第3話【ワタ・イヒ・タト】

ここの牢屋は居心地が悪い

ジメジメしていて、蜘蛛の巣も張っている。とても人間が住むような所じゃない。音も無くて、凄く音が無く、静かな夜に一人でいる感じがした。唯一、上の方にある鉄格子からの、静かに輝く太陽の光が見える。それだけだった

とても悲しい時の流れでとにかく不安との戦いだった

僕はどうなるのかな……殺されるのかな……マシューさん遅いな……まさか……殺されたのかな……僕が国王様の機嫌損ねたから……

そう思っていると、コツ……コツ……コツ……と足音が聞こえてきた

次は僕の番なのかな……殺されるのかな……

絶望に浸って恐る恐る外を見ると青年が立っている

その青年はとても背が高く、とても清楚な格好をしていて目は泣いた後なのか、少し霞んでおりそれでも明るかった。あの国王とは違って髪は整っていて茶髪だ。この人なら信じれそう。そういう目をしている。

「マシューが死んだ。クソ親父に殺されたんだ。」

え……マシューさんが……

クソ親父って言うことは、この人は国王様の息子さん。つまり王子って事なのだろうか……

「なんで……マシューさんは殺されたのですか……? 」

殺された理由を聞いてみる

青年は涙を堪えながらこう答えた

「あの……クソ親父が……理不尽な事を言って……何故か……殺されたんだ……」

「理不尽なことって? 」

「なんか、スパイがどうのこうのって……」

「それは……」

ヨルナミは青年に対して起こったことを全て話した

その話を聞いた青年は納得した様子で「君は悪くない。悪いのはあのクソ親父だから」

と弁護をしてくれて、理由を知った青年は目の霞が少し取れて、すごく優しい雰囲気になって行った

「優しいね。優しい目をしているし、さらにそう思うよ」

「目?なんで目を観るんだ?」

目を観ることを言われ、驚いた青年はヨルナミに理由を聞いてくる

「僕は目を観たらその人がどういう人なのかが大体わかるの。君は最初は悲しい目をしてたけど、今はあの国王様みたいな目じゃなくて、すごく優しい目をしてるから。」

少し納得した様子で青年は頷いた

「名前はなんて言うんだ?」

青年は名前が気になったのか聞いてくる

「ヨルナミ……ヨルナミ=ユナミ。」

名前を聞いた青年は微笑み

「いい名前だな。」

名前を褒めた

そうだ、僕も名前を聞かないといけない……

「君はなんて言うの?」

名前を同じように聞いて見ることにした

「俺?俺はワタワタ。ワタワタ・イヒ・タト。ワタって呼んでくれ」

ワタ……ワタか。

「ワタ……いい名前だね。」

「そうか、いい名か。俺たちなんか似ているな。」

2人は笑い、共感し合い、楽しい時間が過ぎ去っていった

太陽が沈み始めた頃気が付いたら

「ワタ! ワタは居らぬのか! 」

ワタは国王に呼ばれた

「悪い、俺呼ばれたから行ってくるわ。じゃーな! 」

そう言うとワタは走って去っていった

また、会えるといいな。あんな国王でも、王子がいい人なのは……なんでなんだろう……

少し疑問に思い、考えながら眠りに着こうとした。でも、ここは寝るには向いていない環境で何とか寝ようとしたが思ってた10倍以上に寝付けなかった


翌日の早朝

まだ外は真っ暗で太陽も上っていないだろう

「ヨルナミ……! ヨルナミっ! 起きろ! 」

とワタに起こされた

「ワタくん……おはよう……ここ、寝心地が悪くてそこまでねれなかったんだ。」

「そう言うと思って、毛布を持ってきたんだ! 」

ニコニコしながら毛布を持ってきたワタ

「それとな……お前の私物もくすねて来た。これだろ? 」

ワタはヨルナミの楽器とペンダントを渡す

「あっこれは……これがあると落ち着くんだ……」言いながらペンダントを掛けたる

ペンダントの事に少し疑問を持ったワタはヨルナミに

