第4話【伊吹という人物】
お城から出てきて3時間は経っただろうか。かなりの距離を2人は走っていた
もう、30キロは走っているだろうか……
どんどん夜は空けて来ていたのだ
太陽が少し登り始めた時、2人は山奥にある家に着いく
家はボロボロの木造建築で、人が住んでいるとは思えない程の有様の荒れようだった
「あれれ、おかしいな……伊吹さん? 」
ドンドンドンドンドン
もの凄い勢いでドアを叩くワタ
「ワタ……流石に寝てるんじゃ……」
ヨルナミは止めに入るがワタは全く聞く耳を持たなかった
呆れたヨルナミは家の近くでボーッてしているといきなりドアの方からバカン!謎に大きな音がした
何が起こったんだと思って見に行くとワタが大男に説教を喰らっている
「こんな夜明けになんだ! まだ一時課だぞ!ドアを叩くのはいいが、ドンドンドンドン大きな音で叩きよって!」
そこには何故か仮面を被った男性。ガタイは良かったが目は見えない
髪は少し白くなり始めていたぐらいだ
声はいかにもって言うぐらい低い声をしている
「で、何の用だ?」
男は少し怒り抑えながらワタに理由を聞く
「えーと、実は……」
と起こったことを一通り話した
「剣術を教えてください。2人で頑張ります」
その事に納得した伊吹
「そうか、ヨルナミってやつはどいつだ?」
と言われ、出ていくヨルナミ
「僕が……ヨルナミです……」
とりあえず名乗ってみたら男はそうか、と言い何故かヨルナミの目をじっと見つめていた
「ほぅ……納得した。確かに……」
まだ名乗ってないのを思い出した伊吹
「あっそういや、吾輩の名を言ってなかったな。吾輩は伊吹だ。よろしくな」
伊吹さんか……
「そういやあの親バカが子供を……」
何か小声でを言おうとした伊吹さんにワタは
「何かあるんですか?」と質問する。伊吹さんは驚き、「いや、なんでもない。昔の友人に似ていたから……」
と少し場を濁したのだった
「とりあえず、君らはここで修行をしたいと。なら、お前らを試そう。この山のどっかに剣が2つ隠してある。それを次の日までに取ってきたらお前らを弟子にしてやろう。」
そう言うと伊吹さんはドアを閉めた
なんだろう……凄い勢いのある人だなって思いながらワタに引っ張られて山を登っていった
山を登っている時にワタは効率を良くしようと考えたのか
分かれ道が見えると
「とりあえず、ヨルナミは右側に行け。俺は左に行く」
2人は道を別れて歩いていった
歩いていると木の物陰に大きな岩を見つけた
その岩はずっとそこにあると言わんばかりに立派で苔も生えていた
その岩を触ってみると中に何かがあるように感じた。中の何かが僕のことを呼んでいる。そう感じた
試しに岩を蹴ってみても当たり前だが割れない。何か策はないのかと考えているとふと頭にあることが浮かんだ
何故かヨルナミは自分の楽器を取りだし弾き始めた
本人も何故これをしようと思ったかは分からないが気付いたら体が勝手に動いていたのだった
ヨルナミは歌い始めた
すると、体は不思議な感覚に包まれた。光が周りに集まり、輝いていた
手が勝手に動き始め、メロディが流れ始めた
ここでこの岩破壊する
岩の中には何かある
この岩破壊しなければ
僕は前には進めない
だから僕はこの岩を
絶対破壊してみせる
メロディに合わせて思った事を歌ってみると体にぐっと力が入り、岩に一点、とても薄い所かある所に気が付き思いっ切り力を入れて岩を叩いてみる。すると岩が思いっきり音を立てて割れたのだ
その音はワタのいる所まで聞こえてヨルナミの所に走ってきた
「ヨルナミ、凄く大きな音したけど大丈夫か?」
ワタは心配してヨルナミに声をかける
「うん、大丈夫。それより……岩がなんか割れた」
ヨルナミは平然としていたがワタは岩を見て動揺とした
割れた所を見てみるとそこには紅色に光り、不思議な光とともに剣が刺さっていた
その風景はとても言葉にできないような美しさだった
ヨルナミは導かれるようにこの剣を触り、抜いてみる
深く刺さっているように見えたが凄く軽い力で抜ける
剣自体も軽く、紙でできた剣を持っているような感じだった
