3-5

 ハイスピードになれば、普通は速度変化に対応しきれないのが音ゲーマーあるあるでもあった。ソフランと言う単語も、そうした流れで生まれたワードなのである。それでも、彼女はお構いなしだ。


「なんだ、あの動きは?」


「アバター操作と言う意味では間違っていないが――」


「相手と比べると、どうしても素人丸出しな動きにも見えなくもない」


 周囲の反応は様々だが、ハイスピードのアクションを使用しているのに動作の方は若干のアレさ加減がある。


 しかし、アクションが少し微妙に見えたのは、アクション発動時のわずか数秒のみ。それ以降は上手く立ち回った様子だ。


(あのスキルを容易にー―?)


 この様子に慌てていたのは、ギャラリー以上にフウマの方だったかもしれない。その後、アクションを難なく披露した彼女を見て動揺したフウマは思わぬニアミスを披露し、気が付けば――。



「こう言う結果になったのね。分析をしたとしても、勝負がそれだけで決まるとは限らない、と」


 リザルトを見て、苦笑いをしていたのはシュテン・ドウジだった。彼女は明らかにフウマに勝利した人物を、周囲の反応とは逆に高く評価しているようにも見える。


「ジャイアントキリングじゃないのか?」


「これで順位が変動するのか?」


「そこまでリアルタイムには変わらないだろう。速報ベースだと不明だが」


「どちらにしても大きな波乱があるかもしれない」


 周囲のギャラリーもこのプレイ結果は予想外で、新たなゲーマーの出現では――と考えている。しかし、それでも彼女が上位に入る実力かどうかは疑問があったのだろう。


「あの位のマグレで――」


「そうだな。フウマの方がディフェンスタイプのデータを集めきれてなかったかもしれない」


「確かにディフェンスタイプは使用人口が少ない。あれだけで決めるのは酷だな」


 逆にディフェンスタイプを使う有名プレイヤーがいないのも、こうした反応になっている原因かもしれない。


 リザルトの方を見ることなく、フウマの方は先に出てきた様子。1回の対戦でゲームオーバーと言う事のようだ。設定が違えば、もう1回位はマッチングがあったのかもしれないが――。



 フウマが出てきてから数分後、雪華せつかツバキも筺体から出てきた。彼女の方はフウマと違い、表情から何かを読み取るのは困難だろう。


(今のが、リズムゲーム――)


 プレイ後の反応は、極度の緊張から解放されたような――風に見えたらしい。あくまでもギャラリーの反応なので、個人差はあるかもしれないが。


(とにかく、あのゲームを楽しいと感じられた。それは大きいかな)


 ツバキは様々なリズムゲームをプレイしてきた訳ではない。あくまでも、今回が初と言えるだろう。これから、このゲームをプレイし続けるかどうかは決めていないが――時間が合えばプレイはするかもしれない。


「とりあえず初プレイとしては、これくらいかな。後は、もう少し様子を見てから――」


 ツバキはいくつかのゲームも空いている状態だったのだが、ソレに足を止めることなく他のゲーム筺体を見て回る。


 初プレイから二十分経過した辺りで戻って来てからは、再びプレイした様子。やはり、使用したのはディフェンスタイプらしい。

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