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有名プロゲーマーの知名度は、この草加市では関係なかった。草加市では公認プロゲーマーと言う物が存在する。
いくら知名度の高い超有名なプロであっても草加市内では普通のプロゲーマーに過ぎない。
自称プロゲーマーでも草加市に認められなければ、自称でしかないのでマイナーゲーマーと変わりはないだろう。では、草加市公認になるとどうなるのか? 公認プロゲーマーになると草加市でのイベントで優遇を受ける。
さすがに大会でシード権を得られたりはしないが、草加市でも指差しされるような事はなくなるだろう。
過去に様々な事情でゲーマーと言う存在がネガティブな意味でとられる様な事があった為、こうした対応になったのかもしれない。
(プロゲーマーでも騒がれる事はないと思うが――)
シュテン・ドウジはプロゲーマーライセンスを持つ正真正銘のプロゲーマーなのだが、草加市ではあまり騒がれない。
こうした事情があると踏まえれば下手に騒いで炎上――と言うのを防ぐ為のプロゲーマー制度と言えなくもないが、ソレとは違う気配もする。
(相手には感謝をするべきなのか、それとも――)
シュテンは初プレイと言う割に相手が指定した高レベル譜面を難なくクリアしていく。その視点は、ハンドコンピュータに向いていた。
ハンドコンピュータの液晶画面には、確かに譜面のノートが流れている。ノートがパネルに合わさったタイミングでタッチすれば、判定も出てくる仕組みだ。では、彼女が正面を見ないのは何故だろう。自分が立っている場所の周囲にはラインが引かれており、このエリアの外には出ないように警告が表示される。
(どちらのプレイでも問題がなければ、こちらの方が慣れている)
正面のモニターには、アバター視点の譜面が見えていた。他ゲームで例えると、レースゲーム系のコース視点と似たような物と言えるかもしれない。
そちらを見向きもせずにプレイするシュテンのスタイルも問題はないだろう。リズムゲームによっては手元がずれるだけで致命傷なゲームもある。
手元を見るだけでも譜面の把握が可能であれば、そちらの方が見やすいという考え方も間違いではないだろう。
コース上の譜面もハンドコンピュータに表示される譜面も、結局は同じ物が流れているのだ。それを踏まえると、自分が有利な方でやった方がよいのは言うまでもない。
ギャラリーの反応は一目瞭然とも言えるだろうか。確かに人は集まったのだが、反応はさまざまである。
プロゲーマーのプレイと聞いて、ここまで地味なプレイになるとは予想外だったという意見もあった。
シュテンとしては初プレイだったのを差し引いても、散々な反応かもしれない。さすがに公認プロゲーマーのプレイだったら、このようなプレイだと圧倒的にブーイングも飛び出しかねないだろう。
しかし、ギャラリーがそこまでの反応をしないのには理由がある。以前に起きた『ヴァーチャルレインボーファンタジー』の一件が絡んでくるからだ。
あの事件はSNS上の炎上勢力を減らす事にも貢献し、更に言えばゲーマーとプレイヤーのモラル低下等も浮き彫りにした。
こうした課題も影響してか、注目を浴びたのが草加市の公認プロゲーマーライセンスだったのである。
公認プロゲーマーによる啓発活動等によって、草加市は間違いなく他の都道府県よりはゲームに対する風当たりが変化していた。
特定の条例を目の敵にしてSNS炎上をさせるよりは、様々な地元貢献活動等でフォローしていくと言うべきか。
(反応は――これが草加市特有と言うべきなのかな)
シュテンは色々と複雑な表情を浮かべつつも、順番があるので次のプレイヤーへと席を譲る。
こうした些細なことでも、SNSでは炎上させてバズろうとする――それを浮き彫りにして様々な問題を表に出したVRファンタジーを評価する声はあるだろう。
しかし、素直に喜べない状況だったのは、自分達が悪だとレッテルを貼られた、一部のまとめサイト勢力だろうか。
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