6-3
「何だ、このまとめサイトは?」
あのプロデューサーが発見したサイト、それこそがアーシック・レコードの管理するまとめサイトだった。
その内容は単純に大手ニュースサイトが取り上げるような物は取り上げない。重箱の隅をつつくようなニュースしか扱っていなかった。
だからこそ、プロデューサーは驚いている。アーシックが『ヴァーチャルレインボーファンタジー』の事件を取り上げる事に。
「ある人物が生み出した二次創作としての物語――確かに、破たんしていない意見としては一理ある」
サイトに書かれていた一連の事件の裏、それは特定人物が生み出した二次創作――それが事件の真相である、と。
大抵のまとめサイトでは『特定メーカーの印象操作』や『一部コンテンツを潰そうとする広告会社の戦略』や『超有名アイドル事務所のゴリ押し戦略』がほとんどだ。
これらのまとめサイトが取り上げているのはSNS炎上勢力、バズり目的のユーザーが拡散するカバーストーリーに過ぎない。
(どちらにしても、この話が事実とすれば――)
上層部へ知らせると言うのも考えたが、おそらくはもみ消されるとプロデューサーは思った。
自社が関与しない話に興味を示すかも問題だが、それ以上に『ヴァーチャルレインボーファンタジー』の件は、彼らにとって――。
(ならば、知らせる場所は別にあるか――)
現在いる場所は草加市のオケアノス近辺、それならば伝えて信用するであろう存在はいくらでもいる。
オケアノスの企業エリアビルをみつめるプロデューサーには、彼らに託すしか方法がないと思っていた。
シュテン・ドウジを初めとしたプロゲーマーが本格進出―-とサイトが取り上げ、更に盛り上がりを見せるニューリズムゲームプロジェクト。
しかし、本当にこの盛り上がり方は理想としていた物なのか? 次第に疑問を持つ者が増えた結果、想定通りの事件が起こった。
それは――特定まとめサイトによる炎上である。その内容はシンプルだからこそ拡散レベルは桁違いな物だった。
【あの芸能事務所がコラボするのか?】
【やっぱりな。ここにきてテコ入れするにしても――】
【あの広告会社絡みだったのか】
他にも同じようなつぶやきばかりが拡散する。だからこそ、効果は桁違いなのだ。
つぶやいているのが自作自演なのか、それとも陰謀なのか――そうした事も下調べせずにマスコミが騒ぎだせば、彼らにとって都合がいいのだろう。
(そうくるか。ならば、こちらも動く時か)
オケアノスのビルを見つめる別の人物、この人物が立っている場所は明らかに草加駅近くのショッピングモールだが、オケアノスとは別ビルだ。
オケアノスとは別のビルでコスプレイヤーを見かける事自体、珍しい事ではないが――この人物だけは特別らしく、写真をスマホで撮ろうとするユーザーが集まりだしている。
外見は明らかに西洋風の女戦士、SNS上で噂になっているブローディアと類似していたのも理由か?
「いない? さっきまでいたと思ったのに」
その人物をスマホで撮ろうとした時には、姿がなかった。いわゆるヴァーチャルアバターの部類ではないと思ったのに――既にいないのである。
「いわゆる盗撮防止ジャミングが出ていれば、撮影段階でエラーメッセージが出るはず」
その時間、わずか一分にも満たない。スマホを構えた時には既にいなかったのだ。
どうやって姿を消したのか、そのからくりさえも見破らせないレベルで、まるで手品と言わざるを得ないだろう。
盗撮防止のジャミングが出ている場所はあるにはあるのだが、ここではそう言ったジャミングもないのに――。
「一体、どこに消えたのか――」
ARバイザーの部類でないと確認出来ない事例もあるにはある。一連の『ヴァーチャルレインボーファンタジー』では、そうしたアバターがいた事が話題となっていた。
現在は一部で同類ケースを見かけるのだが、それらは試験段階である事が多い。
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