第2話

今日は日曜日だ

学校が休みだと彼女といつも一緒に居られることで安心なのだがそんな彼女を退屈させないよう部屋の中を走り回るのも大変ではある。


昨日は土砂降りだったこともあり、疲れてしまったが今日は天気も良くて気晴らしの散歩に出掛けてみるか?

そんな意味も含めて吠えたのだが彼女は何となく気乗りしないみたいで反応がイマイチだった。


そうは言っても俺には青空というものがどんな色をしているのかわからないのだが雨さえ降って無ければ晴れだろうが曇りだろうが関係ない!

雨は捨てられたあの日が甦るようで外に出掛けるのはあまり好きじゃなかった。


その点、彼女は外出することが全くと言っていいほど出掛けないし、雨が降る日は論外で心配ない

散歩と言ってもそこら辺りをちょっと歩くぐらいで10分もあれば済んでしまうのだが俺の身体は人間よりも小さく歩幅も短いので結構な距離になる。


俺は彼女のペースに合わせて並んで歩くのが好きだった

リードで繋がれていても彼女を守りながら歩いている気がして誇らしかったのだが単なる自己満足だ。


やっと出掛ける気になったらしく彼女はリードと首輪を棚から取り出すと俺の頭を優しく撫でながら取り付けて抱き上げ階段を下りて玄関に向かった。


彼女が靴を履き終えるまで尻尾を振りながら待つ!

ドアを開けて外に出ると秋の風が気持ち良かった。


「ちょっと散歩に連れて行くね」

ドアを半開きにしたまま、母親に声を掛けた彼女は

「待たせてゴメンね!」

いつもの優しい声で俺に話し掛けると歩き出す。


この家に来て3年あまり・・・

いつもの見慣れた風景にクルマが行き交うこともほとんど無い閑静な住宅街であるが突然、鳴り響く聴き慣れないサイレンの音と爆音!

猛烈な勢いで轟音を上げながらその怪物は彼女の方へと突っ込んで来た。


何も考える時間も無い!

俺は渾身の力を込めてリードを握り締め恐怖で動けない彼女へと体当たりした・・・


「バロン!」

「ねぇバロン、しっかりして!」


泣き叫ぶように繰り返す彼女の声が無事であったことを暗くなって行く意識の中で俺に教えてくれた。


彼女が無事で本当に良かった

俺の役目は彼女を守ること・・・役に立てて良かった

彼女が流す大粒の涙が雨のように俺の身体を濡らした。

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