第46話 青春時代に学んだこと②【亀田・ベッキー】
今回は『人が死にかけている時に何をされると一番ムカのつくか?』について小島が学んだ出来事である。
部活が休みの日にキャプテン亀田とベッキーとで地元の滝へ遊びに行くことになった。
その滝は一番滝、二番滝、三番滝と3段階になっていて、一番滝は誰もがイメージする上から垂直に落ちる滝だ。
高さは15メートル程だろうか。
そこからすぐ二番滝になっていて、水が落ちるところは常に激しい渦が巻いているので泳ぐとこができない。
そこから5メートルくらいの長さの滑り台のような水路を下ると三番滝になる。
そして三番滝の水が落ちるところは深さ3メートルくらいの大きな円形の場所になっている。
大きな円形の場所は、水流が穏やかなので通常は三番滝に潜って魚をヤスで突いて川遊びをする。
主にイワナ、ヤマメ、鮎などだ。
他にも少し面倒ではあるけれど、少し山を入って行くと五メートルほどの高さから三番滝にダイブする遊びも出来る。
ただ三番滝は1日中、日が当たらないので水温がかなり低い。
なので川遊びをするときは、必ず最初に焚き火を作らなくてはならない。
これをやらないと命取りで1分で唇が紫になってしまう。
真夏の気温35度でもガッチガチに震える寒さだ。
ちなみに三番滝の底には、人の頭蓋骨らしきものがあるけれど、地元では暗黙の了解で誰もツッコまないルールになっていた。
そんな三番滝にキャプテンの亀田が行ってみたいと言い出した。
小島は、一緒に大地も誘ってやろうと思ったけれど、大地は肘を壊してからピッチングよりペッティングの練習に精を出していたので(マネージャーと)、邪魔するのも悪かと思いやめておくことにした。
たまたま暇そうなベッキーがいたので声をかけてやると付いてくることになった。
キャプテン亀田とベッキーが小島の家に集合して、3人は1時間自転車をこいで滝へと向かった。
三番滝で一通りの遊びをして、ヤマメを3匹突いたのでそれを焼いて食べた。
食べ終わると亀田が「一番滝に行きたい」と言い出した。
一番滝は危険なので地元の人間でも行かない場所だ。
けれど一度言い出したら聞かないのが亀田なので、小島は「しょうがねぇ」思いながら行くことにした。
一度山を上がり道路からグルッと回って川に出て一番滝へと向かう。
一番滝に着くと、ものすごい勢いで川の水が落ちていて小島は足がすくんだ。
と、その瞬間、小島は苔に足を滑らせて、そのまま滝から落ちた。
あっという間の出来事で小島が水面から顔を出した時には、もう二番滝の渦の中だった。
必死で岩に捕まり耐えていると「小島~生きてるか~」と半笑いのベッキーの声が聞こえた。
その時小島は「後でぶっ飛ばす!」と心に誓う。
亀田が近所で浮き輪を借りて来て小島に投げてくれたので小島は浮き輪につかまり、滑り台のようになっている水路を越え、なんとか三番滝にたどり着く。
亀田のおかけで命拾いした小島だったけれど、ムカムカしていた。
というのも小島が滑り台を下っている時もベッキーが半笑いだったからだ。
それを小島は見逃さなかった。
小島が水から上がると背中は滑り台で擦りむけて血だらけになっていて、頭もどこかの岩でぶつけたようで流血している。
しばらくすると亀田とベッキーが小島のいる三番滝に戻って来た。
「小島!大丈夫か!?」と心配する亀田、「めっちゃ血が出てるじゃん!」と半笑いのベッキー。
小島は、おもいっきりベッキーをビンタして帰った。
アメリカの政治家であり物理学者でもあったベンジャミン・フランクリンは、かつてこう語っている。
『足を滑らせてもすぐに回復できるが、口を滑らせた場合は決して乗り越えることはできない』と。
それを知ってか知らずか、小島はこう語っている。
『あの滝で足を滑らせたら普通は死ぬし、滑り落ちている時の半笑いの口元には殺意が湧く』と。
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