第24話 2人の陸上大会での話【トモ・堀田・小林・校長】

小島の同級生には、頭のネジが外れたヤバい奴が2人いる。

1人がトモで、もう1人がヤンキーの堀田だ。

2人とも頭のネジが外れているけれど、それぞれネジの外れ方が違う。

タイプの違う外れ方と言った方がいいだろうか…

そのわかりやすいエピソードが陸上大会での出来事である。


小島の中学には、陸上部がなかったので出場したい希望者が出られるようになっていた。

なので授業がさぼれるという理由で小島は、毎回出場している。

それを知ったトモが、足が特別速いわけでもないのに、授業をさぼりたいがために800メートル走に出場すると突然言い出した。


小島と犬猿の仲であるヤンキー堀田も授業をさぼるためにホーガン投げの選手として出場した。

小島の見立てでは、ヤンキー堀田は県大会に出場できる実力を持っている。

けれど、ヤンキー堀田の目的は県大会に出ることではなく、授業をさぼることなのでサンダルで出場していた。

堀田がサンダルのままホーガンを投げるサークルに入ると、当然、審判員から靴を履くように注意された。

堀田と審判員はしばらくもめたのだけれど、結局堀田は靴を借りて投げることになった。

そして堀田は、審判席めがけてホーガンを投げつけた。

これが大問題となり、小島の学校の校長が呼び出され、堀田は校長の車に乗せられて強制退場となる。

小島は、会場でひたすら平謝りしている校長を見て心底気の毒だと思った。


一方、800メートル走に出場したトモは、ピストルが鳴ると1人だけトラックを逆走した。

トモとしては渾身のギャグのつもりだったけれど、一切笑いは起きなかった。

そしてトモが戻ってスタートラインを通過する時には、すでに他の走者は遥か先を走っていた。

800メートル走は、400メートルのトラックを2周するのだけれど、トモは周回遅れ寸前だった。

先頭ランナーがゴールする直前にトモと並び、周回遅れのトモは必死で先頭ランナーと競り合った。

これもトモ的にはギャグのつもりだったけれど、誰からも笑いを取ることはできなかった。

そして閉会式で、トモと堀田は名指しで注意されて陸上大会は幕を閉じた。


トモは、何か思いつくと後先考えずに行動する傾向がある。

学校には、元ラグビー選手の小林という先生がいるのだけれど、怒るととんでもなく怖いので、みんなから恐れられ「小林先生」ではなく「小林さん」と呼ばれていた。

そんな小林さんが、小島やトモを交えて何人かの生徒と校庭で雑談をしていた時のことである。


小林さんがボケると、トモは小林さんの後頭部を全力で殴り「なんでやねん!」とツッコんだ。

その場の空気は凍りつき、小林さんも生徒から頭部を全力で殴られるという状況が理解できず、怒ることもなく、ただただ気まずい時間が流れた。

後で小島が「トモ、何であんなことした?」と聞くと「そんなこと言われても、わかんね。」と答えた。

そんなトモの後先考えない行動は、大人になってからも治ることはなかった。

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