第4話:SNSの光と闇

 雪華せつかツバキのメインフィールドはゲームではない。本来であればコスプレイヤーである。何時ものように、彼女は自宅で撮影のセッティングを行い、写真を撮るコスプレに関して悩んでいた。


 自宅の広さ的に個人撮影は何とかなるが、二人組で撮影しようとすると大変だろう。ツバキは個人撮影専門なので、そこまでは考慮しない。過去に外出自粛等の情勢もあってか、彼女は外で撮影するよりも家でコスプレをするコスプレイヤーとして活躍していた。


 その彼女も、昨日プレイしたリズムゲームが若干気になっている様子。コスプレの準備をしている最中なのに、である。


(今日は撮影よりも、こちらを優先しようかな)


 撮影と言っても彼女が使うのはデジタルカメラやスマホのカメラ等ではない。テーブルに置かれていたのはノートパソコンと、ARゲームで使用するARガジェットと呼ばれる物だった。


 ARガジェットの機能は様々あり、SNS上にアップするアバターの制作等も行える。いわゆるかゆい所に手が届くガジェットだった。そこまでの機能を持っていれば、様々な犯罪行為に悪用されるかの末いも否定できない。


「これが噂の――」


 朝のテレビのニュースでも触れられていたのだが、草加市内で不審人物の目撃事例があった。その人物の外見情報はなく、それこそ週刊誌やまとめサイト等の捏造とも考えている。


 ヴァーチャルレインボーファンタジーを巡る事件では、SNS上での加熱しすぎたキャラ批判等が原因となり、登場人物が実体化した――というまとめがある程だ。


 自分もコスプレ画像をSNSでアップする以上、悪用されないような対策は万全にしてある。その上でアップするのだが、それでも一部で改ざん画像は散見されている現実があった。


(真実はどうであれ、明らかに視聴率等の面で都合よく書きかえるような勢力は――)


 ツバキは別のWEB小説で気になるメッセージがあった。それを踏まえて、このように繰り返されるSNS炎上商法に警鐘を鳴らしている。


「まずは様子を見て、それからか」


 都市伝説の人物の名前はブローディア、それが何の作品の人物なのかは定かではない。もしかすると、WEB小説の人物なのかもしれないが――今の彼女にそれを判別できる程の情報はなかった。



 それとは別のSNS上、都市伝説となっているブローディアに関しての考察がアップされていた。


【あの人物は明らかに何かの事件と関係している】


【記憶に新しいヴァーチャルレインボーファンタジー、あの一件でマルスが何を行った?】


【他の人物によって都合よく設定を書きかえられ、ある時には最強キャラとして無双した事もあった】


【それこそ、SNS上で炎上の題材に悪用された事もあるだろう。他の作品にも同じような事が言える】


【二次創作タイプのメアリー・スー、そのテンプレとしてマルスは炎上していた】


【その二次創作の不特定多数の投稿者に対して復讐しようとしたのが、あの事件ではないのか?】


【ブローディアの件は、それを繰り返そうとする物へ対しての警告だ。不特定多数の誹謗中傷、炎上行為、批判合戦――】


【今こそ改めて問うべきではないのか? コンテンツ市場を変える為に――漫画やアニメ、ゲーム作品を使ったSNSマナーやモラルについての学習する事を】


 本当にその文章が真実を語っていたのかは定かではない。しかし、これを見る人物によっては怪文章に思えるだろう。


 それでも、この人物が訴えようとしている物――それはヴァーチャルレインボーファンタジーの事件を知っていなければ、語れない要素もある。


 果たして、この文章を発信したのは誰なのか? サイトを少しチラ見していたツバキでも深くは考えていない。


 今のツバキにとって、ブローディアの件は他人事なのだ。今はあのリズムゲームの事を調べるのが先と言える。ため息をつきながら、ツバキはノートパソコンのブラウザで別のサイトを検索し始め、そこであのリズムゲームの事を知った。

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