第45話 青春時代に学んだこと①【キム・ベッキー】

小島は甲子園を目指して、ほとんどの時間を野球に費やした。

そして仲間達を通して多くのことを学んでいく。


例えば…


野球部には、みんなから『キム』と呼ばれている木村コーチがいた。

キムは普段はゆるーい感じの人物で、小島がキムのタバコをパクって吸っていても「おい、俺も金ねぇんだからあんまり盗むなよ~」と言うフレンドリーな感じのコーチだった。

けれど、いざ野球の事になると厳しくて、ぶちキレる一面もあった。

特に「道具は大事にしろ!」と事あるごとに部員達に口うるさく注意指導をするコーチでもあった。


そんなある日、守備練習でキムがノックをしている時にショートの平凡なフライをサードのベッキーがでしゃばって取りに行きポロリと落球する。

それにキレたキムが「何やってんだぁお前は!バカ野郎がぁ!」と言って、持っていたノックバットを地面に叩きつける。

するとバットは見事に折れた。

小島は「自分であれほど道具は大事にしろと言っていたのに…」と思いながらキムをチラッと見ると、キムは「木製だったか…」とつぶやいている。

小島は「金属でも木製でも同じ道具ですけど~」と喉まで出かけた言葉を飲み込んだ。


小島は、この出来事から大人になっても“わかっている”と“できる”は、別物なんだな(笑)、ということを学んだ。

それと同時に『近くに寄るほど偉人も普通の人だとわかる。従者から偉人が立派に見えるのは稀だ。』というフランスの作家でありモラリストであるラ・ブリュイエールの名言を体感した出来事でもあった。

ちなみにキムは現在監督をしているそうな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る