「何故、落ち着くんだ?」

と聞く

ヨルナミは少し笑いながら

「これは親の形見だから……」

と言う

「そうか」

ペンダントの話を流したワタは次にヨルナミの持ってた楽器の事を聞く

「これはなんて言うんだ?」

「これは……まだ名前は決まってないんだよね。」

「そうか。どうやって使うんだ?」

使い方を聞かれ、とりあえずいつも通りの音を鳴らしてみる

ワタはさらに興味を示した

何を考えたのか分からないがワタはいきなり

「ヨルナミ、これ試しに英文字のやつで押えてみたら?」

ワタは思いつきでヨルナミは面白そうと思い試しに鳴らしてみる。すると音が変わった

これはいいと思い、他の英文字を使っていい音になるものを探した

その次の日も、また次の日もワタはヨルナミの所に来て楽器を作り上げていた


ある日、ワタはヨルナミの食べている物を見つけた

よく見てみると全く手を付けてないことにワタは気付く

「これ飯か? ひっでーな、これ残飯だぞ? ま、焦げたパンなだけましか。毒はないと思うから食え食え」

と食べる事をワタは推してきた

「いいから……食べる気ない……」

推しの強いワタに対して、最初は無理矢理食べさせられていた

ワタはヨルナミの事を心配していたのか、毎日食べさせようとする

ヨルナミはワタの気持ちを知らずに迷惑と思ってしまっていた

ある日、今日もワタが食べさせようとした時、ヨルナミは少し血が頭に昇ってしまって

「いいから! 離して! なんでこんなことをするの? 」

と少し強い言葉が飛んでしまった

「悪いか?俺は心配してな。だから、食えよ。」

「そんなのいいから! 僕はここで死ぬ運命なんだから! マシューさんも僕のせいで死んだ。だから、それも含めて僕はここで死ぬ。僕は生きてる価値なんてないの! 王国育ちの君には分からないと思うけど! 」

思わず強い言葉が飛び出てしまった

「そうか、ならここで死ねばいいじゃん!お前に俺の何が分かる!」

ワタは怒り、出ていく

最初はあんなやつ知るかと思っていたが、後々言いすぎたなって思い始め、罪悪感が自分を襲った

それからしばらくの間ワタが来る事はなかった


それから3日が経った頃

誰かが歩いてくる音がする

ワタかな……誰だろう……

恐る恐る顔を上げると国王が牢屋の前に立っていた

「お前の処刑日が決まった。公開処刑をするからな。せいぜい、後3日間。後悔するがいい。それとな、貴様。わしの息子を洗脳しようとしてるな。毎日お前の所に行ってたからな。まぁ、跡継ぎのことはどうでもいい。せいぜいいい血飛沫を見せてくれるがいい」

国王は笑いながら去っていく

ぼくの命もあと3日。最後でいいからワタに謝りたいな。

それだけが今1番の心残りだから

それからしばらく経ち、太陽が沈みそうになっていた頃

一人入ってくる音がした

「ヨルナミ……ヨルナミ? 俺だ。えっと……その……悪かったよ。俺が良ければよかったって思ってばかりで、お前のことは何も考えてなかった。ごめん。」

ワタは申し訳なさそうに言っていた

「僕も、ごめん。言いすぎたなって思う」

ヨルナミも自分が言ったことに対し、反省した様子でワタに謝っていた

「俺たち似てるな。」

2人は喧嘩をする前以上に笑っていた

「最期に一つだけいいかな?」

ヨルナミは疑問に思った事を聞くことにした

「最期なんて言うな。お前は生きる価値のない人間って言ったけど、生きろ。世の中に死んでいい人間なんて居ないから。マシューが繋げてくれた命、大切にしないか? 」

説得を聞いたヨルナミは少し落ち着いたのか、またワタに聴きたいことを聞いた

「なんで、世界はこんなに争いばっかなの?」

「それはな……」

ワタが説明をしようとした時

コツコツコツ!!!

