第13話【乗り込み先の裏切り者に】

ワタがドアを開くと周りには兵士が少し見えた

キロルが言ったのだろうか

「ヨルナミ! 隠れろ! 」とワタが叫ぶ声が聞こえた

ヨルナミは驚きながらも近くにあった人が1人隠れることが出来そうな箱に入る

状況は分からなかったが明らかに2人が捕まっている話がしてきてとても争っている気がする

「離せ!俺は王子だぞ!」

そうしたらキロルの声がした。どうやら2人は目隠しをされ、周りが見えてないのかもしれない

「王子様は死んだとおっしゃってます。牢に入りなさい」

キロル……

「おいおいおい、今夜はご馳走になるんじゃねーか? 」

「今夜はご馳走だぜ! ヒャッハー」

凄くテンションが上がり、ざわめく兵士たちのゲスを極めたようなクソみたいな声と笑い声が聞こえた

本当に捕まったんだ……助けないと……

それでも、ワタが教えてくれてくれたから僕が捕まらなかったんだからとりあえずは隠れておかなくちゃ……

外からはワタの声やライチの声が大声で聞こえる

相当抗っているのかな……

僕も出ていった方が……

いや駄目だ……僕も捕まったら誰も居なくなる……ワタ……ライチ……後で必ず助けに行くからね……


隠れてから10分ぐらい経ったころ隠れていると物音が止んだ

それでも怖かったからもう10分ほど経ってから周りを見渡してみると2人は居なく、すごく争った形跡があった

兵士も居なかったから連れていかれたのだろうか

とりあえず冷静になりつつも少し慌ててしまっている自分がいた

とりあえず2人を助けなくちゃ……

そう思い、辺りをさ迷っていると見覚えのある部屋が見えてきた

かつてヨルナミがギターを弾き、国王が怒り牢に入れられることになった王室だ

そこに見覚えのある青年が立っていた

「キロル……? キロル? 」

青年の髪はどこかで見た事のあるような茶髪だったからキロルなのではないかと思ってしまった

だが、後ろ姿だけで顔は見えなかった

「キロル……! 国王が憎いんじゃないの? なんでそこにいるの? 」

ヨルナミの問い掛けにも全く答えなかった

キロルに問い掛けて居るとドアが開き、腐りきったゲスのような目をした国王が入ってきた

玉座の前に着くと前みたいなドスの効いた声で「我が下僕のキロルになんか用か? フォフォフォ」と笑いながら言う国王

やっぱりクソなんだな。確信できた

どうやらキロルは本当に裏切ったんだ……そう思うしかないのか……

「わしが直々に殺るのも面白いが、かつて共に過したやつに殺されるのを見るのも面白い……よし、キロルよ! 奴を殺せ!」

するとキロルは自前の短剣を持ち、ヨルナミに立ち向かってきた

短剣を綺麗に構え、ヨルナミに振る

キロルの目はかつてのここでみた兵士のように輝きを失っていた

ヨルナミに短剣を向け、身軽さを駆使して切り裂きに来た

攻撃を弾いていながら顔を見てみるとヨルナミの顔に何かを訴えようとしているのだ

どうしたんだんだろう

それにしても斬撃一つ一つがとても速い

剣で攻撃を防ぎながらもキロルに語りかける「キロル……? 何故……見てるの? 本当に……本当に裏切ったの? お願い……目を覚まして……」

ヨルナミの問い掛けにも全く耳を貸さないキロル

「何故だ……何故だ……何故だァ!」

語りかけても無駄だと確信したヨルナミは遂にキロルに攻撃をし始めた

剣術の技術で言ったらほぼ互角。どうしようかと思った時、キロルは組手に弱いことを思い出した

ヨルナミはキロルの斬撃をよけつつ剣を即座に収め、キロルの胸ぐらを掴む

ヨルナミが投げようとするとキロルはそれを逆手に取り、ヨルナミの左腕を突き刺した。最初は死を覚悟したが何故か力がとても弱く、筋繊維の間に綺麗に刺さっていた

刺した時、キロルは耳元で何かを言った

「嘘だろ……」

ヨルナミはそれを聞き、驚きながら怒りが隠せなくなっていた

「お前は絶対に殺す! 覚悟しとけ!」

それを見た国王はニヤリと笑いだした

その笑みは前に見たよりよずっと邪悪で本当に人間じゃない様だった

「キロル! 殺ってしまえ! 」と国王が命令するとキロルは短剣を蒼く光らせ、ヨルナミに突き刺す

蒼くなった剣はとても熱く、少し神経に痛みが走った。少しの痛みなのに気を失いそう……

ヨルナミは力が抜け、倒れてしまったが何とか気は保っていた

「キロ……ル……? 」

「キロル! よくやった。」

国王は更なる高笑いを見せる

とても穢らわしく、邪道な笑い方だった

国王が笑っているとキロルは「国王さん、殺ったからアレくれよ」と言った

「約束だからな。これだ。受け取れ」

国王はキロルに丸い何かを渡した

「こいつはどうすればいい? 」とヨルナミの首を持ち国王に聞くと「牢に入れとけ」と言った

キロルはヨルナミを縄で縛ると外に居る兵士に渡した

僕もワタたちの所に行くのか……また入るのか……嫌だな……今度こそ最期だな……

しばらく歩いていると兵士がひとり、剣を引き抜き周りの兵士たちを押し退けた

そして、甲冑のヘルメットを取る

キロルと同じ様に綺麗な茶髪だが、ロングヘアーでとても容姿端麗な女性だった

キロルに似ているような、何かを感じた

どうやら、ノルト教の信者のようだ

「何故ここに居るのですか? 」と聞くが「今は教えられないです。でも、キロル様の命令なのは事実です。」

キロルの命令……

とりあえずキロルの言っていることが本当なら……

「とりあえずおふたり様を助けに行きましょう。後ろは任せてください」

と剣を構える

「頼もしいです」


2人は走っていると見張りの兵士が2人を追っている事に気付く

1人や2人じゃない。10人ぐらいいる

「ヨルナミさん、ここは任せてください!」信者が言う

「危険だよ! 僕も……」

「自分は焔が使えます! 教祖様みたいに蒼くはなりませんが白くはなりますから! 女だからって甘く見ないでください! こう見えて、ノルト教で一番強いのですから! 」

キロルの短剣は確かに蒼くなっていた

つまり、この人は凄いってことか

キロルが連れてくる程なんだから強いと思う。目も自信に満ち溢れていたから任せる事にした

「すまん、頼んだ! 」とヨルナミはいい、走っていった

焔ってなんだろう……キロルみたいに剣の色を変えれることができるのか……

どういうことなんだろう……

それでもとりあえずは2人を助けに行かなければ……

ヨルナミはまた、走り出した

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