、ユキムラである。何時もであればオケアノスへと向かうはずなのに、どうしてコンビニで立ち止まっているのか?


 スマホに表示されている通話アプリの人物名表示は『非表示』としてアイコン等も出てこない。本当に匿名の人物なのか?


「まさか、あのタイミングでSNS勢力にフェイクを流されるとは」


 彼女の言うフェイクとは、ユキムラの正体に関するニュースである。アキバガーディアンの元メンバーや炎上勢力のサイト管理人、挙句の果てにはある人物を追いこんだつぶやきユーザー等――。


 これらは全て出たらめである。何故、このようなニュースが拡散したのか?


「分かっているわ。それらが全てカバーストーリーの拡散である事は」


 コンビニの中には客の姿もあるのだが、ユキムラのいる外には集まるような気配がない。


 彼女を避けている訳ではないと思う一方で、コンビニ内で何かあるのだろうか?


「それはそうと、あのゲームを丸パクリしようとしたメーカーは撤退する事になったらしいわ」


「さすがにヴァーチャルレインボーファンタジーを、ほぼそのままにキャラを差し替えただけのゲームを出せる根性があるメーカーがあったなんて」


「――それも全て、そちらが流した情報が影響しているのでしょ?」


 ユキムラは時々めがねがずれるのを直しつつ、スマホで通話を続ける。通話の振りではなく、間違いなく通話はしているのだが――。


「SNSを炎上する勢力、彼らは文字通りの害悪よ。コンテンツを炎上させ、それこそ核兵器を使うような――」


「アーシックというか――あいね=シルフィードの言っていた事は、間違っていなかった。表現は過激というか、相当だけど」


 ユキムラ自身もSNS炎上勢力は憎んでいる。あいね=シルフィードの件では見ているしかできないほどに、炎上のレベルは広がったのだ。


「とにかく、こちらの正体は誰も気づいていない。一番知られてはまずいような、舞風まいかぜにも――」


「他のゲーマーにはカバーストーリーは流れていると思うけど、これを知ったら周囲は驚くでしょうね」


 相手の方はユキムラの話す事を理解している様子だが、彼女の発言も謎が多い一方で――。


「とにかく、ゲームのアップデートが行われるのは確実でしょう。これで不正プレイヤーが減るかどうかは別の話としても」


「とりあえず、ツバキとシュテン・ドウジは引き続き警戒する方向で」


 そろそろ話を切り上げてオケアノスへと向かおうとするユキムラだったが、向こうの方は何かメッセージを伝えてきたようでもある。どうやら、アップデート後の動向や作戦らしいが――。


「あなたが、こちらに来たら大騒ぎになるでしょう。実際、プロゲーマーのライセンスを持っているのだから」


我侭姫デンドロビウム、ガーディアンとは別の――不正破壊者チートブレイカー


 そして、ユキムラは通話を切る。何故に彼女が自分の電話番号を知っていたのかは簡単だ。ユキムラも彼女と接触し、情報を交換し合っていたからである。


 全てはSNS炎上勢力の動向を、アカシック・レコード経由で知りつくし、炎上勢力をアカシックレコード上からも廃絶する為に。

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