第49話 いなくなった彼女【アイ・アイの母】
小島は、春にアイと付き合いだしたのに秋になってもまだセックスできないでいた。
2人でいる時は、いつもイチャコラしていたけれど、やっぱり最後はアイが痛がったからだ。
それでも小島は、毎日がとても楽しかったし充実していたし幸せだった。
そんなのんきな小島は、いつものように家で晩御飯と風呂を済ませてから1時間かけて自転車でアイの家へと向かった。
「全てのボクの~よぉな♪ロクデナシのぉ~ために♪この星はグルグルと回る~♪」とブルーハーツの『ロクデナシ』をご機嫌に歌いながら。
アイの家の近くに来ると、アイの家の玄関に人影が見えた。
その人影はアイの親で、懐中電灯を照らして何かを探しているようだった。
さすがにアイの部屋に入れそうもなかったので、小島は、ひとまず来た道を戻って公衆電話からアイの家に電話をかけた。
電話に出たのは母親で、その声の調子からずいぶん慌てて受話器を取ったのがわかった。
母親の話を聞いてみると、アイは夕方に友達の家に行ったきり帰って来ないという。
なのでアイの友達の家に電話すると「夕方には帰った」とのことだった。
当時は携帯電話がまだない時代で、アイと連絡が取れず事件に巻き込まれたのかもしれないから近くを捜索しているとのことだった。
小島は「俺も心当たりを探してみます。」と言って電話を切った。
小島は自転車で3時間ほど真っ暗の中を探したけれど見つからず、深夜2時になっても何の手がかりもないので一旦帰ることにした。
その時、1台のバイクとすれ違った。
そのバイクの後ろに乗っていたのがアイに似ていたので小島は後を追った。
けれど自転車でバイクに追いつけるわけもなく、どんどん引き離されていく。
それでも小島は追いかけた。
しばらくすると、どういうわけかそのバイクが戻ってきた。
小島は、止めようとしたけれど、うまく交わされて逃げられてしまった。
すると脇道から自転車に乗ったアイがひょっこり現れた。
小島はビックリしたけれど、アイは小島を見ても何だかボーとしていて、小島はアイに何があったか聞いた。
「友達の家から帰る途中に同級生の男子に会って、今から先輩の家に行くから一緒に行かないかと誘われたけど、断ったんだけどしつこくて、一時間だけという約束で同級生のバイクで先輩の家に行ったんだけど…お酒を飲まされて…帰りたいと言っても帰してくれなくて…こんな時間になったんだよね…」
そして酒を飲まされただけで他に何もされてないとアイは言っていたけれど、小島はブチキレていた。
アイが言う先輩は、小島と同い年であまり良い噂を聞かない奴だった。
それから小島は「親が心配してるから早く帰って説明しろ」とアイに言って、自分は、そこら辺にあった鉄パイプを拾ってそいつの家へ殴り込みにいった。
部屋には3人いたけれど構わずフルボッコにした。
3人ともぐったりしたので小島が帰ろうとしたら、その家の親が通報したのか警察が来て小島は捕まってしまう。
それから小島は停学になり、1週間『六法全書』の書き取りさせられた。
♪全てのボクのようなロクデナシのために
この星はグルグルと回る♪
THE BLUE HEARTS『ロクデナシ』より
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