第2話:介入者

 一通りのチュートリアルをプレイ後、雪華せつかツバキの被っていたメットのバイザーにメッセージが表示される。


【他プレイヤーのマッチングがありました。マッチングモードに移行します】


(チュートリアルでも言っていた気がするけど、まさか――?)


 次の瞬間には、左腕に装着したハンドコンピュータに楽曲のジャケットを思わせるような物がいくつも表示された。


 楽曲を選択する際の参考に――と言う事だろう。中には楽曲名とアーティスト、譜面難易度位の最低限情報しかない物もあるのだが――。


(表示されているのは、楽曲名、アーティスト、BPM、譜面難易度、それに――)


 ジャケットの下を見ると、そこにはリズムゲームではまず見ないようなメッセージが表示されている。


【この楽曲はスピードタイプ向けです】


 まさかの展開だった。ジャケットの下にどのアーマータイプが適正なのか表示されていたのである。


 これならば、最初からディフェンスタイプを選ぶべきではなかった――と考えがちだが、それを言っても始まらない。


「このアナウンスに従うのであれば――」


 ハンドコンピュータを数秒ほど眺めた後、ツバキはある楽曲を選ぶ。難易度は無視して、ディフェンスタイプ有利の曲を選んだのだが――。



 その一方、乱入してきた背広の男性、センターモニターでのプレイヤーネームはフウマと表示されていた。


 男性の方も筺体内で準備をしている所なのだが、自分が選曲を先に終えたと思ったら――先だったのはツバキである。


(どちらが先攻になるかは、ランダムで決まる。勝負を決めるとすれば――)


 自分が選曲をしたのは、バランスタイプで比較的にスコアが出やすい難易度レベル3の曲だ。


 難易度は一二段階存在するのは、今も現役のリズムゲームに影響されたのだろうか。あまりに細かく分けても差別化出来るとは思えないと言う考えなのかは――運営スタッフのみぞ知る。


 それでも、難易度レベル3は比較的にプレイしやすい部類であり、複雑な動作も必要ない。


 あくまでも走る、ノーツを拾うに集中出来ると言う個所では――彼にとって有利と言うべきなのか。


(先攻は向こうに譲る形になったか――!)


 マッチングは基本的に1対1のシングルとなっている。複数マッチングに対応していないと言うよりは調整中と言うべきだろうか。


 しかし、彼が驚くのは相手が選んだ楽曲である。ジャンルはポップスとの事だが、譜面難易度は――。


「譜面難易度6だと? まさか、向こうの方がこちらよりも実力者なのか!?」


 フウマも対戦相手が楽曲レベル6と自分の二倍というレベルを選んだ事には驚く。しかし、自分で選んだ曲で演奏失敗でもすれば――勝負は決まったも同然だ。


 向こうも分かった上で選曲をしたのだろう――と思った矢先、使用するアーマータイプにも驚きを隠せなかったのである。


「馬鹿な――ディフェンスタイプを使うのか? 明らかに勝負を捨てたのか?」


 ゲーム中でも不人気で攻略サイトやSNS上でもマニア向けという言われ方をしているのが、ツバキの使用するディフェンスタイプだった。操作に関してはどのタイプでも複雑な物はないのだが、バランスタイプとディフェンスタイプではスピードも違いすぎる。


 このゲームはレースと言う訳ではないので、スピードを競う物ではない。あくまでも――演奏をこなしてスコアを出せるか、である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る