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 雪華せつかツバキのディフェンスタイプ使用にも驚く声があるのだが、それ以上に衝撃なのは楽曲にあった。


(一体、何がどうなっているのか――)


 驚くしかないのはフウマの方であり、先攻が向こうに――と言うのも明らかに不利だろう。


 しかし、プレイヤーレベルを確認した所――まさかの1だった事には更に驚く展開となる。何がどうなってる――とは、彼の方が説明して欲しい位だろう。



 その一方、ツバキの方はマッチングになった事には驚くのだが――その辺りはジャンルの事情で諦めている。さすがに対戦格闘のような初心者狩りはないだろう――そうは考えているのだが。


「とりあえず、ゲームを楽しむ事だけを考えますか」


 フウマとは違い落ち着いているのは、初心者プレイヤーと言う事もあるのだろう。

全てはプレイして見れば、分かる事だ。



 他のプレイヤーのマッチングが終了し、次はツバキとフウマのターンと言うべきか。目の前の広いフィールドも変化し、スタート地点と思わしき場所には軽装アーマーと重装甲アーマーのアバターが姿を見せた。


(さすがにレベル1である以上、カスタマイズなしと言う事か)


 フウマはツバキのアバターを見て、特にカスタマイズがない事を逆に――。その一方で、ツバキはフウマのアバターを全くチェックすることなく周囲のモニター等を確認する。


 お互いに反応の差があるのは当然の事だろう。実際、フウマのレベルは10を超えていると言う事で中堅所である。対するツバキはレベル1で始めたばかり、それもこのプレイが初回プレイ。差は歴然だった。


(こちらとしても、さすがに――)


 フウマは力み過ぎた影響なのかは不明だが、若干出遅れる事になる。リズムゲームでは楽曲が流れたと同時にプレイ開始の合図と言う機種が多いのだが、この作品はそうした常識が通じない。


【ミュージック・スタンバイ】


 メットのバイザーに表示されるメッセージ、それが合図とも言える物だった。


【ミュージック・スタート!】


 スタンバイから五秒後、スタート。フライングと言う概念は同時スタートなので存在しない。チュートリアルを見ていたツバキは即座に反応出来たが、逆に反応できなかったのがフウマである。


 

「リズムゲームなのか?」


「明らかにパルクールか何かでは?」


「小学校の体育館位の広さを使う様なゲームなのか――」


 ツバキとフウマのプレイには、客足を止める効果があったのかは定かではない。一方で、ゲームが始まると足を止めて見てしまうのはゲーマーの宿命だろう。


 楽曲には聞き覚えがないのは当然で、このゲーム独自のオリジナル曲だ。主にSNS上のアーティストが担当し、他のリズムゲームで採用されている楽曲を扱うリズムゲームも多い。


 しかし、このゲームに限ればSNSで活躍しているアーティストが多いのは確かだが、楽曲は特殊事例を除いては書き下ろしを採用していた。足を止めるのは楽曲目当てではなく、ゲームのアクション面が強いのはその証拠かもしれない。


(これが新たなリズムゲームか。しかし、ヴァーチャルレインボーファンタジーの一件から立て直せるか――見ものだな)


 少し足を止めていたグレー系の背広の男性、彼はノーネクタイに上着も着ていない。アバターの走るシーンを見て興味深そうにしていたのだが、明らかにそれを見る目は他と違っている。


(一応、どのようなアクションがあるのか様子を見ていこう)


 彼も楽曲には興味がなく、ひたすら二体のアバターが走る場面を注視していた。それもそのはずで、彼は他社から派遣されたプロデューサーだったのである。


 しかも、このゲームの開発とは異なる瀬川せがわプロデューサーのゲーム会社のライバル企業でもあった。

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