第29話 高校の進路で悩む話3【大地・堀田・監督・小島父・将軍・ベッキー】
小島の中学最後の夏の大会では、またしても2回戦で敗けた。
サヨナラヒットを打ったのは俳優の藤原竜也の兄だった。
中学野球は7回が最終回なのだけれど、延長11回のサヨナラ敗けだった。
小島は、延長11回を一人で投げ抜いたヤンキー堀田に「お疲れさん。最後いい球だったよ。あれを打たれたんならしょうがないよ!」と数年ぶりに声をかけた。
堀田は目を合わせず「うん。おつかれ。」と言った。
こうして小島と堀田の口を一切聞かないバッテリーは、この日で幕を閉じた。
軟式野球も終わり、いよいよ本格的に進路を決める時期が来た。
小島は、夏休み中にいくつか気になる高校の練習を見に行ったり、セレクション受けたりと忙しい夏休みを過ごした。
小島には陸上部でもないのに県大会で準決勝に残る足の速さがある。
そして最大の武器が肩の強さだった。
遠投で126メートルを記録した時は、セレクション会場がざわついた。
その結果、10を超える学校から「うちの高校で野球やらないか」と誘いを受けた。
学費を免除する特待生Sランクで取ってくれる高校もあったので、小島はどの高校に進学するかずいぶん迷うことになる。
さらに陸上でも2校推薦の話が来ていた。
将軍がいる狭山ヶ丘高校の野球部長は、何度も小島の学校まで来てくれて詳しい説明をしてくれた。
数々の高校から誘いがあった中で、地元の秩父農工の監督が一番熱心だった。
何度も小島の家に来て熱く野球論を語り、しまいには小島の父親と酒を飲み始め、野球とは関係ない話で盛り上がるまでになっていた。
小島は、農工の監督と何度も話すうちに、その人柄が好きになっていった。
そして小島は、私立の高校を断り、農工の監督と野球をすることを決めた。
それと同時に、将軍がいる狭山ヶ丘高校といつか対戦したいと思った。
というのも、今まで将軍と敵として対戦したことが一度もなかったからだ。
ちょうど小島が秩父農工へ行くことを決めた頃、小島の家に大地から電話があった。
内容は進路のことだった。
大地から「小島とバッテリーを組みたいから同じ高校に行く」と告げられた。
小島は「お前は、もっと上の高校に行った方がいい」と説得したのだけれど、「小島とバッテリーを組みたい」の一点張りだった。
そして大地から「小学の時に高校でバッテリー組もうと約束したろ!」と言われて、小島は「あれ…本気だったんか?」と思ったと同時に何も言えなくなってしまった。
こうして数々の野球強豪校のオファーを断ったピッチャーとキャッチャーが秩父農工野球部に入部することになった。
(ついでにベッキーも入部してきたけれど)
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