第39話 そうだ、星を見に行こう【アイ・LOVE・将軍】

小島はLOVEに乗って星を見に行った。

後ろにアイを乗せて。

高台で2人で寝っ転がって星を見ながら、いつものようにたくさん話をした。

その時に小島はこんな話をアイにした。


「俺の生まれ育った小鹿野町には町民大運動会っていうのがあってさ。

小鹿野町を9地区に分けて、応援も含めると2千人ほどの人が集まるから結構盛大に行われてて、出店も30店ほど出るから子供たちはお祭り感覚で毎年楽しみにしてたんだよね。

その運動会で一番盛り上がるのがリレーでさ、小学生、中学生、高校生、20代前半、20代後半、30代前半、30代後半、40代、50代から1人ずつ選抜するリレーなんよ。

同じ学校の女の子や違う学校の女の子たちもいっぱい見に来てるから、そこで1着でバトンを渡すとかなりの黄色い声援を受けることになるわけ。

俺が5年生の時、俺のいる地区の小学生代表が友達の将君でさ、将君は一位で次の走者にバトンを渡して、かなり『わ~キャー』言われていた。

でさ、俺は足が速かったから、6年生になったら俺が年代別リレーに出るものだと思ってて、『来年は俺が!』と言う気持ちでいっぱいだったわけ。

そして6年生の町民大運動会を迎えたけど、急成長を遂げたペコちゃんにタイムで負けて…代表になれんかった。

ペコちゃんは二位でバトンを渡したから、『俺が出ていれば…』とその時はすごく思った。


そして中学2年生の時、俺の地区の中学生代表は、また将君でさ。

三位でバトンを受けた将君が二人を抜かしてトップになって、また女の子たちから『わ~キャー』言われてた。

『来年こそは絶対に出る!』と誓ったよね(笑)

その頃の俺は同じ中学では敵なしの足の速さで、秩父の陸上大会でも100メートル200メートル共に1位だったからさ。

陸上の賞状や県大会の切符なんて全然欲しくなくて、欲しかったのは町民大運動会の女の子の『わ~キャー』の声援だったんだけど…俺が中学3年生になった年…どういうわけか小鹿野町大運動会が廃止になった。

あの時のショックときたら、言葉にはできない悔しさがあったわ (笑)

そんなモテたい意識が強かったんだけど…

今は『わ~キャー』の声援なんて全然欲しくないよ。

それに世の中には浮気する連中がいるけど、俺にはその気持ちが全然理解できない。

俺、アイさえいればそれでいい。

けど、俺、カッコ付けだし、彼氏として堂々とアイの友達に紹介してもらえる男になりたいけど、自分に自信が持てなくてさ…」


アイは、こう言った。

「そんなこと気にしてたの!?

別に誰に何を言われようが関係ないよ!

世界中の女の人がみんなトシ君を嫌いでも、私はトシくんの事が大好きだし、私は今のトシ君のままで良いと思ってるんだから。

トシ君は私のだから、誰にも渡す気ないしさ。

トシ君も私に好かれてるんだからそれでいいんじゃないの?」


小島にとってアイの言葉は何ともいえない力があった。

同じ言葉を他の人に言われたら何とも思わないだろうけど、アイに言われると小島の胸に深くしみ込んだ。

小島はアイの言葉にどれだけ救われたか…そしてどれだけ幸せを感じたことか…


「もう一回言うけど、俺、お前さえいればそれでいい。

アイの為なら何だってできるよ。」

「ありがと。」

星空の下、2人はたくさんキスを交わした。


その帰り道、山道を下っているとLOVEのブレーキが急に効かなくなり、2人は山の斜面に衝突してしまう…

小島は全身を強打し、アイは女性の大事なところを強く打ちつけて「あそこが痛い…ツーンとする…」とずっと言っていた。

小島にとってアイは一生忘れることが出来ない女性であり、生涯記憶から消えないのがLOVEなのである。

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