5-5

 草加市の公認プロゲーマーになる為には――帰宅したシュテン・ドウジはノートパソコンで検索を行う。


 条件に関して要点だけを纏めると、プロゲーマーから昇格したりする部類ではないらしい。


(まさか、こういう仕組みとは)


 条件に関しては色々と書かれているが――地域貢献の有無で決まるようだ。どういう風に貢献するべきなのかは、まさか――と思っていた条件が入っている。


 その条件を達成するのは容易だろうが、SNS上では様々な議論が繰り返されている条件でもあった。


【草加市内でゲーマーとして優秀であると同時に、チートや不正と言った部類に手を出さない事】


 一文で書かれると真っ当な事を言っているようにも見えるのだが、これを細かくすると更に複雑なものになるらしい。


 優秀と言う部分だけでも、プレイヤーの腕だけではなく、SNS上における発言や態度等も含まれるのがポイントだろう。


(チートや不正は分かる。プロゲーマーでもタブーと言われている部類だから)


 不正行為の有無が条件に入っているのには、イースポーツの環境的な事情もある。


 しかし、どうしても地域貢献の有無が引っかかっていた。これはどういう事なのか?


(寄付とかボランティア活動みたいな物が連想されそうだけど、具体例がないのも引っかかるかな)


 この辺りも不正対策の為なのか、具体的に地域貢献事例は記載がない。SNS上には公園の清掃のようなゲームと関係なさそうな者もあったり、ゲームでもあるあるなマナー講座も事例にある。


(公園の清掃って言われても――?)


 シュテンは、ふと思い出す。草加市に設置されているARゲームの端末、それは公園などのようなゲームと無縁な場所にもあった。


 公園だと他のゲームで迷惑行為が横行して炎上――と言う事例もあるが、どういう事なのか?



 様々なゲーマーのプレイ動画をチェックしていたのは、こちらも自宅で作業をしている雪華せつかツバキだった。別のコスプレ写真を取っていた関係上か、よくあるメイド服姿なのだが――。


(他のタイプと言われても――)


 ニューリズムゲームプロジェクトでは、どのアーマーを使うかで難易度が変わる楽曲もある。


 ヘルプで有利楽曲を探してくれる機能もあるのだが、そこまでして選ぶ楽曲を制限するのも違うかもしれない。


 リズムゲームは、あくまでも楽曲の演奏を楽しむという要素が大きいのも理由の一つだ。


「どれを使っても、問題ないようにも見えるけど」


 ツバキが初見で見た限りでは、どのプレイヤーもアーマーの特徴を生かせていない者が多かった。


 何故にこう言う状況が起きているのかと言うと、他のリズムゲームで類似した作風の物では特にアーマーカスタマイズが重要ではない。


 あちらの場合はコスチュームチェンジと似たような物であり、スキルやアビリティ要素がある訳ではなかった。


(動きがどれも一緒に見える)


 ピックアップして動画を見ている訳ではなく、人気の動画をいくつか見ているのだが――どういう事だろう。


 プレイしている楽曲は、どれも難易度が7~8と言ったような上級者向けと言うのも理由かもしれない。


 高い難易度になると攻略パターンも絞られてくるのか? 実際は、どれも攻略サイトの情報をなぞっているに過ぎないだろう。


(やっぱり、ゲームのシステムが理解できていない?)


 そう言った事もあってか、ツバキはアクション面で物足りないと感じているのかも――と。


 リズムゲーム自体、タイミング良く演奏するというパターンが多い為か、システムは対戦格闘よりも単純になっているケースもあるのに――。


(それとも、他のアーマーではアクション要素が簡易化しているのかな)


 それでも様々な部分から動画を見続けるのだが、七本目を見終わった辺りで他の動画をピンポイントで探す事にした。そして、ある動画を発見した事でツバキの反応は変化する。


(プロゲーマーのプレイ? タグに付いているだけで、誰なのかは分からないけど)


 プロゲーマーのプレイ動画との事だが、名前を見てもさっぱりなのでそこは気にしない。


 実際に披露されたアクションは、他の上級者プレイよりも演奏と言う個所ではミスが目立つ。


 それでもツバキはこのゲームのアクションとしては、これが普通と思う。実際、試行錯誤してアクションを探す要素もあるはずだから。


 そして、この動画が実はシュテン・ドウジの物である事は、この段階では気付いていない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る