第22話 後ろから椅子を投げつける男の話【トモ・将軍・堀田】
トモの中で将軍はツボに入ったようで、目をキラキラさせながらこう言った。
「やべぇ、将軍おもしろい!
近所の山に天狗が出るって噂を聞いたけど、それって将軍かもしれないな(笑)。
将軍なら、あり得るんじゃね?(笑)」
トモが言う“天狗が出る”という噂は、1年ほど前から流れていて、天狗が山を駆け巡っているとか、天狗の舞を見たという情報があり、学校でも話題になることがあった。
当然小島もその噂は知っていた。
「あー、その噂な…その天狗たぶん俺だわ…」
「え?小島ちゃんが!?ど、どういうこと!?」
トモは身を乗り出した。
「トモが転校してくる前だから知らないだろうけど、俺、1年の時に集団リンチにあって血だらけにされてさ。」
「マジ!?誰にやられたん!?」
「学校の奴ら。」
「誰だよっ!」
トモは怒りだした。
「主犯は、堀田で…」
「ちょ、ちょっと待って、堀田って野球部の?」
「そう。ヤンキーの堀田。
放課後の教室に呼び出されて教室に入ったらカギ閉められて、後ろから堀田がいきなり椅子投げつけてきたわけ。
で、完全に不意を食らった俺は、その後みんなからボコボコにされた(苦笑)。」
「ちょっと待ってよ、小島ちゃん!
堀田って…小島ちゃんがキャッチャーで堀田がピッチャーだろ?」
「そうだけど。」
「そんなことあったのに、何でバッテリー組んでんだよ!」
「何でって言われてもな…将君が引退したら、ピッチャーできる奴が堀田しかいなかったからな。」
「違う奴がピッチャーすればいいだろ!」
「いやいや、将君の代が抜けた後のチームは13人しかいないし、球のスピードとコントロールが申し分ないのは堀田だから、自然と堀田がピッチャーになっただけの話なんだけど…それにピッチャーとしての才能だけなら将君より上だよ。」
「将軍の上をいくの!?堀田が!?
それでも俺なら絶対無理…よくバッテリー組めるな!?」
「まぁ、中学入ってからは、犬猿の仲だから1度も口をきいたことないけどな。
もちろん秋の大会も俺と堀田は一言も口をきかないまま試合をしてた(笑)
2人で投球練習を一度もしたことないから、いつも試合でぶっつけ本番だし、サインもないから、俺はノーサインでストレートとカーブとフォークを捕らないとだめなんよ。
この難しさは、キャッチャーやったことのある人にしかわからないかもな。
そんなチームが勝ち上がれるわけもなく…2回戦で敗けたわ(笑)」
「なんか理解が追っつかないけど、小島ちゃんスゲーな…」
「ちなみに、小学校の時にソフトボールで埼玉3位になったときのピッチャーも堀田で俺がキャッチャーだった(笑)」
「えーーー!何なんお前ら!?」
小島は、トモの反応が面白くて笑っていた。
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