見た目は重そうなのに凄く軽そうに持つヨルナミを見てワタは不思議に思ったのか
「貸してみて」
といい、ヨルナミが持ってた剣を貸してもらう。持ってみたら思っていたより10倍も重かったらしく、剣を落としてしまった
「重っ! ヨルナミ、よくこんなん持てるな」さらに引いてしまったワタをみて、話を変えようと思い
「そういや、もうひとつ剣ってどこにあるのだろう……」
と剣の話を持ち出した
「そういや、そうだったな。とりあえず頂上に登ってみるか」
ワタと一緒に頂上に登ってみると剣が2つ置いてあった
「なんで、これ2本あるんだろうね……」
2人は疑問に思いつつも剣を持って降りていった
2人は伊吹さんの家に着くと山で色々とあり、ボロボロになっていた
「はぁ……はぁ……やっと着いた……」
2人は疲れの余り玄関で倒れていた
それに気付いた伊吹さんはドアを開けて2人を担ぎ家に入れる
結局2人はその夜は爆睡をし翌日になった
「何とか帰ったか。帰り道は死人が出るからな。よく生き残った」
よく生き残ったじゃないよ……やっぱり殺しに掛かってたのかい
やっぱりあの罠の数は尋常じゃないと思った
「よし、山から降りよう」
そういったワタはヨルナミを引っ張って降ろうとした
そしたらいきなり矢が飛んでくる
「うわっ危ない……」
何とかギリギリで避けるが次から次へと飛んでくるのだ
「痛っ!」
少し小さいが嫌がらせのように石が飛んできたりもして四方八方から細かい石が凄い勢いで、体を痛めつけた
他にも大きな岩が転がってきて、落とし穴があったりと明らかに殺しに来ていたのだった
色んな物があったがなんだかんだこの石が1番辛く、沢山当たってしまったからボロボロになった原因だったのだろう
「まぁ、良かったな」
伊吹さんは適当に流し、2人を手当し始めた
手当が地味に上手かったので少し2人は驚いた
「そういや、ヨルナミ。この剣はどこで見つけた?」
伊吹さんに剣のことを聞かれ、したことを答える
伊吹さんは少し涙を流したがその後
「よくやった」とヨルナミを褒めたのだった
「伊吹さん……どうしてそんなに手当が上手いんですか?」と少しの出来心で聞いてみた
「ん?吾輩は昔、タトイヒ国の1番隊隊長をしていたからな。マシューとか知ってるだろう。あいつは吾輩が育てた中で1番強かったからな」
マシューの自慢をしていると少し悲しくなってきた
「ワタ、どうして涙を流しておる?ヨルナミも……? ! まさか! マシューは……」
察しが良かった伊吹さんに事情を話した
「さぐが……あのさぐが人を殺すなんて……ありえない……」
さぐ?誰だろう?
「さぐって誰だ?」
ワタは初めて聞く名前に困惑する
ワタは育てた兵士の名前を全員覚えていたので尚更
その後伊吹さんは目を丸くして不思議そうに答えた
「お主、自分の父の名も知らぬのか。お主の親父の名ですぞ。さぐめぇ・イヒ・タト。あの親バカが……? 」
名前を教えたあと少し小声で伊吹さんはなんか言う
「なんか言いましたか?」
上手く聞き取れなかったヨルナミは聞いてみた
「いや、なんでもない」
適当に流す伊吹だった
「んじゃ、あの時からクソ親父はあんな感じだったのか?」とワタは聞く
「いや、分からない。吾輩はさぐがああなる前に出ていったからな。分からぬ」
ワタは自分の親父が名前を教えてくれなかったことに少し怒りを覚えた
「あのクソ親父、親のくせに子に名前を教えないのか。何故だ……」
「さぁな。でも、今のさぐの政治を見ても滅茶苦茶だ。お前らはそれも含めてばしばし鍛えるから覚悟しとけ! 」
熱血的な人だな。
「鍛えてる間はうちに泊まればいい。飯も吾輩が出してやる。寝床はこの部屋だ」
しっかりもした寝床も用意してくれるのか。少し有難いな。
「明日から始めるから、頑張れよ」
そう言うと伊吹さんは去っていった
明日から修行か。時間も遅いし寝るか。
とりあえず、頑張らなくちゃ
そう思いながらも修行が始まったのだった
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