2-5

 先攻の結果は、既に見えていたと言える。フウマの惨敗だ。敗因は言うまでもなく、楽曲のむずかしさ――と言う訳でもない。


 既にSNS上では感想戦と言わんばかりの展開となっていた。まだ、勝負は終わっていないのに。


【あの曲は攻略ウィキでも難易度が高いと言われていた。やはり、引き運か?】


【それはちがうな。両者ともに演奏失敗はしていない。負けたのはスコアだろうな】


【アクロバットアクションをすればスコアが上がる訳ではない。リズムゲームでスコアを上げるコツは、正確さだ】


【正確さと言えば、向こうも多少のミスはあったはずだ。演奏の正確さは五分五分だろう】


【五分五分? 後半のプレイを見れば、向こうの方が実力者なのは明らかだ】


【レベル1の皮を被ったプロゲーマーと言う可能性だってある。あのゲームは新規カードなどではレベル1スタートだと聞く】


【どちらにしても、まだゲームは終わっていない。感想戦もいいが、後半戦を見てからでも遅くはないだろう】


 最後のコメントを書いた人物の言う事も一理ある。フウマが惨敗なのかどうかは、まだ早い。全ては後半戦の結果を見てからでも遅くはないだろう――それでも、フウマが逆転するには苦難の道なのは言うまでもないが。



 スコア的には五分五分なのだが、フウマは若干の焦りを見せている。楽曲がレベル6だったのも原因だが――。


「甘く見ていたか。しかし、まだ逆転のチャンスは残っている」


 スコアとしては大差はなく、数万点位の差に過ぎない。それでも彼が焦る理由は他にある。


 それはコンボ数にあった。レベル1の相手は前半では途切れる事が多く、スコアでもコンボボーナスを逃しているのが、その証拠だろう。


 最後まで相手はあきらめずに後半で立て直した。それがフウマとのスコアが数万点差という事を物語る。


 スコアで勝っているのはこちらと言ってもいいのに、コンボ数は向こうの方が圧倒的に有利だろう。


「次の楽曲は古コンボを出せれば、後半ボーナスなどを踏まえてそのまま勝てるはず――」


 フウマは勝てるようなゲームしかプレイしないのではない。分析を行い、その上で勝てる要素のあるゲームをプレイするタイプなのだ。


 その証拠に、彼は様々な攻略ウィキを見て回って、プレイした上で――現在のレベルにまで到達している。



 一方のレベル1プレイヤー、雪華せつかツバキの表情は変わらない。若干の汗が見えるのだが、それでも疲れは顔に見せる事がなかった。スコアの方も後半で取り返せばいいと言う事で、落ち込む様子がないのも――。


「リズムゲームって言うから、もう少し厳しい判定とかあると思っていたけど――」


 ディフェンスタイプを使用している為もあるが、レベル6と言う難易度の割にコンボが繋がった事には驚いている様子。


 楽曲を楽しむ余裕はなかった一方で、ゲームをプレイしていて楽しいとは感じていた。彼女にとって、ゲームは楽しめないといけない。例え、苦手なホラーゲームで楽しめる壺を抑えれば――問題はないタイプだ。


(次の楽曲は、レベル3? さっきの半分――かな)


 ツバキはゲーム画面の楽曲情報を見て、さっきよりは簡単な楽曲――と思っている。


 しかし、リズムゲームの場合は楽曲レベルの割に難しいという詐称と呼ばれる譜面も存在するのだ。


 油断はせずにプレイすれば何とかなる――そう考えて、ハンドコンピュータのインフォメーションを確認する。


【準備完了次第、ゲームを開始します】


 はい、いいえのボタンが表示されているが、彼女は迷いなく【はい】のボタンをタッチした。フウマも【はい】を押して、ステージフィールドが展開されるのだが――フウマの手は若干震えているような感じだった。

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