第25話 中学3年生の文化祭での話

小島は、中学に入ってから無視や集団リンチといった酷いいじめにあう時期もあったけれど、中学3年生の頃には普通の学校生活が送れるようになっていた。

そして秋の文化祭にはクラスごとの劇があるのだけれど、その頃には、小島を中心に準備するまでになっていた。


文化祭には、家族や近隣の老人ホームや障がい者施設の利用者も来場するので、体育館は人でいっぱいになる。

なので「適当な事はできない」と小島の気合は入っていた。

11月の文化祭のために2学期が始まった9月から準備を始めた。

小島のクラスは、「白雪姫」をやることに決まったのだけれど、ただやっても面白くないということで、白雪姫の話をベースに小島がコメディタッチの下ネタ満載のセリフを1から作った。

台本を書き終わり、みんなに配ると爆笑するクラスメイトや「これ文化祭でやっていいの?」といった心配する声などが上がった。

結局、過激な下ネタをカットして、ほとんど小島が書いたシナリオのままでいくことに決定した。

小島は、脚本を担当した流れで演出兼監督もやるつもりだったけれど、お妃と魔女役がいなかったので、小島がその2役もやることになった。


それからは、ひたすら放課後に練習を繰り返した。

最後の追い込みでは、小島の母親がやっているそろばん塾の教室で合宿もする熱の入れようだった。

何人か泊まれる女の子もいたので、小島としては、それはそれは楽しい合宿になった。


そして練習の甲斐あって、みんなノーミスで演技が出来るようになり、自信満々で本番を迎えることになったのだけれど…本番当日に大きなミスに気付いた。

それは、小島がかぶるお妃と魔女のカツラを作り忘れていたのだ。

小島は血の気が引いた…


仕方がないので「ベリーショートのお妃だったんだな!」と思い込むことにして、いざ化粧して鏡で自分の顔を見たら、ベタなオカマにしか見えなかった。

小島が「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは、だーれ?」と言うセリフがあるのだけれど、その顔で言うところを想像したら…自分でゾッとした。


小島は、急遽、鏡役に「それはお妃さまです」のセリフの時に「鼻で笑ってバカにしたような言い方をしてくれ!」と注文した。

その結果、本番では、うまく笑いに変えて乗り切ることができた。

そして劇のクライマックスで王子様が白雪姫にキスをするシーンでは、七人の小人達による「ディープキス!ディープキス!」の掛け声では会場大爆笑だった。

劇は大成功で終わった。


最優秀クラスは、小島の3年B組ではなく、A組の「ロミオとジュリエット」だったけれど、小島が審査員でもA組に1票入れるくらい素晴らしい劇だったのでしょうがないと思った。

けれど一番笑いを取ったのは、B組だったので小島もクラスのみんな満足そうだった。

それは小島にとって良い思い出として今も記憶に残っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る