第16話【キロルの力】

「はぁ……はぁ……間に合って! 」

ヨルナミは走り出している

息を切らしながらも必死にワタを助けに行かなければという気持ちがとにかく前に出た

走っていて、気が付いたら体が光に包み込まれた

「なんだろう? でも、悪いものじゃなさそう……」ヨルナミは光が導く中を飛ぶように移動する。そして、気が付いたら城の中にいた

(ヨルナミ……? 聞こえるかしら。ライチだよ! 今祈ってあなたに声を届けてるの。回復したのも、城にワープしたのも私が祈ったら出来たこと。原理は分からないけど多分ピンチな時しか使えないけど、今は3人を必死にサポートするわ。)

なんだろう……とても頼もしい

とりあえずは王室に向かおう

王室に向かってヨルナミは走っていった


王室の扉の前はとても大きな斬撃音が聞こえる

それに大きな炎の音が聞こえたりもした

恐る恐るドアを開くと人じゃない者とワタとキロルが戦っているのが見える

辺りは火の海になっており、とても熱かった

「ワタ! キロル! 大丈夫か? 」

ヨルナミは驚き、自分の持っている剣を引き抜き2人の元へ向かう

「どうしたの? 」と状況を聞くいてみるとキロルが「あいつは国王だった奴。ザンロだ! 何とかライチの能力で持ち堪えてはいるが……少し苦戦を強いられている……」

「あいつは親父じゃない! 俺は親父の仇は勿論取るがマシューや伊吹さん。お前の親父の仇も取る! 」

ワタは自分の父親を殺したという怒りや伊吹さんを殺した怒りが無謀な事に拍車を掛けず、ザンロに攻撃を仕掛け始めた

「ワタ! 辞めろ! お前にはかないっこない! 」とキロルが必死にワタを引き留めるがワタは何も聞いてなかった

キロルは慌てながらも冷静に考えた

「くそ……あのバカ野郎! こうなったら!あの力を使うしか……」

キロル何かを唱え始めたると短剣は凄く深い蒼色に染まった

「世界の中心にある偉大なる焔よ……汝に宿りたまえ……」

キロルは目は短剣と同し蒼色になり茶髪だった髪の毛は濃い紫色に染まり始める

「はぁ……はぁ……この力は出来るだけ使いたくないんだがな……焔……苦しいか? 俺は苦しいよ! 汝に力を! もっと深い所に! 」

キロルの肉体は焔という物質と融合し、筋肉や神経に物凄い負担を掛けながらも体を強化されていた

ものすごいスピードと鍛えた筋力によってワタを押し退けてサタンの攻撃を短剣で防ぐ

「キロル……! お前何してんだ! 」

ワタは変わり果てたキロルを見て心配になり声を掛ける

「ちょっとな! 俺の最後の力だ……グハッ……」

キロルの体は焔の力に耐え切れなくなり、少し血を吐き出した

「それでも……わいは! ノルト教27代目教祖! キロル・ノルトだ! これぐらいどうってことねぇ! 」

キロルはそれでも諦めなかった

「それでもダメだ! お前は休め! 」

ワタの言うことにキロルは耳を貸さなかった

「ごめん……2人とも……わい死ぬかも」

キロルはザンロの攻撃を避けながら斬撃を入れる

「無駄な事を……くくく」

ザンロはニヤケ始める

何かがおかしい……行動をよく見ろ……動きをよく見ろ……

ヨルナミがザンロの体をよく見ると黒い何かが動いているのに気づく

「キロル! 避けて! 」

ヨルナミの言ってる事に気が付いたキロルはザンロの体から棘が沢山出そうになっていることに気付きジャンプをして避けた

「危なっ! ……ヨルナミ! 何とか助かったよ! ありがとな」

キロルは更に加速しつつ攻撃をしていた

僕らはこれを見る事しか出来なかった。行ったら確実に巻き込まれて死ぬから

キロルの事を考えているといきなり誰かの叫び声が聞こえる

「教祖様! これ以上は危険です! これ以上したらあなたの身にも……後遺症が残るかもしれません! 」

声を掛けたのはヨルナミ助けたノルト教の信者だった

「お前は逃げろ! ここに入るな! 」

「いえ! 私は貴方をお助けします! 」

信者が動こうとしている……

何とかしてでも止めないと……いい案が思い付かない……どうしよう……

ヨルナミは考えるより先にギターをとりだした

そしてこう綴った


やめなさい

そんなのをしても何も生まれない

命はそこまで軽くはない

まだ君は生きてないと行けない

明日へ向かって歩こうよ


ヨルナミのリリックはキロルに飛んでいく

キロルの体はどんどん癒えていく

「ヨルナミ……お前こそ危険だぞ! この力を使うとお前の寿命は縮む! だから使うな! 」

キロルは知っていたのだ。ヨルナミやライチが使える治癒の力は自分の寿命を縮める事を。キロルはここで死ぬつもりだ

だから自分のことよりも大切にして欲しかったからだ

「嫌だ! 僕は君がいない明日なんて嫌だ! ワタとキロル、ライチと僕が居ないと意味ないんだ! 」

ヨルナミがいくら止めようとキロルは言うことを聞かなかった

「ははは。わいはここで死ぬのが分かってるから。」

キロルはそれしか言わなかった

もう止められないのか……

未来は変えられないのか……

いや違う。僕がするんだ……あの時剣の色を変えたように……

でも、仕方が分からない……

どうしよう……

考えた末、ヨルナミは1つ思い付いたのだった

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