第16話 相手を入院させて停学になった時の話【トモ・将軍・タモツ】

中学2年生の冬に停学になった小島は、家でタバコを吸っていた。

すると「小島ちゃん、いるー?」とトモの声がした。

小島の部屋へあがってきたトモは「あらー、停学中なのにタバコを吸ってていいのかなー」と言いながらテーブルの上に置いていたタバコを1本とって、トモもプカーとやりだした。

特に会話することなく二人で煙を吐いていると、トモが小島の腕に巻かれている包帯に気が付いた。


「あれ?小島ちゃんもケガしてるの?」


「ナイフで切られた。」


「マジ!?停学のこと学校でいろいろ噂になってるよ。」


「そうなん?」


「小島ちゃんが病院送りにした相手が失明したとか、金玉つぶれたとか、何が本当で嘘なのかさっぱりわからんけど、本当のところ何があったん?」


「ずいぶん話が盛られてるな…とりあえず目玉と金玉は大丈夫だと思うけど…

んー、どっから話したらわかるかな…

トモは転校してきたから知らないかもしれないけど、俺たちの1つ上のヤンキーのタモツって奴と将君(しょうくん)が関係してるんだけど…あ、将君は、みんなから将軍って呼ばれてる人な。」


「将軍ならわかる!野球部のおっかない感じの先輩だろ?」


「そうそう(笑)。

俺のじいちゃんが町の世話役をしてて、近所に住んでた将君も一緒にいろんな行事に連れて行ってたから、俺が物心ついたときには、いつも将君と一緒で付き合いは長いわけよ。

小学校の時も同じ少年野球チームだったし。

でさ、将君は運動神経が良いから、少年野球でエースで4番だったし、喧嘩もめっぽう強くてさ。

俺が中学で野球部に入った時には、圧倒的暴力で2年生の将君が野球部を支配してたしな(笑)

やる気のない奴は、先輩でも暴力を使って辞めさせて、俺が入部した時は、3年生は真面目な2人しか残ってなかった(笑)。

その頃には、みんなから『将軍』って呼ばれてたな。」


「へー、将軍って空手とかボクシングやってんの?」


「なーんもやってない。

あの人、格闘技の経験ゼロなのにナチュラルに強くてさ、誰も勝てないんだよね。

でも、一番ヤバいのは、体の強さよりもメンタルの強さなだな。

ナチュラルに強いうえに、平気で相手の目に指をいれたり小指を折りにいくからさ。

まったく躊躇なしにできるあのメンタルは俺でも真似できん…

あと、ピクピクしてる相手のまぶたを指で広げて目玉に唾を落とすし(笑)」


「えー、マジ…」


「まじ(笑)。

そんな感じだから、ヤンキーも恐ろしくて将君に手が出せないわけ。

誰も将君に逆らえないから、ヤンキーでも不良でもない将君が事実上学校を支配してる(笑)

で、俺は、年上のヤンキー達から目を付けられてるんだけど、将君の右腕的な存在だから誰も手を出せないわけ。」


「何で小島ちゃんは目を付けられてるの?」


「よくわからんけど、態度がデカいらしいよ。

俺は年上でも敬語を使わんしね。

だって、将君にタメ口なのに他の奴らに敬語っておかしいからさ。」


「確かに態度はデカいかも(笑)。

教室でも誰ともしゃべってない小島ちゃんが一番偉そうだしな(笑)。」


「そう?とにかくヤンキー達にとって俺は手を出せない厄介な存在なんだろうな。

で、直接手を出すことができないから、喧嘩がある時は何かと俺を呼び出すわけ。

5対5のタイマンやるから、助っ人で来いって感じで。

で、いつも俺を呼び出すヤツが、ヤンキーのリーダーのタモツって奴でさ。

俺は、人から頼まれたら断らないから『あいよ~』って引き受けるんだけど、俺への腹いせもあってか、やたら強い奴とか厄介な奴ばっかり相手にさせられるわけ。

で、今回のことにつながるんだけど…」

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