大人数が走ってくる音がし国王と兵士たちが2人を囲んだ

「ワタ! お前は何度言ったらわかるんだ! この者は危険だから近づくなって言っただろ! スパイだぞ! 憎き敵国の! 」

国王様は怒鳴り散らしながら、入ってくる

「なんでだよ、親父は隣の国になんかされたのか? 」

ワタは質問をする

「お前も分かってるだろ。ワタ、我々の先祖が隣の国との権力派閥争いによって、この戦いが始まった。お前もいつかはわしの跡を継いて……」

「親父は俺のことを後継ぎとしか考えてないの?」

「ああ、そうだとも。お前は我が家の唯一の出来損ないだが、一応長男だからな。役目があるだけありがたいと思え。将来はしっかりと指揮を取って戦いに備えてもらうぞ」

「な……貴様……」

ワタは怒りを抑えきれない様子で呟く

「そんなくだらないやつなんかほっといて、行くぞ。お前の部屋に帰えるぞ! 次出たらお前も牢に入れて殺すからな」

国王の言葉にワタは遂に頭に血が上ったのか

「くっ……跡継ぎなんて! 後継ぎなんてクソ喰らえ! 誰がお前のあとなんか継ぐんだ! こんな世界違う! 間違っている! お前はいつもそうだ! 戦い! 戦い! そんなので何が解決されんだよ! そんなの昔と同じことをしてるだけじゃないの? この老害くそじじいが! 」

きつい言葉がワタから飛び出る

「何を! 貴様! 実の父に向かって! お前こそそんな下民を構うのか! こんな穢れた血を! 」

国王は怒り出す

「こいつが穢れた血ならお前はもっと穢れているよ! お前は俺の初めての友達をバカした!俺のことを思って言ってると嘘ついて他の奴らとの交流を消してきた! だから、俺は一人だった! それが俺のため? バカじゃないの? お前の血が流れてるだけでも吐き気がする! 俺らは世界を変える! こんな世界なんか! お前なんか! こんな国なんか滅びてしまえ! 」

されに追い撃ちをかけるようにワタはいう

国王様はさらに怒り、怒鳴り散らす

「##&##☆!,#☆☆,」

ワタは兵士の持っている鍵を奪い取り、国王は跳ね除けて牢のドアを開けた

「ふぅ……よし、上手く行ったな。あのクソ親父を怒らせてお前が逃げる隙を作ったんだ。3日の間、演技の練習したかいがあった」

ワタはヨルナミの手を掴み国王をはね飛ばして走って逃げていく

「いいのかな……君のお父さん、凄くカンカンだったけど」

「いいのいいの、あんなクソ親父。マシュー、お前の意思はしっかりと引き継いだから」

一人、白い服を身にまとった男が見えた。その男は少し微笑み、姿が消えていった

多分、マシューさんだろう。安心してあの世に旅発って行ったのな

ワタにその事を伝えるとワタも少し笑った

お城の長い廊下を走っていると一人、女の人がワタに声を掛ける

「ワタ……どこ行くの……? 」

少し不安そうに、心配そうにワタに声を掛けていた

「ねーちゃん!ここに来たのは黙っといて!」

そういうとワタは城の松明を倒し周りを暗くする。ワタとヨルナミは闇の中に姿を消した

ねーちゃん?ワタの姉かな……とりあえずは逃げることに集中をしよう

そして話は逃げ切ってから聞こうか


国王は2人が去った後、怒りがもの凄く爆発を迎えていた

顔を思いっ切り赤らめながら「あの二人を捕まえたものには褒美をやろう! 捕まえろ!」

国王の命令により、2人は国を追われる身となった


闇の中、城を出た2人は森の中を走っていた

「ワタ……どこに向かってるんだ?」

向かう場所をワタに訪ねてみた

「今から伊吹って人の所に行く。俺らはこれから国に追われることになると思う。だから修行を付けてもらうことにした。」

「えっ僕は……」

「つべこべ言わずに行くぞ! 」

とワタはヨルナミを引っ張って行くのだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る