ニューリズムゲームエピソード

６－２

　アーシック・レコードの懸念している事、それはまとめサイトの再起動である。その一方で、アーシックと接触したまとめサイトが――次々とＳＮＳ炎上の為に動き出していた。

　明らかにまとめサイトの動きを懸念しているのに、裏ではまとめサイトと接触して何かをしているのは矛盾と言えるだろう。

　そうした動きを察したユーザーは、アーシックを名指しで炎上のきっかけを作っていると指摘する。

　しかし、それでも些細なコメントにアーシックは容易に反応しない。特に感情を表に出すのは危険だと分かっているからだ。

　サイトに送られた悪意あるコメントに対しても、コメントで上手くかわしているのは、ある意味で鋼メンタルまで到達した事の証明か。

　逆に、アーシックのサイトへコメントした人物の方が炎上しているのは信者による工作等ではない。単純に、悪意をむき出しにしているのはコメントを書き込んで仕掛けた側だ。

【アーシックを相手にすれば、自滅するのが分からないのか？】

【あれだけ閲覧者の多いサイトを相手にすれば、自然とそうなる。いわゆる炎上勢力のまとめサイトではないからな】

【しかし、あれだけのサイトなのに謎が多い。企業系まとめサイト等ではないのに】

【それもそうだな。設立が七月の末日と聞く。まだ数週間のサイトだな】

【数週間で数百万アクセスとあり得るのか？】

【問題はそこだよ。アーシックと言う人物、何者だ？　芸能人なのか？】

【芸能人サイトで、ああいう話題を取り上げるか？　むしろ、バズり狙いと炎上するのが関の山だ】

　様々なユーザーが一連の炎上騒ぎを見てつぶやくのだが、これも一種のカバーストーリーと疑う層もいるのは事実だ。

　何をもって真実とするか、ＳＮＳ世代は改めて知る必要があるのかもしれない。それが原因で起きた事件は数知れないから。

　ニューリズムゲームプロジェクト、そのロケテスト自体は何と『ヴァーチャルレインボーファンタジー』の時に行われていた。

　様々な関係上、ロケテストで知名度を上げる事にも失敗している。他にも様々な噂もあるが、それもカバーストーリーと運営側は否定していた。

【ヴァーチャルレインボーファンタジーの炎上騒動は、他のライバル会社の陰謀】

【人気作品を炎上させ、不人気作品を再評価させようと言う悪質な宣伝。ステマと表現する事すら拒否するレベル】

【しかし、それ程にＶＲファンタジーが人気だったか疑問。だからこそ、マイナー作品を炎上させて誘導もあり得るだろう】

　こうした根も葉もないような噂等で炎上、作品自体が開発中止に追い込まれたものもある中で、ニューリズムゲームプロジェクトはそうした噂を否定し続けた。

　実際、こうした炎上を行うのは大抵が『ＳＮＳ上でバズりたい』や『英雄願望』と言う様な者が多い。

　そうしたＳＮＳ上の誹謗中傷や営業妨害とも言える攻撃を回避し続けた結果、何とかニューリズムゲームプロジェクトは始動出来たのだ。

　このケースはアーシックの件とも類似していた。そのまとめ記事でも丁度――。アーシックのＳＮＳ上のやりとりがピックアップされたのは、このメーカーの対応が有名だったのもあるのかもしれない。

　それ以上に、アーシックのやりとりがピックアップされる形になったのは、ある発言が似ていたからと言われている。

『我々が作っているのは純粋なプレイヤーの楽しめるゲームであり、ＷＥＢ小説のデスゲームではない』

　ゲームの内容がデスゲームと連想させるものと思わせてイメージダウンを狙おうとした野望は、これによって砕け散った。

　しかし、アーシックが放ったコメントは別の意味でも比較に出来なかったのである。

【君たちはＳＮＳ炎上で、どれほどの被害が出ると思っているのか？　現実で言う核兵器にも匹敵する】

【核兵器がどれほどの物かは語るまでもないだろうが、それ程の破壊力をＳＮＳ炎上が持っている上に、事後処理も困難を極める】

【いっそのこと、今の時代だからこそＳＮＳと言う存在を全て廃止し、手紙による文通等の時代に戻すべきだろうな】

　これがどれほどのレベルで皮肉を言っているのかは不明だが、炎上させようとした勢力をあっという間に黙らせた。

　ＳＮＳ炎上を核兵器に例えるなんて、それこそ過激派のような発言にも聞こえるだろう。しかし、そのイメージを抱かせないのがアーシックだ。

　ご都合主義と笑いたければ笑え――と思っているかは定かではないが、これをきっかけに炎上勢力は再編されていく。