2-3
リズムゲーム、それは音楽を演奏するゲームである。平成の時代に誕生し、様々な機種が存在していた。
今も太鼓、ギター、ドラム、ピアノと言った楽器を演奏するようなイメージで作られた物もあれば、全く別のリズムゲームアプリもある。このリズムゲームは確かに楽曲を演奏する要素は――確かにあるだろう。しかし、様々な代表事例を持つゲームとは違う部分があった。
確かにコースには何やらパネルのような物があり、それをタッチする事で演奏する要素はある。
(なるほど。確かにリズムゲームの要素はあるようだ。それを理解しないと、ただのアクションゲームに見えるが)
ゲームのプレイしている様子を見ていたプロデューサーは、アバターの走る光景を見てアクションゲームと勘違いするだろう、と察した。
他のギャラリーは、そこまで考えずに見ている可能性もある。ゲームをプレイするかどうかは、やはり技術力の高いゲーマーのスキルが必須のだろう。
「しかし、他のプロゲーマーの姿は――」
プロデューサーはプロゲーマーのハンティングをする訳ではないのだが、周囲に見覚えのあるゲーマーがいないか見回す。
さすがにテレビに出ている有名所はいないだろう。しかし、SNS上で有名なゲーマーはいるかもしれない。
そこまで望みをつなぐのには、ゲームメーカーの宣伝という別事情も――隠れている。
(プロデューサーが、ここまで来ているのか――)
若干巨乳な長身女性が、プロデューサーの方を少し遠くから見ていた。彼女もゲームの方が気になっているので、そこへと近づくのだが――途中で別のギャラリーに気付かれる。
「シュテン・ドウジ? あのプロゲーマーの!?」
「プロゲーマー? このゲーム、プロも注目していたのか」
周囲のギャラリーが若干騒ぎ出し、これは出るタイミングを間違えたとシュテン・ドウジは思う。今の話を聞いたプロデューサーも振り向くと思ったが、あちらはさすがにゲームの方に集中しているようだ。
外の騒ぎで集中力が途切れそうになるのは、ゲーセンに設置されているゲームではよくある事。
リズムゲームではそうした集中力の途切れは致命傷と言える物だ。その為、ヘッドフォンを持参して使用するゲーマーも多い。
そうした需要もある為か、リズムゲームではイヤホンジャックが標準装備な機種が出ているのも多い。このゲームの場合はプレイ時に装着されるメットがヘッドフォンの役目ももっていた。
それもあって、フウマの耳にはゲーム内の爆音しか聞こえていない。さすがに周囲の音が拾える程度にはボリュームを調整しているが、あの程度のギャラリーの騒ぎでは聞こえないのだろう。
緊急事態の際にはゲームの音声がフェードアウトするように、ボリュームが小さくなっていく仕様のようである。
(向こうの方は何か騒がしいようだが、こっちはそれどころじゃ――)
コースを走るアバターを目でとらえつつも、右腕に装着したハンドコンピュータでアバターを的確に操作していく。相手の選んだ楽曲がレベル6に加え、自分が未プレイの楽曲と言うのも若干致命的である。
あのイントロで気付くべき――プレイ中にスタートのタイミングをミスした事を、フウマは未だに引っ張っていた。
一方の
ツバキはハンドコンピュータには視線を合わせず、正面に見えるゲーム画面を注視している。
ある意味でもブラインドタッチの要領で、彼女はアバターを動かしていた。ディフェンスタイプの動きも速くない事もあり、それが可能なのかもしれないが。
ゲームをプレイ中、手に握っているコントローラを気にする事は――あるかもしれないだろう。
しかし、リズムゲームでは一瞬のミスが演奏失敗に結び付く位には、シビアな物もある。
正確な演奏はリアルでもゲームでも求められるのは同じなのだ。ツバキは、それを何となく理解していた。
ディフェンスタイプは、いわゆる演奏ミスでゲージが減少するのをある程度はフォロー可能である。
ツバキの操作はそれを把握した上――かどうかは定かではないが、フウマよりも軽快に動いているようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます