第14話 奇跡のアダルトビデオの話【トモ】

小島は、転校してきたばかりのトモに、まだ土地勘がないだろうと思って、こんなことを聞いてみた。


「なー、トモ。学校の近所にホームセンターあるんだけどわかる?」


「知ってるよ!道沿いにあるよな!」


「まぁ、日本中のホームセンターが道沿いにあるけどな…」

小島は「やっぱりこいつバカでおもろい」と思いながら話を続けた。


「ホームセンターの中に小さいブースでレンタルビデオのコーナーがあったんだけど、俺が小学校5年の時に、そのコーナーが廃止されることになってさ、それまでレンタルしてたビデオが500円均一で売られることになったから、少ない小遣い持ってホームセンターに向かったんだよね。

目的は、小学生じゃ中々手に入らないアダルトビデオを買うためなんだけど、レンタルだと18歳以上じゃなきゃ借りれないから一度も見たことなくてさ、夢のアダルトビデオがやっと手に入ると思って期待と股関を膨らませながらチャリを漕いだわ(笑)。

でもさ、俺、アホだから、買うのも18歳以上じゃないとダメな事をその時は考えもしなかったんだよね。

だから緊張しながらアダルトビデオを1つ選んで、ランボーとクロコダイルダンディーのビデオに挟んで、レジへ向かったわけ。

そしたら、レジのおばちゃんに当然の様に『僕にはまだこのビデオは売れないんだ。ごめんね。』て言われてガッチョーンってなったわ(笑)。

でもとっさに『お兄ちゃん買ってこいと脅されて…このまま買ってかないと僕またお兄ちゃんに殴られちゃう…お願い…おばちゃん見逃して…』と涙ぐみながらの演技で言ったらさ、おばちゃんキュンときたみたいで『今回だけだよ…』と言って売ってくれたわ(笑)。」


「マジ!?」


「うん、まじ。

で、俺は鍵っ子だったから、家でビデオを見るのには苦労はしないわけ。

早く帰って見たいと思いながら、またチャリを漕ぐけど…勃起して中々上手く漕げないほどだったわ(笑)。

家に帰ったら早速見た。

たった30分ほどの内容だったし、画面の半分くらいはボカシだったけど、初めてみるアダルトビデオに興奮したなぁ。

結局、親が帰って来るまで三回ほど見て、家の裏の畑に拾ったエロ本を隠している場所があるんだけど、そこにビデオも隠して宝物が増えたわけよ。

でさ、ある日いつものように、同じアダルトビデオを見ていたら、いつの間にか寝ちまってさ。

どれくらいか、わからないけど…たぶんそんな長くではないと思うけど、起きたらビデオは終わっていて砂嵐のようなザザっザザってなってたんよ。

『良かった~親が帰って来る前に起きて!』とホッとしてビデオを取り出そうとしたら…奇跡が起きたんよ。

砂嵐の状態から急に違う映像が流れ出して、食い入るように見てたらさ、エッチなシーンになった時、衝撃を受けたんよ…ボカシがなーい!(笑)

初めて見る光景の連続でさ!女のアソコのアップのシーンは『神様ありがとう』と叫んだわ。(笑)」


「こ、小島ちゃん…それ貸してよ…」


「それは無理だな。」


「何で!?いいじゃん!」


「無理だって。

何でかって言うと、その奇跡のアダルトビデオは、俺の友達全員にレンタルされて、やがてテープが擦りきれて見れなくなったからさ。

残念だったな(笑)。」


トモはとても残念がったと同時に、小島ちゃんを無視しているクラスの連中は貸してもらったんだ…と残念な気持ちが5割り増しになった。


ちなみに小島は後にこう語っている…

「今まで3000本のエロビデオを見ているけれど、あれほど興奮したのは後にも先にもあの一本だった。」と。

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